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被告人、前へ  作者: 速水詩穂
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私の彼氏を紹介します

 



 私の彼氏を紹介します。


 私の彼氏を紹介します。

 彼は、周りに比べて背は高くないんだけど、私を抱え込むだけの大きさは持っていて、ぽっちゃりじゃないけどまるっとしてて、何よりやさしいの。

 寄り添うとぴったりフィットして、本当に「私用」みたいな感じ。大きなつり目。私と同じ大きめの口。

 中でもお気に入りなのが、このちょんまげ。これでこう、「妖気」を察知するの。かわいいでしょ?

 でもね、これでいて結構走るの早くて、そんなに大きくないのに体格差を感じさせないの。ただ、上り坂は苦手みたい。ついさっきまで楽しそうに走ってたのに、もう「嫌」っていうのが目に見えて分かるの。からだ重たいのかしら。

 でもいいの。別に走るの早ければいいってものじゃないから。やさしいし、かわいいし。私は大好きよ。それだけは最初からずっと変わらないの。


 やっぱり一緒に遠出したのが大きかったかな。本当、地に足着いてないっていうか、お互いだけだったから、もう楽しいんだけど必死で。途中で向こうの機嫌損ねちゃったこともあったね。あの時はあせったわ。本当に帰れないかと思った。今思えば私のわがままで振り回しちゃってたんだよね。気づかなくてごめんね。

 でもあの後からたびたび機嫌悪くして、こっちはこっちで何が気に入らないのか分からないからイライラしちゃって。

 病気抱えてるってことに気づかなかったんだよね。驚いたんだよ。何が原因か分からなくて、たびたび体調崩して。その時考えたんだ。


 例えばあなたの手や足や、腎臓や肝臓や心臓を移植しなきゃ助からないって言われた時、もちろん治すのが大事なのは分かってる。分かってるけど、手術の後、どこまでが今のあなたで、どこからが今のあなたじゃなくなっちゃうんだろうって。そうでなくても、走り方とか、まばたきの仕方とか、今あるやさしさが変わっちゃったら、記憶がなくなっちゃったら、どうしようって。

「原因不明」っていう大きな不安もあったけど、もしかしたらそれ以上に、あなたが変わっちゃうことが怖かったのかもしれない。親は「娘を守ってくれるか」を第一に考える訳だけど、それでもあなたが変わってしまうくらいなら、このままでいいとさえかすめたの。ごめんね、勝手で。

 結果的に手術して事なきを得たけど、やっぱり最初は今まで通り愛せなかった。パッと見感じが変わった訳でも、中身が変わった訳ではなかったけど、でもなんか構えちゃったんだよね。再三の発病で、私の中で「頼っちゃいけない」みたいな部分が大きくなってたことも関係あるのかもしれない。


 ただ、時間はかかったけど、また元通り好きになることができてよかったよ。私自身、同じ「好き」でも前より少しだけやさしくなれた気がする。気を遣ったり、思いやったり、そんな当たり前のことが出来てなかったんだよね。それはパンクしちゃって当然だよね。

 もっとやさしくなりたい。ただ自分が望むだけじゃなくて、望まれるような。「次に生まれ変わっても、またあなたに出会いたい」と思われるような。私もまた、変わることがあったとしても、そのままのあなたを愛せるだけの、女でありたい。


 私の彼氏を紹介します。

 日産の紺のMOCOです。




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