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後宮恋物語  作者: あいまいみー
第二章 後宮での日々
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紹家の兵士として 前編



ニヤリと嗤うあいつはあの頃と変わらない容姿で、俺の前にいる。


「何故……ここにいる……。」


冷や汗をかきながらも睨みながらそう言うと、縲は楽しそうに嗤った。



「捕まえにきたんだよ。お前のことを。よくこんなところまで逃げれたね。誉めてあげるよ。」


「………………。」


間合いに入り込ませないよう、剣を縲に向け続ける俺に、奴はそんなことは気にしていないように近づいてくる。



「お前は相変わらずだね黒。私が拾ったあのときと変わらぬ美しさだ。」


俺に触れようと手を伸ばしてきた縲の首に剣を突きつけた。


「触るな。」


先程まで嗤っていた縲の顔からは表情が消え、ただじっと俺を見た。



「その目、覚えているよ。娼館から抜け出したあの日と同じだ。」



縲は何かを思い出すように自分の胸を撫でた。



「後にも先にも私に傷を負わせたのはお前だけだよ。」



首に剣先が着き、縲の白い首に血が流れた。




「だから取り戻したいと思ったよ。お前は私が目をかけてやった子だからね。」


「戻ると思うのか!?あんな場所に……!!」



俺の言葉に縲は口角を上げた。



「あそこには戻らないさ。李氏は今夜ここで死ぬことになっている。それにお前の使い道は男娼だけでは無いのを私が一番よく分かっている。」


「………………。」


「私の為に働け。お前にもっとよい場所を用意してやる。」



俺の頬を触ろうと伸びてきた縲の手を俺は、勢いよく払った。



その行動をただ無表情で見た縲はギロリと俺を睨み付けた。



「お前のところになど行くわけが無いだろ。何をやろうとしているのか知らないが、ここでお前を殺せば全て終わる話だ!!」



俺が剣を振り上げて縲に斬りかかろうとすると、縲は素早く後ろに飛び、それを避けた。



「あの男が死ぬと言っていたがどういう事だ!!」


「そのままの意味だよ。李氏はもう役目を果たしたからこの舞台から退いてもらうだけだ。」



懐から扇子を出した縲はそれで口許を隠した。



「何を言っている。あの男は仮にも領主なんだぞ!!」


貴族を殺せば極刑を免れることは出来ない。

そのぐらいのことこいつは分かっているはずだ。



「ははっ!!私が自ら手を下すわけがないだろ。」


目を細めた縲に黒烏はハッとした。


一緒に裏門の警護にあたっていた部下が今だに帰ってきていない。



近くに気配も感じないから門の見回りをしているとは考え難い……。



「お前……まさか!!!」


「気づくのが遅いよ。私が現れた時点であらゆる事態を想定出来なかったのはお前の落ち度だよ。」



縲は高度な催眠術を使える。




それは奴から漏れだす色気によるものからなのか、それとも薬の類いを使い判断力を無くさせているのかは分からないが、奴の催眠で多くのものが犠牲になった。




俺はその場から走りだし、今夜宴会の行われるはずの大広間に向かった。



その時俺の向かう先から女の叫び声が聴こえた。




ドタドタと回廊を駆けて、たどり着いた大広間からは噎せかえるほどの血の臭いと、壁中に飛んだ血飛沫、床に横たわる大男の姿があった。




部屋の隅では旦那様が震えながら柱にしがみついており、部屋の中央では先程の部下が逃げ惑おうとした侍女の髪を掴み首にその剣を突き刺していた。


部下は虚ろな目のまま、次にその視界にとらえた旦那様に歩みを進めた。





「た、助けてくれ!!!誰か!!!誰か!!!」



グチャグチャに泣きじゃくる太清に向かって、兵の剣が振り下ろされたその時、間一髪で、黒烏の剣がそれを受け止めた。



「旦那さま!!お逃げください!!」



俺がそう叫ぶと、ヒョロヒョロと立ち上がった旦那様は泣きながら走って部屋から出ていった。



「正気に戻れ!!」


俺の声を聞いても力を緩める様子は無く、何度も斬りかかろうとしてくる。


相手は本気で俺を殺そうとしている。


そんな相手を無傷で止められるだけの力は俺には無い。



黒烏が何とか助ける方法を考えていると、隙をつかれ、目のすぐ上を部下の剣が掠めた。



流れる血が左目に染み、左半分の視界が奪われた黒烏に更に追撃するように剣が迫ってきた。




もう駄目かと思い、目を閉じたその時、部下の動きが止まった。


迫ってきていた攻撃による痛みが無いのを不思議に思った黒烏が目を開けると、そこには涙を流しながら何とか自分の動きを止めようともがく部下の姿があった。




「黒烏殿!!!お願いです!!俺を殺して下さい!!」



泣きながら乞われたその願いにただ、目を見開くしかなかった。



「お願いです!!黒烏殿ぉぉぉ!!!今殺された方が何倍もマシだぁ!!」



貴族を殺した者は極刑を免れることはない。


ただ、その刑はさまざまな拷問の末に行われるため、苦しみながら数日を生き、ろくな死を迎えることはほとんどなかった。



部下の言うことは最もだが、苦楽を共にした同士を斬れというのか……?




ただ、その場に立ち尽くす黒烏に部下の兵は力無い声で告げた。




「お願いです……。兵士としての名誉も何も無くなるほどボロボロにされたくない……。今ここで名家紹家の兵士として死なせてください……。」



その言葉に黒烏は奥歯を噛み締めた。



「………………ッ」



次の瞬間、正気を保てなくなった部下は黒烏に大きく剣を振り下ろした。




こっからちょこちょこ黒烏は戦います。

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