147・“テメェは、ムカつく”
凄惨で非道、そして何より、見た事がない程に悍ましいーー全てが嫌悪を抱かせるビスキュの言動は、高純度の悪意そのものだった。
幼子は、純粋であるがゆえに本能のまま行動し、善悪の区別をつけられない。弱く、未熟で、嘘をつき、時として残酷な行いを躊躇いもせず実行する。
しかしそれは、無知である事に起因しているだけなのだ。知らずにやっているだけなのだ。
その、無垢で混じり気のない残忍さを失う事なく大人になってしまった人間がいたならーー常識や倫理観すら意に介さない、非常識と不条理の姿をした化け物に成り果ててしまうのだろう。
「次から次へと、なんであんなのばっかり出てくるのよ……」
恐らくビスキュは、自覚していない。己の行いが悪行である事を。
命令一つで誰かが苦しむ。
行動一つで誰かが死ぬ。
分かっているのはそこまでだ。
善悪の別などない。認識すらしていない。
楽しい。だからやる。それ以上でも以下でもない。
ゆえに、結果に対する罪悪感などない。言動に対する責任感もない。失態も笑ってごまかし、奪ってきた命に対する懺悔もない。
遊び倒して玩具を壊す感覚で、他者の命を弄ぶーー虐待も、拷問も、暗殺も、彼女にとってはただ、それだけの事でしかないのだ。
「変態奴隷商と不死の怪物、賞金首と精神病質者、か。冒険者ってより、妖怪ハンターのクエストみたいなラインナップだな……」
「あ! ひっどぉ〜〜い!! キュキュの事なんだと思ってるわけぇ〜ルキトきゅぅ〜ん!!」
ビスキュが甲高い声で抗議してくる。
こいつのかまってちゃんっぷりに、心底うんざりした。
「邪悪なガキ、ってとこだな」
「ガぁ〜キぃ〜? キュキュの方がぁ〜お姉さんなんですけどぉ〜〜?」
「年じゃなくて中身の話さ。デカくなっただけのガキだよ、お前は。見るに堪えない」
「んん〜もぉ〜う。イ〜ジ〜ワ〜ルぅ〜〜……あ、そっか。そっかそっかそっかぁ〜! ルキトきゅんってばぁ〜キュキュがそんなに好きなのね♥」
「はぁ? 何いってんの?」
「だぁってほらぁ〜男子ってぇ〜好きな女子に冷たくしたりするじゃなぁ〜い? んんっふっふっふぅ〜〜♥ ず・ぼ・し・でしょ♥」
いい返す気にもなれなかった。
暗殺者に狙われて、恐怖や危機感以上の不快感を抱く事があるなんて思いもしなかった。
これ以上こいつの戯れ言に付き合っていては、不快指数がリミットを突破してしまいそうだった。
「でもでぇもぉ〜そぉんな回りくどい事しなくてもぉ〜〜ルキトきゅんとキュキュはラブラブなんだか……」
バッッ!!
「らっ?」
終わらせる。
強い意志をこめ、一瞬で間合いを詰めた。
身体を沈めた体勢から地を這うような右の足払い。反応してビスキュが跳んだ。振り抜いた蹴り足の軌道を変え真下から突き上げた。
「ふぅっ!!」
ブオォッッ……!!
顎先に上段の足刀蹴りが襲いかかる。ヘッドスリップーービスキュが頭をずらす。そのまま身体ごと横に回転して逃れていく。追撃しようと目で追った時だった。
「ギィッ!」
「ギキキッ!!」
左右から部下達が斬りかかってきた。体重を右側へ。突き上げた右足を膝から折りたたんだ。立ち上がった勢いのまま左拳を突き上げた。
ゴッ……!!
ガッ……!!
「シイィィっっ!!」
……ッキイイィィィーーッッ……!!!
脳天に踵落としを、顎にアッパーを、同時に打ちこんだ。一人が石畳に叩きつけられる。一人が後頭部から地面に落ちる。打ち終わりの隙ーー残る一人が正面から襲ってきた。下ろした右足。再び振り上げた。
ドゴウゥッ……!!
「ッギィッ……!!」
「おおぉぉっ!!」
ズドオォォッ……!!
金的蹴りと鳩尾への正拳突き。くの字に曲がった身体が真後ろに吹っ飛んでいく。拳を引いた。身体を右に開いた。視線を右へ送った。目に飛びこんできた物があった。
「ばぁっ♥」
「!!??」
ビスキュの顔だった。広げた両腕ーー攻撃が来る。
「ちぃっ!!」
咄嗟に身体を引いた。左右から風斬り音。カウンターで迎え撃つーー間に合わない。両腕を上げた。ガードしようとした、刹那ーー
ドドドドドオオォォーー……ッッン!!
「っ!??」
炸裂音に鼓膜を叩かれた。金色の爆発に目を眩まされた。ビスキュの身体が弾け飛ぶ。視界の隅。目を向けると、右手を突き出すマリリアが見えた。
「いつまでも調子に乗ってんじゃないわよ!」
「ナイスフォロー!」
止めを刺そうとビスキュに視線を向け直した。ダウンはしていなかった。ローブが焼けてボロボロになり、煙が上がっている。わずかに足元がふらついている。
好機。
追撃しようと踏み出した。と、同時だった。
「いっ……てぇなクソがあああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーっっ!!!」
「っっ!!?」
「うっ……おっ……!!?」
ビリビリビリビリビリッッ……!!
狂乱の叫びが空気を震るわせた。思わず両手で耳を塞いだ。
「あ”あ”あ”あぁぁぁぁぁーーーっっ!!!!」
それでも防ぎきれない狂声が、容赦なく鼓膜を震わせる。ザインの鳴き声と同量か、あるいはそれ以上の叫びが、ビスキュの口からは迸り続けていた。
「ぐっ……! な……んて声量だ……!!」
パンッ! パパンッ!! パンッッ!!
四方から、何かが割れる音がした。ひとしきり叫ぶと、興奮に呼吸を乱したビスキュが殺気のこもった低音を吐き出した。
「ふぅ〜……ふぅ〜……ふぅ〜……ふうぅぅぅ〜〜……!! 腐れビッチがあぁ〜〜……よくもアタシの美肌を汚しやがってええぇぇぇ〜〜……」
フードの下、僅かに覗く瞳が光っていた。憎悪と憤怒、そして、殺意で。
「な……なになに? キャラ変わっちゃったんですけど……」
両手を耳から離してマリリアがいった。
叫びの後遺症で聞きにくくはあったが、会話ができない程ではなかった。
「てより、あれが本性なんだろ。なぁ、キュキュ?」
「あ”ぁっ!? 気安く人の名前呼んでんじゃねぇぞクソ野郎!!」
「……は?」
「テメェはアタシの親か!? 親友か!? 彼氏か!? ナメた事ぬかしてんとぶち殺すぞゴミ✕✕✕がぁっ!!」
これまでのふざけた態度とは一変した、別人のような口調だった。ヒステリックに喚き立てる姿は、やはり普通じゃない。二重人格を疑いたくなる変貌に、その思いがさらに強くなった。
「いや、お前がそう呼べって……」
「お前って誰の事だっ! お”ぉっ!? 誰の事だよっ!! なんでテメェみてぇな✕✕×✕✕がアタシを見下してやがんだ!? ✕✕の穴に手ぇ突っ込んで引き抜いた✕✕まみれの臭せぇ雑魚✕✕✕食わされてぇのかっ!! あ”ぁっ!?」
「うっ……わぁ〜〜……」
放送禁止用語のオンパレードに、マリリアがドン引きしている。
一度覗かせた素の顔を隠す気はさらさらないーーというより、感情のコントロールが出来ていない様子だった。
まだ何かを持っているであろうビスキュの戦闘力は未知数だ。その上キレ散らかしたあの状態では、どんな事をしてくるか分からない。
一瞬たりとも目を離せない。挙動に注目していると、再び張り上げる声がした。
「なにボケッとしてやがんだっ!! さっさとあの✕✕✕野郎とビッチ✕✕✕の✕✕の穴から✕✕袋引きずり出してきやがれウスノロ共っっ!!」
八つ当たりで喚き散らす声に、部下達が立ち上がった。
襲撃に備えた。
しかし、命令を聞いた彼らが襲いかかって来る事はなかった。
「……ギ……ギ……」
「ィイ……ギ……ィ……」
「ギギ……ギ……ッギイィ……」
棒立ちのまま、身体を小刻みに震わせているのだ。
オレの攻撃によるダメージじゃない。
恐らく、あれは……
「う、動かない? なんで?」
「叫び声のせいだ。中の蟲がショックを受けたんだろ」
「なっっ……!!?」
ビスキュが驚愕の声を上げた。己が冷静さを失った結果、部下達が戦力にならなくなったのだ。
完全に自業自得だった。
だがこれが、怒りの火に油を注ぐであろう事は明白だった。
これ以上ブチギレられると厄介だ。先手を取ろうと踏み出した。
しかしオレの足は、そこで止まる事になる。
「……っなぁんでプルプルしてるのおぉぉ〜〜っ!? きゃっはははははははっ!! かぁわぁうぃい〜〜い〜〜っっ♥」
「!!??」
また、スイッチが切り替わったのだ。
今の今まで会話にならないほど怒り狂っていたのが、今度は手を叩いて爆笑している。
「すんごいプルってるんですけどぉ〜〜っ!! 部下ちゃん達サイッコぉ〜〜っ!! きゃははははははははは〜〜っっ!!」
楽しそうだった。
嬉しそうだった。
その笑顔が本心から出ている事そのものが、ビスキュの異常さを物語っている。
流石に、これはーー
「つ、ついて行けないわ……」
マリリアの言葉に同意するしかなかった。
「あれ、キリがなくない? どうする?」
困惑から正面を見据えたままでいると、潜めた声で問いかけられた。
確かにこのままでは、いつまで経っても埒が明かないだろう。
「……逃げた方が早そうだな」
そもそも、始めたくて始めた闘いじゃない。降り掛かってきた火の粉を払おうとしただけなのだ。避けられるなら、それに越した事はない。
囁くような小声でいうと、マリリアが無言で頷いた。
しかし、大笑いをしていたビスキュからも即座に反応が返ってきた。
「きゃっはははっ!! だあぁ〜〜めぇ〜〜!! に・が・さ・な・い・わよぉ〜〜ん♥」
バカ笑いの最中、こちらの会話が聞こえていたらしい。
舌打ちが出た。
やっぱりあいつは、厄介だ。
「なら仕方ない……腕づくで行かせてもらうまでだ!」
腹を括った。
逃げられないならば、この場でケリをつけるしかない。
オレに合わせて、マリリアも同時に動いた。
「オッケえぇ〜ルキトきゅう〜〜ん♥ お姉さんの胸にぃ〜〜! どぉ〜〜んとっ!! 飛びこんできなっさぁ〜〜い♥」
「ついでにそのままどっかにふっ飛んで行きなさいよ、バカっ!!」
「んんん〜〜っふっふっふ!! きゃあぅわぁういぃ〜んだからマリリアちゅんってばぁ〜〜♥ じゃあじゃあ! 食べちゃおっかな……」
「……び声ぇ〜? ………から聞……て来……うな……」
「……あ?」
「……だよ。……かいるのかぁ?」
双方が制空圏に入る、まさにその直前だった。
人の声が聞こえてきたのだ。
足音が、徐々に近づいてくる。
「ああぁぁぁ〜〜っっ!!!」
気づいたビスキュが声を上げる。何事かと思っていると、四方を見回しながらいった。
「最悪うぅ〜〜!! 消音結界が壊れちゃってるしぃ〜〜っ!!」
なるほど、ここでの物音が漏れないように手を打ってあったらしい。さっきの何かが割れるような音は、結界が壊れた音だったのだ。
部下を戦闘不能にした事に引き続き、またもや犯した失態だったが、本人に自覚はないようだった。
「いいとこだったのにぃ〜〜! ジャマする悪い子ちゃんは誰なのよもおおぉぉ〜〜っ!!」
天を仰ぐビスキュの後ろ、暗闇から二人の男が現れた。
肩を組んでふらふら歩いている所を見ると、だいぶ酔っているようだった。
「ここかぁ〜? おっ! なぁんだよネェちゃん! 何やってんだぁ〜?」
「楽しそうだなぁ〜! 俺たちもまぜてく……」
「テメェらか」
「!!?」
はっとした時には飛んでいた。
首が、二つ。
前のめりに倒れる二人の背後、ビスキュが音もなく着地した。
落ちてきた首が石畳に転がる。赤らんだ二つの笑顔と目が合った。
「な……んて真似を……!!」
惨劇に、マリリアが唖然としている。
しかし、それ以上にオレは驚愕していた。
ビスキュの動きが見えなかったからだ。
ただ早いというだけが理由じゃない。首を切り落とす瞬間まで、殺気を感じ取れなかった。攻撃前の“意”がなかった。文字通り、気配を完全に消した状態での暗殺ーーこれは、ある事柄を指し示している。
ビスキュにとって、殺す事が日常になっているのだ。会話をする。食事を摂る。睡眠を取る。座る。立つ。歩く。呼吸をする。そういった当たり前の中に、“殺す”という行為が含まれているのだ。
ゆえに、気配がない。殺気も、殺意も、必要ない。無意識下でも身体が自然と動くのだから。
そこまでたどり着くのに、どれだけの生命を奪ってきたのだろうか。どれだけの屍を生み出してきたのだろうか。
認識を改めた。
今、目の前にいるのは、ザロメ以上の異常者であり、怪物だ。
「あぁ〜あ。なぁんか、もぉ……シラけちゃったにゃあ〜〜……」
しかし、意識して強めたオレの警戒心などどこ吹く風とばかりに、気の抜けた声でビスキュはいった。
血に濡れた短剣をブラブラさせ、大きくため息をつく。
「また誰か来るとウザいしぃ〜〜今日はもういいやぁ〜〜、うん」
「もういいって、なんだよ?」
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜帰るっていってんのぉ〜〜」
「はぁ? ここまでやっといて、やめるっていうの?」
「うん。飽きちゃったからもうやめるぅ〜。続きはまた今度ね♥」
「無関係の人を殺しておいて飽きちゃったですって!? ふざけんじゃないわよっ!!」
「ふざけてなんかいないもぉ〜〜ん。そぉんなに慌てなくても大丈夫よぉマリリアちゅ〜〜ん。次に会った時にはちゃあ〜〜んと遊んであ・げ・る・か・ら♥ あ。それとも……」
邪悪に歪んだ口元ーー出てきたのは、信じられない一言だった。
「改造してあげよっか? ザロメちゅんみたいに♥」
「っ!??」
「なんだって? それは、どういう……」
「きゃははははっ! どうもこうもないわよっ! きゃわうぃいお顔がムカついたからぁ〜〜! いじくり回してやったのぉ〜〜! 頭の先から身体中! ぜえぇ〜〜っんぶねぇ〜〜! もともとオツムが弱かったからさぁ〜〜キュキュのいう事なんでも聞いたのよねえぇ〜〜あの娘ぉ〜〜! 特に傑作なのが胸なんだけどぉ〜〜! もう見たぁ〜〜?」
「胸に、何があるっていうんだ?」
「んんん〜〜?っふっふっふぅ〜〜。まだなら後のおた・の・し・み♥ 驚くわよぉ〜〜なんせおっぱいが……ぷぷぷっっ……!!」
「な、何をしたっていうの!? あんた、彼女に……!!」
「い・ろ・い・ろ・よぉ〜〜ん♥ ペットちゃんでお身体イジイジするのとぉ〜〜呪術で頭をイジイジするのがぁ〜〜キュキュのお得意技なのぉ〜〜♥」
「!!? まさか、ザロメの精神を……」
「きゃっはははははっっ!! ステキな陰キャになってたでしょお〜〜う!? アイテム造るより玩具の改造してた方が楽しいしぃ〜〜テンション上がるのよねえぇぇぇ〜〜!!!」
「……テメェ……」
醜悪、極まりなかった。
ビスキュの言葉、その一つ一つから滲み出ているのは、まぎれもない悪ーードロドロになるまで煮詰めた邪悪そのものだった。
それが、嗤っているのだ。
騙して弄んだ味方を、嘲笑っているのだ。
怒りがこみ上げてきた。全身が黒く蝕まれていく。頭が暗く蝕ばまれていく。吐き気がする程に不快だった。こんな気分になった事はこれまでになかった。
今すぐに消してやりたい。
あの腐った笑みを。
そう強く思わざるを得ない程、ビスキュの存在は醜悪だった。
「いゃあ〜〜んルキトきゅう〜〜ん♥ お顔がぁ〜〜こぉ〜わぁ〜ういぃ〜〜。お腹でもイタいの?」
「…………」
「んっふ♥ キレてかかって来てもぉ〜ムぅ〜ダぁ〜よ♥ キュキュ、お家に帰るんだからぁ〜〜♥」
ビッ!!
ドドッ!!
「ッイ”!!」
「ギいぃっ!!」
「!!??」
改めての撤退宣言と同時に振るった両手から、短剣が飛んだ。部下二人の腹に突き刺さる。
「ほらほらぁ〜〜。いつまでもプルってなぁ〜いの。帰るんだからぁ〜さっさとそれ拾ってよねぇ〜〜」
倒れている三人を順番に指差したビスキュが、のんびりと命じた。腹から血を流しながらも、二人の部下が命令に従い始める。
しかし、残る一人は未だ動けずにいた。
「早く……しろっつ〜〜の」
ドゴオォッ!!
「ギュぃっ!!」
鳩尾を蹴りつけられ、最後の一人も動き出した。
己が蛮行を気に留めてすらいない事は、にたにた笑う口元を見れば一目瞭然だった。
「てなわけでぇ〜〜今日の所はぁ〜〜お開きにしまぁ〜〜っす! お〜つ〜か〜れぇ〜〜……ちゃん♥」
「……必ず、会いに行くから。楽しみにしておきなさい」
マリリアが、硬い声で応じた。
その顔と、無言でいるオレを交互に見ながらビスキュがいった。
「あれあれあれえぇ〜〜? 二人揃って怖い顔ぉ〜〜。なぁんでぇ〜〜?」
「……シンプルな理由だよ。テメェは、ムカつく」
「んっふ♥ それはそれはぁ……さぁいこうにハッピッピ〜〜な理由ねえええぇぇぇ〜〜……んふふふふふふふ……」
小刻みに震える肩ーー静かな笑いの後、妙に間延びした低い声が聞こえてきた。
「ルキトきゅぅ〜ん……マリリアちゅぅ〜〜ん……ま・た・ねええぇぇぇ〜〜♥ ばぁ〜〜い……ちゅっ♥」
投げキッスを残したビスキュと仲間を背負った部下達が、闇の中へと消えていく。
「あぁ……また、な」
しかし、ドロドロととぐろを巻く黒い感情は重く残って、いつまでも消える事がなかった。




