うずくまるイノシシ
引きずり出してきたもの。
この連載のテーマに沿っていたので掲載。
2014年5月、新東名高速道路が開通して一ヶ月、動物との衝突事故が九十一件あったことについて。
これは動物の死骸からの報告であり、実際「衝突」だけの件数を含めればもっと増える。それに伴う動物侵入防止法案どうこう。
何だか違和感がないか。山に道を走らせたのは人間で、もともと高速もあったわけで、
災害時の輸送ルート確保の目的はあったとしても、より便利に、より楽に、を追求した結果起きたこととも言えなくはないか。侵入、してるのは人間ではないのか。
被害者。タヌキ、シカ、キツネ、いたち、イノシシ、ねこ、カラス。タヌキ、キツネで七十件。これは立派な殺害事件だ。
「危ないですね。実際高速では後続車のことを考えると急ブレーキを踏めず……なんてことも多いようです。あわててハンドルを切っても大事故につながりかねない」
そうして同時に、走りやすい直線ラインゆえに、スピード違反が激増しているという。
脳裏に焼き付いたのは、視聴者が偶然撮影したという、走行中の映像。
目の前を横切ろうとしたイノシシをブレーキ間に合わずはねてしまう。そのイノシシは、数メートル転がった後、起き上がって走り去った。
数メートル、転がったのだ。あの巨体が。一体どれほどの衝撃を受けたという。なのに走り去った。
驚いただろう。あまりの衝撃に、痛みを自覚できなかったかもしれない。
動物は罪を問わないのだ。決して。
山中でうずくまっているかもしれないその心細さに、見合うだけの感情の揺らぎを感じただろうか。あのコメンテーターは。
「大事故につながりかねない」
それは、あくまで人間様のオハナシ。
人間様の人間様による人間様のための
ご都合。
恩恵を受けている私も同罪。ただ、自覚すること。
傲慢であることを自覚すること。
謙虚であることは、小さくとも償いにならないだろうか。
「元々動物の生活区域なんだから、」
竜巻、雷、地震。
怒られて当然のことは、してるんだろうな。怒られる対象に、他の生き物も巻き添えにして。
便利さと引き換えに失うもの。
失うのは必ずしも「人間にとって」のものとは限らないのに。




