表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/183

38・キスとヘタレと非リア充

「なっ……なな、な……!?」


 強烈なダメ出しと同時に現れたのは、ミルミルだった。

 腕を組んで仁王立ちし、ガッツリとオレを睨み付けている。


「よいよ、チンタラやっちょらんで、さっさとキスしよればええじゃろうが!」


「な……んで、ミ、ミルミルが……?」


 頭が真っ白だった。

 グラスも同じだったんだろう。無言のまま、見開いた目を向けてフリーズしている。


「おやおや。気づかれちゃったね」


「あ~あ。もう少しだったのに」


「もう、ミルミル。ダメっていったのにぃ……」


 続けて家の陰からゾロゾロ出てきたのは、ノエル、レイ、イヴだった。

 こちらは揃って、呆れ顔をしている。


「ダメはルキトじゃろうが。あそこまで行っちょって、やめるか普通」


「やめた訳じゃなくて、頑張ってたんだよ、ルキトさん」


「それでもできんとか、ヘタレかっ!」


「まぁ、頑張るっていうのも、ちょっとおかしな表現だけどね」


「ねぇ、ノエル。もうチューしないの?」


「今回はお預けだね」


「えぇ~……見たかったのにぃ……」


「ははっ、イヴには少し早かったから、これで良しとしておこうか」


「ぶぅ~……」


 まるで見せ物を観覧しているみたいに、好き勝手いってやがる。

 聞いてる内に我を取り戻したオレは、やっとの事で声を絞り出した。


「お、お前ら、いつから、そこに……?」


「始めからです」


 あっさりと、レイがいった。


「最初にわたし達が戻ってきてね。ルキフルの闘いを見ていたら、レイとミルミルも帰ってきたんだよ」


「で、ボクもここから見てたんです。あ、そうだ、グラスさん」


「は、はい……」


「すみません、食べ物をいただきました。ミルミルが我慢できないっていうもので……」


「え? あ、はい……」


 答えはしたものの、グラスはまだ(ほう)けているみたいだった。


「そうしたらお二人さんが戻ってきてさ。声をかけようと思ったんだけど、結界があって近づけないし、なんか話し出したから、様子を見ていたんだよ」


「それで、その、今に至る、と……」


 少しだけ申し訳なさそうな顔で、レイがいった。


「まったく、ガッカリじゃわい。見損なったで、ルキト!」


 対して、なぜか怒っているミルミルが、頬を膨らませながらいった。


「お……お前ら……お前……ら……」


「とりあえず、結界は解いてさ。お茶にでもしようよ、ルキト」


「そうですね。その内、ルキフルさんも帰ってくるでしょうし」


 やっとの事で頭が回り始めた。

 転生して、ハーレム作って、魔王を倒して、英雄になって、さらに召喚されて、女神と出逢って――。

 それでもまだチェンジできない職業(クラス)なんて、あっていいわけがない……んだけど、実際にあるってんだから、人生ってのは本当にタチが悪い。

 一体どうすれば、この『非リア充』とかいう呪いを解いて、『リア充』とかいう上級職にジョブチェンジできるんだろうか。


 てか、そもそもこれ、解呪できるんだろうな……。


 そんな事を考えてる内に、ぶつけ所のない激情がふつふつと沸き上がってきた。


「ふざっけんな! くっそがああぁぁぁぁーーっ!!!」


 (ほとばし)る絶叫となったそれはしかし、青い空に吸い込まれて、すぐに消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ