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後宮恋物語  作者: あいまいみー
第三章 寵妃
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文の日記

お久しぶりです!


「嶺崋、鈴妃に迷惑かけんなよ。」


「うん。おやすみ♪灑崋!」


「じゃあ、頼んだな。」


「ええ。」



夜になり、本日は嶺崋を玉蘭の部屋に泊めることとなった。


「よろしくお願いします。」


「疲れているでしょ。ゆっくり休んでね。」


「はい。お世話になります。」



彼女の今後をどうするかは明日遊瑧さまに相談して決める事となった。


本物の嶺妃が戻ってきたとなれば、灑崋はお役ごめんとなるのは必然だろう。


もともとここにいるべき人では無いのだから……。



私の貸した着物に肌着に着替えている彼女を横目に私は灑崋との出会いから今日までの事を思い出していた。



初めて出来た私の友達……。



ここを出れば彼には二度と会うことは出来ないだろう。



他者を深く知ると、やはり別れは寂しくてとてもつらい……。



日課にしている日記を開き、今日あったことを綴っていく。


嶺崋の事は濁して書かなければ事が露見したときに大変なことになるため、あまり具体的には書かない。




「それ、何ですか?」


気づけば、後ろから私のしていることを覗き見ていた嶺崋が不思議そうに尋ねてきた。



「日記よ。」


「日記ですか?」


眉を潜めてさらに尋ねてきた彼女にコクリと頷く。


「どうかした?」


「いえ、ただ、それにしては随分と語り口調の文章だな~と思って。」



彼女にそう言われて、改めて見てみると、確かに読み返してみると誰かに話しかけているような文章になっていた。


「まるで文を書いているようですね。」


綺麗に微笑まれ、そう言われて少し恥ずかしくなった。


「誰宛に書いているのかちょっと気になります。」


これを書いているときいつも考えている人……。



「……いつも、これを書くときはある人のことを考えて書いているの。」


「誰なのか聞いてもいいですか?」


日記を撫でながら私はあの頃のことを思い出した。



「わたくしの…一生分の想いを捧げた方よ。」



そう言うと嶺崋は悲しそうに眉を寄せた。



「鈴妃さんは確か寵妃でしたよね…?」


「まあ、一応そうなっているみたいね。」


「もしかして、その方って……。」



何かを察したように彼女は俯いてしまった。



「……鈴妃さんは凄いですね。もう二度と会うことが出来ないと分かっていても、そんな風に相手を想えるなんて…。」


「会えるわ…。また…きっと…。そのためにこれを書いているの。話したいことを忘れないために。」


「鈴妃さん…それは…。」



そこで口をつぐんだ嶺崋はその後の言葉はきっと言ってはいけないと分かったのだろう。


目の前にいる玉蘭はとても悲痛そうな顔でその日記を撫でていた。



「……そうですね。きっと会えますよ。」



嶺崋はただそう言うしかなかった。








―――――――――――――

――――――――――



「なるほどな。事情は分かった。」



次の日になり、人払いを済ませた部屋で遊瑧は嶺崋の件を聞いていた。


玉蘭は事を見届けるため、同席していたのだが、あの口付けをして以来の遊瑧に少し居心地悪く思っていた。



「で、お前らはどうしたい。」



そう問われ、驚いた顔をしながら灑崋と嶺崋は顔を上げた。


それもそうだ。


普通なら族誅であったのも見逃され、さらには今後の意見までも求めて来たのだから。



「私は、このまま兄と入れ替わり、この後宮にお仕えしたいと思っています。それが当然で、兄への償いとなるでしょうから。」


嶺崋の言葉に灑崋の眉がピクリと動いた。



「だそうだが、お前はどうしたい。」


遊瑧の問いに灑崋は真剣な表情で答えた。



「はい。私は按家の跡取りなので、一刻も早くこの場から退きたいと思っていますが、我が妹はあまりにも愚かであるため、陛下にご迷惑をおかけする可能性があります。なので、今しばらくはここに留まりたいと思っています。」



嶺崋は目を見開き灑崋を凝視した。



「そうだな。余も一度逃げた猫が躾もされずここにあることを良くは思わん。」


「はい。」


「お前の妹だ。しっかりと教育してから出ていけ。」


「御意に。」




灑崋と遊瑧がそう会話するのを嶺崋はポロポロと涙を流しながら聞いていた。


「按嶺崋、お前のしたことは決して許されないことだ。だが、お前の兄の今までの行いに免じて今回だけ目を瞑ってやる。今後はこの後宮で自身の負った責の重みを感じながら勤めよ。」


慈悲深い賢帝はそう言った。



「承知いたしました。」



嶺崋のその言葉にこれ以上この事について事について話す気は無いのか遊瑧は部屋の隅にいる玉蘭へと目を向けた。




玉蘭はそっと視線を下げて目を合わせないようにしたが、近づいてきた遊瑧に顎を掴まれ、無理やり視線を合わせられた。



「っ!!」


「顔色が悪いな。俺のせいか…?」



あの口付けの夜からまともに寝れていなかったため玉蘭の目の下にはくまができていた。



「…いえ……これは…。」


「今夜部屋へ行くから、待っていてくれ。」


「…………。」


遊瑧はそういうと顎から手を退け、着物を翻して扉の方へ歩いて行った。



「念珠、按家の双子のことは他言にしたくない。灑崋の侍女はこの事を知らないのなら、本日よりお前が二人の侍女になれ。」


「え!!へ、陛下!私は鈴妃様の唯一の侍女でございます。私がお二人の侍女になれば、姫さまのお世話を誰がなさるのですか?」


「彼女の侍女は胡蝶に任せることにする。お前は余の命令通りにしろ。」


「あ、おい!王様!!」


それだけ言い残し、遊瑧は部屋から出ていった。



残された者たちは何も言えないまま立ち尽くしていた。



念珠はどうすればいいのかと玉蘭を見たが、玉蘭もどうすれば良いのか分からないようだった。



ただこれは勅令なのだ。



念珠には選択の余地などないのである。



「姫さま、私は何があっても姫さまの側を離れるつもりはありません!!」


玉蘭の肩を掴み、そう訴えた念珠だったが、


「……………念珠、遊瑧さまの命令に従って……。」


「姫さま!!」


「仕方ないでしょ……。無視すればあなたは罪にとわれるのよ……。そんなこと絶対に嫌よ……。」



虚ろな目でそう言った玉蘭は全てを諦めたようなそんな表情だった。



「俺からもう一回王様に言ってみるからそんな顔すんな。」


灑崋のその言葉を聞いた玉蘭だったがそんなことは無駄な事であると分かっていた。


遊瑧さまは自身の決めたことを曲げたりする方ではない……。




「わたくしは大丈夫だから……二人をお願いね……。」





この頃からだったのか…それとももっとずっと前からだったのか……。

私は一つまた一つと彼によって大切なものを……自由を奪われていった……。




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