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後宮恋物語  作者: あいまいみー
第二章 後宮での日々
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陽青蘭という男 中編

読んで頂きありがとうございます!中編です!


「嶺妃さま、お待たせしました。」



部屋に入ってきた鈴妃は妙によそよそしく俺を嶺妃と呼んだ。


いつもは灑崋って呼ぶのにどうしたんだ…?



そう思っていると、何かを目配せするように鈴妃の目が「後ろを見ろ」と言いたげに動いた。



身体を仰け反らせ、彼女の後ろを覗き込むと、そこには美熟女という言葉がぴったりの女性が立っていた。



え……?



ピキッと体が凍るように寒気がした。


「母上、こちらがわたくしのお友だちの嶺妃さまです。」



苦笑い気味の鈴妃の横に立った美熟女は妖艶に微笑み、手の甲を合わせ礼をした。



「嶺妃さま、紹澪鮮でございます。娘がお世話になっております。」



紹澪鮮って…公主か!!??



俺は慌てて立ち上がり、その場に膝をつき、彼女より低い姿勢で礼をした。



「し、失礼いたしました。公主さま。嶺崋でございます。」



絶世の美女で有名な澪鮮は予想を大きく上回る美しさで、見惚れてしまいそうだった。




「嶺妃さま、顔を上げてください。わらわは降嫁した身、貴女の方が身分は上なのですよ。」



「は、はい…。」




そうは言われても、その美しさから滲み出る威圧で冷や汗が止まらない。


綺麗に細められた瞳は何もかも見透かされているようで、怖くなる。



蛇に睨まれた蛙の気持ちが分かった…。


俺の緊張を察してか、鈴妃は近くの椅子を澪鮮の前に持って来た。



「は、母上!どうぞ座ってください。念珠、お茶を三人分用意して。」




念珠は返事をすると、慌てて部屋から出ていき、澪鮮は鈴妃の出した椅子に腰かけた。





「あ、嶺妃さま!ちょっと手伝って欲しいことがあるから来てください!」



呆然と立っていた俺の手を引っ張って、部屋から連れ出された俺は緊張の糸が切れたからか、呼吸が楽になった。



「おい、何で公主がここにいるんだよ!」


小声で耳打ちすると、鈴妃は申し訳なさそうに眉尻を下げた。



「私は断ったのよ。でも、母上が後宮で満足に生活できるだけの環境が整っているか見ていくと聴かなかったのよ。」


「なんだよそれ…。」



確か、公主と鈴妃は血が繋がっていなかったはずだったよな…。


普通は蔑むような相手にそんなに過保護に普通なるのか?



「それに友達が出来たと話したら、会わせなさいと言われて…。」


「つまり、俺は品定めされてるってことか…。」


「まあ、簡単に言えば…。」



俺はため息を吐き、さっきの澪鮮の表情を思い出した。



彼女がこの部屋に入ってきたとき、椅子にだらしなく腰かける俺を見た澪鮮の目はまるで汚物を見るかのようだった。





現時点で俺への評価は最低なのは自ずと分かった。




「俺、あの人苦手だわ…。」



漂う色気と雰囲気が萎縮させるんだよ。



「お願い我慢して!満足してるって所を見せないと、心配して遊瑧さまに抗議文を送られてしまうわ。」


「王様に抗議するってどんだけだよ…。」



「そうならないためにわたくしとあなたの仲良しぶりを見せつけないと!遊瑧さまにこれ以上嫌われたらワンタンをぶちまけられるじゃ済まないわ!」


「うん…まあ…嫌いかどうかは…うん、まあいいか。」






そこに念珠が茶器を持って走りながら戻ってきた。



落とすぞ。おい!



「姫さま!大変です!お茶菓子が他のお妃さま方に食べ尽くされてしまっていて、ひとつも残っていないそうです!」


「え、えええ!?なんでよりによって…。」



そういえばさっき着物を見るのに集まってたから、そのときにある分全部出したんだろうな。



「と、とりあえず、お茶だけでも出しておきましょう!」


「そ、そうね!!」



大慌ての二人を横目に、今朝届いたキウイの事を思い出した。


今日は少し暑いし、ちょうどいいんじゃないか?




「念珠、台所に冷やしてあるキウイを切って持ってこい。俺の親から届いたやつで、丁度冷やしてあるから。」




俺がそう言うと、鈴妃と念珠は目を輝かせた。



「あ、ありがとう灑崋!!あなたは本当に素晴らしい友人だわ!」


「あーはいはい、分かったから抱きつくな。念珠にキウイは任せて、俺らは部屋に戻るぞ。」


念珠は俺に礼を言うと、走って台所に戻った。



忙しない侍女だな…。





俺と鈴妃が部屋に戻ると、澪鮮は鈴妃の本棚に置いてある本を取って読んでいた。



「相変わらずよく学を積んでいるのね。偉いわ。」


「ありがとうございます。」



俺の時とは違い、愛しそうに見つめる彼女の瞳からは鈴妃への愛情がこれでもかと言うほど伝わった。



「嶺妃さまは何か得意な事はあるの?」



椅子に座った澪鮮が鋭い視線を向けながら、扇子で口許を隠した。



「え、えっと………。」



得意なことなんて考えた事ねーよ。


だいたいの事は並み以上には出来たから、特に一生懸命頑張ったことは無かった。



何も答えない俺に澪鮮はふっと鼻で嗤うと、茶を口に運んだ。



「何もない空っぽな人間であることに貴女は満足しているのね。そんな人生を生きていて楽しい?」



馬鹿にしたような言い方に、俺は立ち上がり言い返しそうになったが、鈴妃が俺よりも先に立ち上がった。



「母上!彼女はわたくしの大切な友人です!そのような言い方、たとえ母上であっても許せません!それに彼女は空っぽなんかではありません!わたくしに料理の仕方や沢山の知らない事を教えてくれます。とても優しい方です!」



勢いよく言い返した鈴妃に俺も澪鮮も驚いて、目を点にしたが、澪鮮は次の瞬間にはチッとこちらを向いて舌打ちをしてきた。



俺も大概だけど、あんたも相当行儀わりーぞ…。



「そうなの、失礼しました。嶺妃さま。」


「い、いえ、大丈夫です…。」



口角をヒクヒクさせながら無理に笑ってそう返した。




そこにキウイを持ってきた念珠が部屋に戻ってきた。



「奥様、こちら嶺妃さまより頂いた水菓子でございます。」



目の前に出されたキウイを目を細目ながら見た澪鮮は「頂きます」と言い、食べ始めた。



その行動に、ほっとして俺と鈴妃も楊枝を刺して食べようと手を動かした時だった、







「ところで、どうして後宮に女装をした男がいるのかしら。」





不意にそう呟いた澪鮮の言葉に俺と鈴妃は固まり、控えていた念珠は何の事だと言いたげに首をかしげた。




「な、何のことでしょうか…?」



必死に頭を働かせて出てきた言葉がこれだった。




「あら、しらを切るの。それなら…」



そう言うと立ち上がった澪鮮は机の上の茶器を手に取ると、俺の後ろにまわってきた。


まずい!!と思ったのも遅く、澪鮮は俺の頭から茶をぶっかけてきた。



鈴妃も念珠もその行動に驚いて、唖然としていたが、すぐに拭くものを探しに行った。




「着替えないと、風邪をひくわよ。」



愉快そうに笑って言った澪鮮を睨み、俺はただ拳を握るしかなかった。



何で俺がここまでされなきゃいけないんだよ。




「どうしたの?何か脱げない理由でもあるの?」



「……俺のことが気にくわないからってここまですんのかよ…。」


もう、バレてもいいと思い、俺は澪鮮がヒラヒラと揺らす扇子をバシッと叩き落とした。



「わらわは貴方が玉蘭と付き合うのに相応しいか見分けたかっただけなのよ。でも、それ依然の問題とは思わなかったわ。男だったなんて…。」


「俺にだって事情があるんだよ!仕方なくここにいるんだからな!!」



手拭いを持ってきた鈴妃が俺にそれを被せてくしゃくしゃと拭いてくれた。



「な、何でこんなことするんですか!!!」


鈴妃は本当に怒っているようで、涙交わりの声でそう叫んだ。


「玉蘭、どうして貴女はこう、心配になるような事ばかり…。」


「わたくしは母上が心配になるようなことなどしておりません!!」


「あの一兵の男の時もそうです!!あんな汚ならしい男に拐かされて…。」




その言葉に玉蘭は大きなその瞳から涙を溢した。





「そんな…どうして…あの時わたくしの事を信じてくれたのではないの…?」



目の前で繰り広げられる親子喧嘩に置いてけぼりをくらう俺はどうすればいいか分からず、取り敢えず鈴妃の肩を撫でて泣き止むように諭した。



「汚い手でわらわの娘に触らないで!!」



ドンと押されよろめいた俺は後ろに倒れそうになったが、誰かに抱き止められ倒れることはなかった。




「これは何事でございましょうか?公主さま。」




俺の肩を掴み、支えていたのはあの不気味な言葉を残した陽青蘭であった。







続きます!

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