紹家の兵士として 中編
「何があった……。」
部屋の中には血の付いた装束と剣を持った黒烏だけが一人立っていた。
俺たちが大広間に着いたのは全てが終わった後だった。
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「奥さまと姫さま方はこちらでお待ちください。私どもで状況を確認して参ります。」
侍女の悲鳴が聞こえ、何かが起きたと分かり、一番安全だと思われる興暿さまの部屋に紹家の方々を集めた。
あとは旦那さまだけだが……悲鳴が聞こえたのは大広間の方だった。
旦那さまの護衛の兵と大広間周辺を警護していた兵もいたはずなのに……いったい何があったんだ。
半分の兵を紹家の方々の護衛のため、その場に残し、残り半分は大広間に向かった。
「彗翔、無茶するなよ。」
俺を心配そうに見る興暿さまに頷き、その場を後にした。
興暿さまの部屋から大広間に向かおうとする途中、回廊の向こうから誰かがずっこけながら走ってくるのが見えた。
「旦那さま!!!ご無事で!!」
ぐちゃぐちゃに泣きじゃくる旦那さまの着物には所々に血痕がついていた。
「た、助けてくれぇぇ!!!殺される!!」
「旦那さま落ち着いて下さい。何があったのですか……。」
宥めながら聞くと、嗚咽混じりにしゃべり始めた。
「ヒック……芳悠が我が家の兵に殺されたんだ……。今、あの異人の血混じりの男が相手をしている……ヒック……。」
異人の血混じりって……黒烏か!!!
何であいつが大広間に……!!
急いで大広間に向かった俺たちは回廊の至るところに倒れる仲間の兵たちの亡骸を横目に見ていた。
そして大広間に着いたとき、そこには黒烏だけが立っており、一面血の海が広がっていた。
「黒烏……。」
そう呟き、近づいた時に黒烏の持つ剣に血がついていることに気づいた。
彼の足下には黒烏の部下でよく調子ののったことを言って、隊長から怒られていた一兵が倒れており、体に斜めに深く斬られた跡があった。
他にも大男と、女が一人倒れており、まるで全て黒烏がやったかのように見えて来てしまう光景だった。
「……彗翔…。」
俺に気づいた黒烏は振り返った。
その顔には血飛沫と、流血したあとがあり、ふと何かの糸が切れたように彼の目からは涙が溢れ出た。
俺を押し、広間に入った隊長は黒烏の心境を察し、彼の肩に手を置いた。
「…黒烏、何があったかは概ね分かっている。ここは俺たちがやっておく。彗翔、黒烏を連れていけ。」
「はい…。」
ふらふらと歩く黒烏の腕をしっかりと掴み、俺は井戸に向かった。
井戸場に連れてきて、水を汲もうと黒烏から手を離すと、その場に崩れ落ちるように黒烏は座りこんだ。
「彗翔………、俺は……。」
自分の赤く染まった手を眺め、黒烏は自分のしたことに絶望しているようだった。
「黒烏!お前は何も悪くない!!お前は紹家の兵士としてすべき事をしたんだ!!」
「だが俺は!!部下をこの手で殺した……。共に過ごした部下を……。」
彗翔は黒烏の肩を掴み、何度も「お前は悪くない」と叫んだ。
続きます!




