表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/14

1.第七ダンジョン探査団

 王座の間。

 仰々しい扉に閉ざされた部屋の奥には、黄金の装飾が施された椅子がある。

 その椅子に座ることが出来る人物は、このカーバル王国でたった一人。

 国王ガイバル・ロバーストだけである。

 ガイバルが見下げる先には、男が一人と女が四人、膝をつき頭を垂れていた。


「では報告を聞こうか? ユリウス・ペンデュラ」

「はっ!」


 名を呼ばれた俺は、大きくハッキリと返事をした。

 陛下は続けてこうおっしゃる。


「此度のダンジョン探査、その成果は?」

「……何もありません」

「ん? よく聞こえなかったな。もう一度、聞こえるように言い給え」

「……」


 ああ、言いたくない。

 でも言わなければならない。

 これで何度目だ?

 そろそろ陛下もわかってくださる頃だろう。

 ならばいっそ、堂々と開き直ったように大きな声で報告しよう。

 俺たちダンジョン探査団の成果は……


「何の成果も得られませんでしたっ!」

「この恥知らずがぁ!」


 めちゃめちゃ怒られました。

 全員まとめて、地下の反省室送りです。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「はぁ……」


 盛大なため息が、暗くジメジメした地下の反省室に響き渡る。

 そんな俺に声をかけてくる一人の少女。


「あんまり落ち込まないで、ユリウス君」

「エリー……」


 彼女はポンポンと俺の頭を撫でながら言う。


「大丈夫だよ。きっとまた三日くらいで出してもらえるから」

「そういう問題じゃないんだよ!」

「うわっ!」


 大声を出した俺にビックリして、エリーは頭を撫でていた手を退けた。

 すると、そんな俺の声に反応した残り三人が文句を口にする。


「うるっさいな~ 響くんだからもうちっと静かにしろよ」

「そうだぞ助手君。せっかく新しいアイデアが浮かびそうだったのに、今のでとんでしまったじゃないか」

「……眠い。あとで起こして」

「好き勝手言うんじゃない! お前たち、今の状況わかってるのか?」

 

 四人ともキョトンとした表情で俺を見る。

 どうやら切羽詰まったこの状況を理解しているのは、俺だけのようだ。


「ダンジョン探査を始めてもう一年だぞ? それだけ期間があって、一つも成果らしい成果を見つけてないなんて……いつクビにされてもおかしくないんだぞ? 今回だって、せっかく新しい階層までたどり着けたのに……」

「だいじょうぶー、大丈夫~ いつものことだもん」

「そうだね。それよりボクは研究室に戻りたいな。ここでは魔道具の研究も出来ないし」

「あたしも早く鍛冶場戻りたいなぁ」

「もう良い? 眠い」

「……」


 もはやため息すら出なかった。

 どうしてこうなってしまったのか……


 ダンジョン。

 それは、はるか昔に生きた者たちが現代に残した遺産の宝庫。

 初めてダンジョンが発見されたのは、今から約三百年ほど前のことだ。

 未知の技術、道具や知識の宝庫だったダンジョンは、俺たち人類の生活に大きな影響を与えた。

 一つ目の発見を切っ掛けに、世界中でいくつものダンジョンが発見されていった。

 ダンジョンは宝の山だ。

 その所有権を国家同士が争い、戦争になった歴史さえある。

 より多くのダンジョンを保有し、そこから何を得られるかによって、国は更なる発展を遂げるだろう。


 ダンジョン探査団に選ばれることは、とても名誉なことだ。

 俺たちの探査結果が、そのまま国の発展に繋がる。

 故に、その期待は大きい。

 探査団のリーダーに選ばれた時は、ようやく自分の実力が認められたのだと喜んだ。

 集められたメンバーも、天才と呼ばれている四人だし、これなら余裕で成果をあげられるのでは?

 と、勝手に思い込んでいた頃の自分を殴りたい。


 確かに天才ではあった。

 ただ……蓋を開ければ問題児ばかりだった。


「早くお外に出たいな~ みんなとお散歩できないのは寂しいよ~」


 天才テイマー、エリー・ルフラン。

 桃色のふわっとした髪が特徴的で、見た目はおっとりニコニコしている女の子。

 そんな見た目から想像できないが、彼女は百を超える魔物を従え、その中には伝説級の魔物もいるという天才テイマーだ。

 仮にドラゴンが攻めてきても、彼女一人いれば何とかなるとさえ言われている。

 ただ、テイムした魔物を一斉に放って散歩させたり、勝手に城の食料を持ち出したりして、よく反省室に閉じ込められていた。

 単身での入城は禁止されている。


「新作魔道具の実験途中だったのに」


 天才魔導士、リルタ・サラン。

 薄緑色のショートヘアに、黒い眼鏡姿は知的な印象を与える。

 様々な魔道具を発明し、国の技術力を大きく発展させた功績を持つ。

 しかし魔道具への愛が変態的過ぎて、それ以外に興味がない。

 依頼とは無関係な魔道具を勝手に作り、材料を空っぽにしたことや、実験と称して城の一部で対爆発を起こすなど、見た目に似合わず破天荒。

 彼女も、単身での入城は禁止されている。


「あたしも新作魔剣の試作が中途半端で止まってんだけどな~」


 天才鍛冶師、アリア・レーベル。

 燃えるような赤い髪と褐色肌、小柄だが腕っぷしの強さは男勝り。

 世界中でたった一人、魔剣すら作れる鍛冶師だが、気に入った相手にしか魔剣は使わせない。

 勝手に使うと問答無用で斬りかかってくる乱暴さを持ち、以前に騎士団員を昏倒させたこともある。

 その際に城の柱をぶった切りった。

 もちろん、単身での入城は禁止されている。


「スゥー、スゥー」


 天才魔術師、ナナリ・グレイマン。

 水色の髪と瞳、魔術師のローブと杖がよく似合う、いつも眠そうにしている女の子。

 王国一の才能を持つ魔術師で、これまでに二桁の新魔術を考案している。

 のだが、基本的にやる気がなく、新魔術も無理やり作らされたに過ぎない。

 究極のサボり魔で、暇でも暇じゃなくても寝ている。

 酷いときは王座の間で寝ていたこともあったとか。

 念のために単身での入城は禁止されている。


「はぁ……もう嫌だ」


 そして俺、ユリウス・ペンデュラ。

 平民から成り上がった騎士であり、第七ダンジョン探査団のリーダー。

 という肩書が与えられているだけで、実質問題ばかりの彼女たちの世話役だ。


 成果ゼロダンジョン探査団。

 ロクデナシの集まり。

 言うこと聞かない子供用の託児所。

 

 不名誉な仇名ばかり増えていく日々に、そろそろさよならしたいよ。

新作投稿しました!

タイトルは――


『パーティーを追放された付与術師、宮廷に雇われる ~お前の付与なんて必要ない? 言った傍から苦戦しているようですが、今さら戻るつもりはありません。付与してほしいなら国へ正式に手続きをしてくださいね?~』


ページ下部にリンク(12/8正午以降)がありますので、ぜひぜひ読んでみてください!


ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

【面白い】、【続きが読みたい】という方は、ぜひぜひ評価☆☆☆☆☆⇒★★★★★をしてくれると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ