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後宮恋物語  作者: あいまいみー
第二章 後宮での日々
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陽青蘭という男 後編

読んで下さりありがとうございます!続きです!


筆頭宦官が出てきたことにより、その場はシンッと静まり返った。



「後宮を辞した、貴女は特別にここにいるということを忘れて問題を起こすなんて、元王族といえど、筆頭宦官として見過ごす訳にはいきません。」


「宦官ごときがわらわに意見するか。分をわきまえよ。」


青蘭と澪鮮のにらみ合いが始まった。


その視線を外し、俺に優しく微笑んだ青蘭は「大丈夫ですか。」と言った。



「あ、え、ええ。ありがとう…。」


「やはり、頭から被りましたね。」



ん?と思い、今朝の事を思い出した。




『お着替えと湯の準備をしておくと善いと思います。頭上にはお気をつけください。』




予言したのかこいつ…!



「灑崋、大丈夫?」


あんぐりと口を開けていたアホ面の俺に涙目の鈴妃が寄り添った。



「貴女は後宮にいた頃から変わらない。いや、あの頃よりも器の小さい女性になられた。」


「なんだと…。男でも女でもない醜きおまえたちのような者にとやかく言われたくなどないわ。」



こいつら知り合いなのか。


青蘭は宦官の中でも古株だから、澪鮮が降嫁する前からの付き合いなのだろう。


でも、そしたら青蘭っていくつなんだよ…。


普通に20代に見えるのに結構歳いってんのか?




「これ以上ここで問題を起こされるのでしたら、主上に報告させて頂き、二度と立ち入りの出来ないようにしてもらう事になりますよ。」


「遊瑧はわらわの甥であるぞ。お前のような不完全な者とわらわのどちらを取ると思う。」


「勿論、私の言葉を聞き入れて下さりますよ。なにせ、今回の件には寵妃であられる嶺妃さまが関わっておりますからね。」



寵妃という言葉にピクリと反応した、澪鮮は悔しそうに青蘭を見た。




「お帰り頂けますね。公主さま。」



圧倒的な威圧に澪鮮は振り返り、出口へと歩いていった。




鬼婆(澪鮮)の姿が見えなくなると、鈴妃は俺に抱きつきながら涙を流した。



「ぅぅ…ぅぅぇ…ヒック…」



信じるとかよく分からないけど、この親子の間には何かがあったようだし、あの母親は明らかに異常だったし…。


どれだけの苦労がこの華奢な体に負担をかけてきたのだろうかと思うと、可哀想になってしまった。



「嶺妃…いえ、按灑崋殿。ご迷惑をお掛けし、申し訳ない。」


その場に臥せた青蘭に、本名を言われギクリとしたが、元々分かっていたと言いたげな口振りであった。


「いや、礼を言うのは俺たちの方だ。俺らだけじゃ公主をどうにもすることは出来なかった。感謝する。」



そう告げると、青蘭は一度お辞儀をし、鈴妃に視線を移した。



「鈴妃さま、公主さまへの処遇をどういたしますか?変に重くすると、灑崋殿の事を暴露される恐れがあります。」


青蘭の声に何とか答えようとするも、嗚咽でうまく言葉を発せないようだった。



「あとでそれについては話す。今は取り敢えず席を外してもらえるか。」


俺がそう言うと、青蘭はすんなりと了承し、部屋から出ていった。



「念珠、悪いけど湯の準備をして貰えるか。あと、服も…。」


「あ、え、はい…。えっと…灑崋さま?」



いまだに状況についていけていない念珠は湯殿に向かった。





「ごめんなさい、灑崋…。あなたにこんな思いをさせるつもりでは無かったの…。ごめんなさい…。」


「いいよ…。お前が謝ることなんて何も無いだろ。」




よしよしと頭を撫でてやると、少しずつ涙が退いていった。



こういうところ見ると、どっちが歳上か分からなくなるな。




念珠が戻って来ると、鈴妃を任せて俺は湯殿に向かった。



着替えと手拭いも準備してくれたようで、籠の中に一式入っていた。




体を手拭いで洗っていると、戸の向こうから声をかけられた。



「灑崋殿、今よろしいでしょうか?」



青蘭の声だ。



「戸の外で話さなくてもいいぞ。男同士なんだし。入って来いよ。」




俺がそう言うと、静かに入ってきた青蘭は何かを持っていた。



「火傷なされたのではと…練り薬を持ってきたのですが…。」


火傷…?


机の上の茶はある程度冷めていて、火傷するほどの温度では無かった。


「別に火傷してないけど…。」


「いえ、顔や肩が赤くなっております。」



そう言われて、「ああ、なるほど」と思い、笑った。


「俺、茶を飲むのは大丈夫なんだけど、肌とかに茶の成分がつくと赤くなるんだ。多少痒くなるだけで跡も残らないからほっといて大丈夫だよ。」


それを聞いた青蘭は不思議そうな顔をするも、「わかりました」と納得してくれた。


「なら、せめてお背中をお流しすることをお許し頂けませんか?」


え、なんで…?


一人で体洗えるんだけど…。


「いや、あの……。」


「せめてこのぐらいはさせて戴きたい!」


俺から手拭いを奪うと、眼をギラギラさせた青蘭。


そんな……軟膏といい、なんで俺の体に触りたがるんだよ……。


そこではっとした。




もしかして…こいつ…俺に気があるのか…!?


いや、いやいやいや!!勘弁しろよ!!!



「いや、一人で出来るし…。」


「自分の中で納まりがつかないのです!」


いや!自分の中だけで納めてくれ!頼むから!



俺は男とどうこうなりたくなんかないんだよ!



青蘭の手が俺に触れるその瞬間俺は立ち上がった。





「俺は女が好きだから!!!」




大声で叫んだ俺に青蘭は目を丸くした。



「え、ええ…。私も女性は好きです…。」


つられて言った青蘭の言葉に、「へ?」と顔を向けると、状況を理解したのか青蘭はその場に踞りながら笑いだした。



俺は何を大事なところも隠さず、宣言してんだ…。


我に還り途端に恥ずかしくなった俺は今だに笑い続ける青蘭の背中を取り敢えず蹴っていた。



「イタッ!痛いですよクククッ!!灑崋殿。」


「うるせーな!いつまで笑ってんだよ!!」



尚も笑い続ける青蘭に痺れを切らせた俺は、がに股で湯船に勢いよく入り、背中を向けた。



やっと、笑い終わったのか、奴は俺の方を向いて笑い過ぎて出た涙を拭いていた。



「んだよ。用が無いなら出ていけ。変人。」


「いえ、お話したいことがありましたので、こちらに参ったのです。」



急に真剣な声色になった青蘭に俺は仕方なく奴の方へ振り返った。



「何。話したいことって。」


「私は筆頭宦官で後宮のお世話をさせてもらっている傍ら、呪術にも精通しているのです。」



呪術…って…よくそういうのは分からないけど、呪術なんて必要なのか?


「勿論、呪術は趣味で行っております。」


「趣味なのかよ!」



普通に王様に命令されてやってるのかと思ったわ!



「呪術の修行のため、毎日占いをしており、灑崋殿が男であることもそれで分かったのです。」


「へーマジか…すげぇな…。」


そんな特別な能力修行したら手に入るもんなのか?


でも、実際俺が男とバレてたわけだしあながち嘘では無いのかも知れないけど…。



「それで?俺に何が言いたいわけ?」


「今から一年と数ヶ月前の即位式の日、私は未来の凱華国について、占いました。」


「……。」


「そのときに出た結果を信頼の出来ると判断した相手にのみ告げようと思ったのです。」


「………つまり、俺の事を信頼したってわけ?」


「はい、鈴妃さまが信頼をおく貴方さまだから私も信頼し、この事をお話しようと思ったのです。」



鈴妃が信頼をおくって……、なんで鈴妃が関わってくるんだよ……。





「あと二年で、この秋煌帝の納める時代は終わりを告げます。」





湯殿に木霊する、その言葉に俺は何も言えず、固まってしまった。


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