被告人、前へ、6
僕はそのとき、生まれて初めて大声で泣いた。
泣いて、泣いて、泣きつかれて、それでも泣いた。声がかれて、のどが渇いて、そんな時すぐ傍には水があった。
こんなに感情が高ぶったのは、初めてだった。相変わらず混乱していて、信じられなくて、でもそんなわけのわからない状態で、けれどもあふれ出る思いはどこまでも澄んでいて、
あごの下に水たまりが出来ていた。新しく落ちていく水。ああ
自分からもこんなにキレイなものは生まれるんだ、と気持ちが高揚して、そうしてまた泣いた。
彼女にとっては目ざわりだっただけかもしれない。たまたま気が向いたから行動に移しただけかもしれない。でもそれでもいいのだ。
彼女は僕たちをただ排他せず、ちゃんと認めて、関わった。
おいおいと泣き始めて十五分。今度こそ泣きつかれて横になると、降り注ぐ明かりに目を向けた。
蛍光灯の代わりに、月が見下ろしていた。
お互いだけだった。
互いが存在していると思うことだけが、孤独から逃れる術であり
だから彼女は僕の世界そのものだった。僕は
決められたとおり、影で生き続けるよ。嫌われることばかりだし、気持ち悪がられることばかりだし、でも安心してね、お姉ちゃん。
きっとこの世界にはいろんな生き物がいて、そのすべてに拒絶されている訳じゃない。僕は運よく、それを知ることが出来た。だから
安心してね、お姉ちゃん。僕だけでも大丈夫。僕だけじゃないから大丈夫。みんなそれぞれ戦ってるんだ。僕も生きるために頑張るよ。
雲の切れ間から光がこぼれてきた。ぼんやりと視界が明るくなっていく傍らで、僕は影の中を駆け回る。




