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被告人、前へ  作者: 速水詩穂
13/14

被告人、前へ、5

 



 蛍光灯の光がさえぎられる。振り返ると、そこには一人の女性がいた。無表情にこっちを見下ろしている。僕は全身をこわばらせたまま、彼女を見返す。その女性に見覚えがあった。たしかこのアパートの二階に住んでいる人だ。たまに友人を部屋に招いていて、そのときの駐車場での話しぶりや、声の大きさから、いわゆる「多数」の生き物だろうと思っている。

 涼しい夜風が流れた。それにしても長い。何か思案しているのか、彼女は僕たちを見下ろしたまま動かない。十秒として認められることのなかった僕たちは、今、彼女を介して存在していた。

 その後、遠くで鳴いていたカエルが鳴くのをやめた頃、ようやく彼女は動き出した。僕はいつでも動けるように足に力を入れると、じっとその様子をうかがう。

「そこ、どきや」

 そうして女は手に持っていたA4サイズの郵便物を姉の体の下に差し込もうとした。しかし、一方向から加えられる力にその体は横滑りし、なかなか上に乗らない。僕はというと、その傍らでひどく取り乱していた。それは必ずしも「姉をどうする気だ」という不安から来るものだけが原因でもなく。

 この人は

 ようやく郵便物の上に乗せられた姉は、そのまま近くの畑まで運んでいかれた。僕は食い入るようにその後姿を見つめていた。

 この人は、僕たちを軽蔑しないのか。

 汚い、とか、醜い、とか、気持ち悪い、とか。そう、

 気持ち悪くないのか。

 女は郵便物の先についた土だけ払うと、来た道を戻って(僕はあわてて花壇に隠れた)そのまま階段を上がっていった。僕は今しがた目にしたことが理解できない。心臓がやたらとうるさい。僕はそっと花壇を抜け出ると、姉の下ろされた畑へと向かった。

 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ。

 今考えれば、あの時何もさえぎるものがない中で、どれほど無防備だったかと思う。そんな中、幸い誰にも会うことなく道路を隔ててたどり着く。ここはさっきいたところよりもずっと薄暗く、人通りもほとんどなかった。僕は




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