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被告人、前へ  作者: 速水詩穂
14/14

被告人、前へ、6

 



 僕はそのとき、生まれて初めて大声で泣いた。

 泣いて、泣いて、泣きつかれて、それでも泣いた。声がかれて、のどが渇いて、そんな時すぐ傍には水があった。

 こんなに感情が高ぶったのは、初めてだった。相変わらず混乱していて、信じられなくて、でもそんなわけのわからない状態で、けれどもあふれ出る思いはどこまでも澄んでいて、

 あごの下に水たまりが出来ていた。新しく落ちていく水。ああ

 自分からもこんなにキレイなものは生まれるんだ、と気持ちが高揚して、そうしてまた泣いた。

 彼女にとっては目ざわりだっただけかもしれない。たまたま気が向いたから行動に移しただけかもしれない。でもそれでもいいのだ。

 彼女は僕たちをただ排他せず、ちゃんと認めて、関わった。

 おいおいと泣き始めて十五分。今度こそ泣きつかれて横になると、降り注ぐ明かりに目を向けた。

 蛍光灯の代わりに、月が見下ろしていた。


 お互いだけだった。

 互いが存在していると思うことだけが、孤独から逃れる術であり

 だから彼女は僕の世界そのものだった。僕は


 決められたとおり、影で生き続けるよ。嫌われることばかりだし、気持ち悪がられることばかりだし、でも安心してね、お姉ちゃん。

 きっとこの世界にはいろんな生き物がいて、そのすべてに拒絶されている訳じゃない。僕は運よく、それを知ることが出来た。だから

 安心してね、お姉ちゃん。僕だけでも大丈夫。僕だけじゃないから大丈夫。みんなそれぞれ戦ってるんだ。僕も生きるために頑張るよ。


 雲の切れ間から光がこぼれてきた。ぼんやりと視界が明るくなっていく傍らで、僕は影の中を駆け回る。



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