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後宮恋物語  作者: あいまいみー
第三章 寵妃
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港町での出会い 前編


日差しが強いな……。


快晴の空を仰ぎながら胡蝶は潮風吹く港町を歩いていた。


覇匡さま、また後宮に忍び込んだりしていないだろうか……。


あれから二月経ったが、毎日のように嶺妃さまのお話をしていた。


覇匡さまは年頃だから、女に興味を持つのは仕方ないことだが、どうも一方通行の想いのようで居たたまれない。


どうにか成就させてあげたいのだが……。




胡蝶は何処で生まれたのか分からない程に幼い頃から各地を転々としていた。


その中で人に買われ、また売られ、買われを繰り返ししているなかで、暗殺の技術を習得していった。


そして、また売られ、人身売買にかけられて色々なことをさせられていたところをたまたま通りかかった遊瑧に助けられたのだ。


その遊瑧から任せられた覇匡のお守りは最初は予測不能な行動を起こす彼に戸惑い、自分には向いていないのでは?と思ったが、とあることがきっかけで心の底から覇匡を慕うようになった。



ところで、どうして胡蝶が港にいるかというと、遊瑧より出された密輸に関する任務で赴き、昨夜その事が解決したので帰ろうとすると、上司から「陛下より、一日こちらに滞在するよう仰せつかっておる」と言われ、無駄に一日ここに居なければならなくなったのだ。


そして時間を持て余した胡蝶は仕方なくフラフラと行く宛もなく市場をさ迷っていた。



魚の生臭い臭いはあまり好きではないけれど、さすが一番に外国から新しい物が入って来るだけあって、見たこともないものが沢山ある。



「お嬢さん?そこのお綺麗なお嬢さん。」


「え、レイのこと?」



路地裏を通り過ぎようとしたときだった。


若い娘が、マントを深く被った老婆に腕を掴まれているのが目に入った。




あれは……。



「これ。この薬。何か知っているかい?」


「わかんない。でも、レイ、病気じゃないよ?」


「これはね、病気に効く薬じゃないんだよ。美しさを保ってくれるレチナで今若い娘の間で流行っている薬なんだ。」


「え!!そうなの!!」



娘の方はあの薬が何なのか本当に分かっていないようだ……。


というか、長い髪で顔は見えないが小綺麗な格好をしている。


貴族か何かの娘か……?


でも、だとしてもこんな危ない路地裏などに来るわけがない。


もしかして、道に迷っているだけ……?



「今ならタダで十粒やるよ。」


「これで、もっと綺麗になったら都に帰っても大丈夫かな?」


「あ?う、うん?まあ、よく分からんが召し上がれ。」



少女がその手に持った赤い粒を口に入れようとしたその時、勢いよく飛び出した胡蝶によってその手を掴まれた。



「え!な、なに!!??」


「それは蠱苦餓という薬です。美容に効くような物ではありませんよ。」



私がそう言うと、前にいた老婆は青ざめながら後ずさった。



「これが違法薬物と知って売っていたようですね。ご同行して頂きます。」


そう言うと、老婆はその手に持っていた蠱苦餓の箱を投げ捨て、逃げ出した。


それを胡蝶はその場で高く飛び上がり、老婆の走った先で行く手を阻むように着地すると、老婆の頭に手加減無く、回し蹴りを食らわした。


衝撃で気を失った老婆をその場に放置し、証拠品として散らばった蠱苦餓を回収した。



「あ、あの……。」


しゃがんで拾っていると、後ろから話しかけられ、振り返った。



ッ!!??



その時目に飛び込んで来た少女の顔は息を飲む程に美しかった。

深い蒼みがかった髪と瞳、雪のように真っ白な肌。

ほんのりと色づく頬はまだあどけなさを感じさせる。


そして何より驚いたのは、うるうると瞳を揺らすその少女は覇匡さまの想い人にそっくりだったのだ。



「れ、嶺妃さま!!??なぜ、このようなところに!!!???」


「え、へ?れいひ?」



キョトンとした顔で見返されても私の驚きは止まらなかった。


ガシッと肩を掴むと、彼女も驚いたように私を見返した。



「どうやって後宮からでたのですか!!しかもこんな港まで逃げてくるなんて!!」


「あ、あああのぉぉぉぉ!!???」


「主上に見つかればただでは済みませんよ!!」


「ちょっ!ちょっと待ってください!!!」



大きな声に制止させられて、黙ると、彼女も落ち着くために、「ふぅ」と息を吐いた。



「嶺妃さま、あの!」


「その、嶺妃というのやめて下さい!!レイはそんな名前じゃありません!!」


「レイ……?」



もしかして、本当に人違いなのか?


でもこれ程美しい人が二人といるわけがないと思う。


「レイ……さん……あのご実家は……?」


「華芳村です。」



華芳村……確か、覇匡さまが嶺妃さまについて調べた書類の中に出身地として書かれていたような……。


益々怪しい……。



その時私の袖から懐刀が落ちてしまい、慌てて拾おうとしたのを彼女が拾ってくれた。


「ありがとうございます……。」



しかし、彼女はその刀を一向に渡してくれない。



「あの……返して頂けますってうわっ!!」


「あなた!!王宮の方!!??」



目をキラキラさせながらそう言われ、戸惑っていると、両手をガシッと掴まれた。



「レイを、レイをどうか都に送ってくれませんか!!」


「な、なぜ!!??」


「レイは本来後宮に入れる人だったんです!!でも、悪い男に騙されて、こんな帰り方も分からないようなところに連れてこられてしまって…。」



ま、まあ、この美貌なら後宮にいても可笑しくは無いだろうが、もう、後宮には沢山の美女たちがいる。

今さら帰ったところで…という話だ。



「えっと…そもそも後宮に入るには貴族のお家の娘かその後ろ楯のある娘でなければいけませんよ。」


「そんなの大丈夫!!レイは貴族の生まれですから!!」



えっへんと言った彼女は自身の胸に手を当てて自己紹介してくれた。




「レイの本名は按嶺崋といいます。よろしくお願いしますね!」



続きます!!

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