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後宮恋物語  作者: あいまいみー
第二章 後宮での日々
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涼の宴 前編

ついに遊瑧が動き出します!


鬼婆(澪鮮)訪問事件の翌日、鈴妃は公主の後宮立ち入りを禁じる令を出した。


鬼婆の方は鈴妃に即刻取り下げるよう申し出たが、それに鈴妃が耳を貸すことはなかった。



あの日から鈴妃はあまり笑わなくなった。


俺は何とか彼女を元気づけたく様々な事をしたが、一向にその憂い顔が笑顔に変わる様子はなかった。






「嶺妃さまは絶対にこちらの簪がいいに決まっているでしょ!!!」


「いいえ!!こちらの蒼の方が合うにきまっています!!!」


俺の後ろでギャーすか騒ぐ侍女たちに苦笑いしながら俺は自分の唇に紅をひいた。



今日は涼の宴が催されるため、妃たちはいつも以上に張り切って化粧や髪を結っている。


俺は別にそんな大層なものにしなくていいと言ったのだが、侍女たちに「嶺妃さまは寵妃なのですよ!!!絶対に誰よりも美しくせねばなりません!!」と言いきられ、勝手にしてもらっている。


別に俺がどれだけ着飾ったって王様とはどうにもならないんだから無駄な事なんだけどな……。




着物は前に他の妃たちが話し合っていたように金魚のような涼しさを感じられる淡い空色の着物だ。


ただ、あまりに薄いので俺は中に何枚か下着を着て、透けないようにした。



支度が終わり部屋の外に出ると、空には幾万の星々が輝いていた。


「綺麗ね。」


「はいー!!本日の嶺妃さまは一層輝いていらっしゃいます!!」


星を見て言った俺の独り言に何を勘違いした侍女は俺を見ながら目をキラキラと輝かせた。


俺の事じゃねーし。



ため息をすると侍女は不思議そうな顔をしていた。



涼の宴は緋仙宮で行われる。


続々と集まる妃たちの中にやはり鈴妃の姿はなかった。



宴に鈴妃は参加しない。


その理由は王様に会わないためと分かっているが、何だか一人だけこうして参加できないのは可愛そうだ。





席に着くと、俺は驚きで言葉を失った。


他の妃たちは着物の中に下着をつけていないのか、所々丸見えだった。


そ、そこまでして王様に媚を売りたいか……。



俺の着込み様を見た他の妃たちは「なんて色気のない」と言いたげに鼻で嗤ってきた。



別に嗤われたって何とも思わないけど、そういうあからさまに出したりしてるのは王様は好まないと思う。



必死すぎる他の妃が憐れでならなかった。




そして、時間になると王様が現れ、皆その場に跪き拝礼した。


チラリと王様は鈴妃の席に視線を向けたが、彼女がいない事を確認すると、憂い気に目を伏せた。




宴も盛り上がってきて、重鎮たちや妃たちは程よく酔いが回ってきた頃だった。



侍女たちに命じて、料理を皿に取ってきて貰うと俺は涼西殿に向かった。






鈴妃の部屋の近くまで来ると、回廊に出て星を見上げる彼女の姿があった。



空を見上げるその姿は幻想的で昔読んだ月を追放された天女の話を思い出した。



その美しさに見惚れていると、俺に気づいた彼女は儚げに微笑んだ。




「こんばんは。」


「ああ……。」



我にかえった俺は途端に恥ずかしくなり、視線を逸らしたが、ふと気づき、もう一度彼女に視線を戻した。


鈴妃の今日の格好は何もつけていない下ろされた髪に宴用に用意されたあの金魚のような着物だった。

(中はしっかり下着を着ていたが)


宴に参加しないのにそれを着ていたのが意外だった。



「それ、もしかしてわたくしに持ってきてくれたの?」


俺の手に持たれた皿を見ながら言った鈴妃によって、当初の目的を思い出し、彼女に近づいた。



「今日は料理番たちは宴の料理づくりでお前の分まで手が回っていないだろうと思ったから……。」


俺の言葉に鈴妃は少し笑った。


「ありがとう。お腹空いていたのよ。良かったら一緒に食べない?」


「俺はさっきあっちで食べたから、これはお前の分だよ。」



そう言って渡すと、彼女はもう一度「ありがとう」と言ってそれを受け取った。





部屋で食事を取った二人は再び回廊に出て、満天の星空を見上げた。



「あのさ……。」


「なに……?」


「宴……来れば?」



そう言うと鈴妃は悲しそう瞳を閉じて、仕方ないと言った顔をした。


「前にも言ったでしょ……。わたくしは遊瑧さまの前には出れないのよ。」


「そうだけどさ……。でも、一人でこんなとこにいるのは寂しいだろ……。」


「……一人は…、慣れているから……。それに、高価な簪も持ってないし……。」



その言葉に胸が締め付けられる思いだった。


妾の子供として生まれた彼女はどれだけ大変な思いをしてきたのか計り知れない……。


冷遇される家のなかで唯一見方となっていた義母と縁を切ったのだから彼女の心情は絶望に近いのだろう。




灑崋はごめんと心のなかで自身の髪を結ってくれた侍女たちに謝りながら、自分の髪から簪を抜いた。



「これつけて行ってこいよ。」



俺がそれを渡すと、鈴妃は驚いたように目を丸くした。



「俺はもう、眠いから部屋戻って寝るわ。あ、そういえば、俺、寵妃だってのに王様と喋ってねーや。だから俺の分まで喋って来てくんね?」


わざとらしく言われたその言葉に玉蘭はクスクスと笑った。


「遊瑧さまにわたくしが話しかけたら宴が台無しになってしまうわよ。」


「なら、端っこで二胡でも弾いて機嫌取ってから話しかけろよ。」


「わたくしぐらいの腕じゃ、機嫌なんて取れないと思うけど……。」



自信無げに胸に手を当てた、鈴妃に今度は俺が笑ってやった。


「文句言われたら、こう言ってやれ!「わたくしの二胡は嶺妃のお墨付きですわよ!」って!」


俺の言葉に鈴妃はコクリと頷き、微笑んだ。



「灑崋、ありがとう。わたくしの友達になってくれて。」


「そういう照れ臭いのは得意じゃ無いからやめろ…。ほら、椅子座れ!結ってやるから。」


「ありがとう…。」



鈴妃の部屋に戻ると、髪を結ってやり、額に花鈿を描いてやり、やっぱり彼女は美人だと思った。


今日着飾ってたどの妃よりも美しい…。



回廊に二胡を持って出た彼女は本当に天女のようだった。



まあ、王様は見た目とかで鈴妃に惚れたんじゃ無いだろうけど、彼女に好意を寄せる気持ちは分かる。


「行ってきます。」


「おう。怒られたらやけ酒付き合ってやるから。」


トタトタと回廊を小走りに行く後ろ姿で、喜んでいる事がよく分かる。


その久々に見た嬉しそうな姿に、俺自身も嬉しくなった。





続きます!

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