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後宮恋物語  作者: あいまいみー
第三章 寵妃
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港町での出会い 後編

お久しぶりです!明けましておめでとうございます!!


「はい、お待ちどう。白茶と桃饅頭だよ。」


「ありがとうございます。いただきます。」


「わー!!久しぶりのまともなご飯~!!」



茶屋に入り、横目で彼女を見ると、涙ぐみながら運ばれてきた桃饅頭を口一杯に頬張っている。



先ほど立ち話もなんだしということになり、茶屋に無理やり連れていかれる道中に粗方は話を聞いた。


「つまり、後宮にいる嶺妃様はあなたのご兄弟という事ですよね?」


「はい。兄の灑崋と言います。レイと灑崋は双子なんですよ!だから、灑崋も美人でしょ?」


「ええ、まあ……男性には少なくとも(見た目は)見えませんでした…。」


「ふふっ♪やっぱり灑崋なら上手くやってくれるって信じてた♪」


桃饅頭を口一杯に頬張るレイさんは嬉しそうに言うものの、どこか悲しそうだった。


「悪い男と駆け落ちして、漸く自分の馬鹿さに気づかされるなんて滑稽ですよね。」


「レイさん……。」


「今まで面倒なことは全部灑崋に任せてたのでこの歳まで世間知らずに育ってしまいました。都に帰りたいのは後宮にいる灑崋に謝りたいからなんです……。」



ポタポタと大粒の涙を流す彼女は自身の我儘でどこの馬の骨とも分からない男と駆け落ちした後に、金だけを取られ置いていかれたらしい。



そして、その後も暴漢に襲われたりと相当恐い思いをしたそうだ。



「お金も純潔も喪って、鏡に写ったボロボロの自分の姿を見たときにやっと自分がどれだけ何も分からないで生きてきたのかを理解しました。」


「………………。それで、体を売って今まで生きていたんですか?」



私の問いにコクリと頷く彼女は本当に自分のしてきたことを深く反省しているようだった。


「そのお金で帰ろうとは思わなかったんですか?商人の荷馬車にでも乗り継げば都なんて数日で行けた筈ですよ。」


「…………人を信じられなくなってしまって……。もしかしたら今よりもっとひどい場所に連れていかれるんじゃとか殺されてしまうんじゃないかとか考えたらここから動けなくなってしまって……。」


「なら、どうして私は大丈夫だったんですか?」


「あなたのことを信じているとかそういうのではなく、小刀に王家の家紋が入っていたので…市井でそんなものは流通しないと思ったので…それに、灑崋を見たことがあるようだったし…。」


「なるほど、良い考察だと思います。」


言動を見る限りそんなに頭が悪いわけではないようだ。




「レイさん、私は明日にはここを発ちます。私の他にも数人同行しますが、いいですか?」



私の言葉に顔を上げたレイさんはガシッと私の両の手を掴むと額を当て、何度も「ありがとうございます」と言った。











――――――――――――――――――

―――――――――――



「胡蝶さん、寝ないんですか?」


夜になり海面に写る月を眺めていると、「泊まるところがない」と言っていたので私が泊まっている部屋に連れてきたレイさんが湯上がりなのか髪を拭きながら近くに寄ってきた。


「ええ、寝台使っていいですよ。」


「え、いえ!!そんなこと出来ません!!泊まらせていただいているのに!!」


「いえ、私は幼い頃から寝台では寝れないので気を使っているわけではないですよ。あるなら使った方がいいでしょうし。」



私がそう言うと、「ありがとうございます」と言い、私の隣に座った。



「灑崋……元気にしていましたか…?」


「私も嶺妃さまには一度しかお会いしていないので……ですが、何か病気にかかったりや、悲しそうだったりしませんでしたよ。」


笑って言うと安心したように微笑んだ彼女も自分のせいであったとしても、たった一人の兄弟が心配だったのだろう。



「灑崋は小さい頃から優しいお兄ちゃんだったんです。レイがお父様の大事なお酒の入った壺を割ったときも自分がやったって言って、レイを庇ってくれたりしたんです。あと、レイが欲しいって言ったちょっと高めな簪ダメダメ言ってたくせに、灑崋が貯金から少し出して買ってくれたんです。あとは……」


ポタポタと彼女の目からは大粒の涙が流れていた。



「レイさんはお兄様の事が大好きなんですね。」



手拭いを渡し、笑って言うと、恥ずかしそうに頷いたレイさんは懐かしそうに目を細めた。



「灑崋は何でも要領よくこなせるから……愚図なレイをいつも庇ってくれるんです。自分はお兄ちゃんだからって……。あの頃はレイもそれが当たり前だって思ってたけど、家を出て初めて灑崋がどれだけレイに尽くしてくれていたのかに気づきました。とても愚かです…滑稽です…。レイは大馬鹿野郎です…。………………胡蝶さんは?」


「私ですか?」


「兄弟はいるんですか?」


「私は生まれたときから一人だったので、家族というものの顔を見たことすら無いんです。」


「……そうなんだ…。」


「まあ、大方予想はつきます。この気味の悪い髪色を見て、見世物小屋にでも売ったんでしょうね。私の産みの親は。」


「………………。」


「そんな暗い顔をしないでください。昔は毎日が地獄のようで、ここで生きていくことが私の人生の全てだというなら早く死んでしまいたいと思っていましたけど、今はとても幸せです。」



幸せそうに微笑んだ胡蝶は自身の胸に手を当てた。

こんな風に暖かい気持ちをあの頃の私は知らなかった。


「王宮の人になれたから?」


「そうですね。あの頃の私にはこんな世界があるなんて想像もつきませんでした。」


「…………。」


「あなたとはそういった面では同じなのかもしれませんね。」


自分の生きてきた場所と全く違う世界は良くも悪くも人を成長させてくれる。


私もあなたもきっと昔の自分よりも成長できているはずだ。



「レイ、きっと灑崋に許してもらえないって分かってるけど、何時までも謝り続けるの……。」


「…………。」


「それでこれからは灑崋のために生きたいって思ってるんだ……。どんなことからも護りたい…大切なお兄ちゃんだから……。」


「きっと、その気持ちは届きますよ。あなたにとって大切なお兄様であるように、お兄様にとっても大切な妹であるでしょうからね。」


「うん……ありがとう胡蝶さん……。」



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