四阿のお茶会 前編
お久しぶりです!新キャラ登場です!
「なんだあれ……。」
四阿でお茶にしようと灑崋と回廊を渡っていると、小さな男の子が裏庭をウロウロと歩き回っていた。
「上等なお召し物ね。良家のご子息かしら?」
「だからって後宮に入って来れるか?普通。門番だっていんのにさ。」
「それもそうね。取り敢えず困ってるみたいだし、話を聞いてみましょうよ。」
「えー……、俺、ガキとかすげー嫌いなんだけど……。話通じないし……。」
「そうなの?わたくしは弟がいて、丁度あのぐらいの歳だったから扱いには慣れているわよ!」
「じゃあ、任せた。」
「何言ってるの!いいから、行きましょう!話はわたくしがするから!」
「えー、はぁぁぁぁ……。」
長ーい溜め息を吐く灑崋の腕を引いて玉蘭は少年の方へと歩き出した。
彼女たちの存在に気づいたその少年は、その目に二人の姿をとらえると顔を真っ赤にして固まった。
「こんにちは。わたくしは鈴妃です。あなたの御名前をお訊きしてもいいですか?」
少年の目線までしゃがみ、ニコリと笑いながら話しかけた玉蘭の事などその目には入っていなく、代わりに少年の目は隣で面倒そうに頭を掻く灑崋に釘付けとなっていた。
視線に気づいた灑崋は明後日の方から少年に視線を向け、「あ?」と不機嫌そうに言った。
「………………て、天女…さま?」
「「…………………………?」」
二人が小首を傾げると、次の瞬間、ガッ!!と少年は灑崋の手を掴んだ。
「すっごくお綺麗ですね!!お姉さん!!!天女さまのようだ!!」
目をキラキラと輝かせる少年に二人はただ目を丸くし、固まった。
「これは運命の出会いなのかもしれない!兄上の後宮に遊びに来て、こんなに僕の理想ぴったりの方に出会えるなんて!!」
そう言うと少年は灑崋の手の甲に口づけを落とした。
その行動に、はっ!!と意識を取り戻した灑崋はぶんっ!!と少年の手を振り払うと険しい顔をし、睨み付けた。
「な、な……へ?何…おまえ……。」
「あ、驚かせてしまいましたね!失礼しました。僕は秋煌帝が弟、曹覇匡と言います。」
紳士的な台詞を聞いていない灑崋は覇匡の唇が接触した手の甲を必死に着物に擦り付けていた。
「秋煌帝って遊瑧さまの弟君ってこと?」
自分の存在を無視された事に若干傷ついたが、玉蘭は立ち上がり覇匡に聞き返した。
その言葉にも無視をきめる覇匡。
「は?王様の弟?何でこんなところにいんだよこいつ。」
最初の動揺のせいで、話し方を隠さなくなった灑崋はあからさまに嫌な顔をしながら覇匡を指さした。
「さい、あ、あぶなっ……嶺妃さま、皇族の方よ!「こいつ」とか「指さし」とか失礼ですよ!!」
灑崋と呼びそうになったのを寸前の所で留まり、注意した玉蘭だったが、こいつ呼ばわりされた当の本人である覇匡は全く気にしていないようだった。
「お嫌でなければお姉さんのお名前をお訊きしてもよろしいでしょうか?」
「はぁ!?嫌だわ!!帰って母ちゃんの乳でも吸ってろ。」
年齢に関係なく男というものに口付けられたというのが気にくわなかったらしく、灑崋の機嫌はすこぶる悪くなった。
そして、言葉があまりにも汚い。
「ツレないところもまた、魅力的で僕好みです!」
「っるせ!!クソガキの好みなんざ聞いてねーんだよ。」
覇匡に追いかけられる灑崋はその綺麗な顔から出されているとは思えないほど汚い言葉をいいながら、逃げ回っていた。
「ふ、二人とも、一旦落ち着いて!」
玉蘭は何とか二人を止めようと、灑崋の腕を掴もうとしたその時、後ろから自分の手首を誰かがガシッと掴んだ。
「何してる。」
驚いて振りかえるとそこには遊瑧が立っていた。
遊瑧の言葉に灑崋を追いかけていた覇匡は立ち止まり、自動的にその前を走っていた灑崋も止まった。
「あ!兄王さま!」
「覇匡、何故ここにいる。」
「え?暇だったから遊びに来ただけ!!」
「「「……………………。」」」
その場がシーン……と静まりかえった。
「ところで、おまえは何で逃げてる。」
「知らねーよ!ハァハァ……このクソガキが手やら何やら握ったり、接吻してくるから逃げてんだよ!!」
「一目惚れしたので、早速攻めてみました!」
息切れする灑崋に熱い視線を送る覇匡に遊瑧は笑いそうになるのを口許を押さえ、顔を逸らした。
「おい……何笑ってんだよ……。」
「いや、お前は本当に存在してるだけで人を笑わせるな。」
「ふざけんな。殴るぞ。」
クスクス笑う兄の姿に覇匡は目をあんぐりとさせた。
あ、兄上が笑ってる!!!!????
兄弟の前でも笑ったことのない兄上が!?!?
そういえば、兄上が寵愛している二胡の上手い妃がいるって噂で聴いたけど、まさか……!!!!
ガーン……とショックを一人で受けている覇匡。
「あ、あの、取り敢えず四阿にお茶を用意しますので、そこで話しませんか?」
遊瑧に文句を言い続ける灑崋、その灑崋をからかい続ける遊瑧、一目惚れの相手が寵愛妃だと思い込み、放心状態の覇匡……。
収集のつかない状況を収めるため、玉蘭が手を上げて提案した。




