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15・勇者一家の家庭の事情

「ところでルキト、君こそ大丈夫なのかい? 結構飛ばしていたけど」


 銀杯を片手で弄びながら、ノエルがいった。果実酒が、陽光を反射しながらくるくると回っている。


『ああ、問題ない。ってか、オレのも見てたのか?』


「うん。全員の闘いを見ていたよ」


『全員って……イヴも合わせて、四ヶ所同時に?』


覗見公女(ピーピング・シェリー)っていうオリジナルスキルでね。複数の場所を同時に見聞きできるんだよ」


 そりゃまた、豪快な覗きもあったもんだ。


「ところで、なんでルキトは自分で千里眼を使わないんだい?」


『……使えないからだよ』


「え? 本当に?」


 確かに、チートたるもの持ってて当たり前の能力ではあるんだけど、本当にオレは千里眼が使えない。


「君ほどの実力者が、どうして身につけていないんだい? 便利な能力なのに。冒険をするにも、それ以外でも、ね」


 ウインクしながら、爽やかな笑顔でノエルはいった。

 もちろん、その気になれば取得するのは容易いだろう。

 しかし、オレにはそれが許されていない。家訓があるからだ。

 もはや鉄の掟といってもいい我が家の家訓。

 それは。


 〈男子たる者、千里眼は身につけるべからず〉


 元々は、母さんが決めたパーティーの掟だったらしい。

 幼かった頃、禁止の理由が分からず聞いてみた事がある。

 すると、こんな答えが帰ってきた


 ――大きくなったら、ルキトにも分かるわよ


 それで納得できるわけがない。

 で、父さんにも聞いてみた。

 こちらも理由は教えてくれなかったが、なんでも昔、こっそり覚えようとしたのが母さんにバレてえらい目にあったとかで、あれは諦めろ、といっていた。

 ちなみに、どんな目かを聞いてみたら、父さんの顔が青ざめた。


 ――し、知らない方がいいよ。ははは……


 以来、オレはもちろん、父さんも使えない千里眼は、我が家においてアンタッチャブルになっている。

 下手したら『禁呪』と同格の扱いだ。

 まぁ、母さんは使えるんだけど。


『お前みたいなヤツのせいだよ……』


 ため息まじりにいうと、ノエルが不思議そうな顔をした。


「わたしのせい? なぜ?」


『いや、うん。この話はいいや』


 理由なんてグラスの前でいえる訳ねぇだろ察しろよお前は。


『ところで、あの二人はどうなってるかな』


 話を逸らしつつ本題に戻すと、これまでと変わらない様子でグラスはいった。


『ここから位置的に近いのは、ルキフル様ですね』


『じゃあ、次はルキフルだな』


「見にいくなら、レイを先に方したがいいよ」


『え? なんで?』


「ルキフルは、まだかかると思うから」


『なんだよ、手こずってるのか?』


「ん~……手こずるというか、なんというか……。あのやり方じゃあ、決着がつかないと思うんだよねえ」


『どういう意味だ?』


「実際見た方が早いと思うけど、先に終わるのはレイじゃないかな」


 もって回ったいい方に、ルキフルの様子が気になった。しかし、経過を分かっているノエルがいうなら間違いないんだろう。


『それじゃ、レイを先にしよう。グラス、頼む』


『はい』


「わたしはここで見ているよ。もう少しイヴを休ませてあげたいしね」


『分かった』


 椅子に座って飲み始めたノエルを残し、オレ達はレイの元に向かった。




 思えば、オレが抱いたレイの第一印象は『素朴で真面目そう』だった。あの容姿を見れば、大抵の人はそう思うだろう。

 少なくとも、酒を飲みながら闘う、なんてナメプをするようには見えない。

 が。

 オレは認識を改めた。

 人は見かけによらないとは、よくいったもんだ。


『あいつは……何をやってるんだよ……』


 ノエルの時に思った事が、今度は言葉になって出てきた。

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