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後宮恋物語  作者: あいまいみー
第二章 後宮での日々
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夏風に聴こえる二胡


鈴妃に言われた通り俺は王様に飯を持っていくことにした。


言われてみれば少し痩せた気するかもな。


料理長に聞けば、王宮での仕事が忙しいのか、ほとんど手をつけていないそうだ。


手をつけているの物は軽く食べられる物ばかりだと聞いた。


時間が惜しいなら、手軽に食べれるやつがいいよな。




台所に立ち、たすきを袖が汚れないように巻き、まな板と中華包丁を取り出した。



あ、その前に米炊いとこ。


一口ぐらいの大きさの握り飯なら手軽に食べれそうだしな。


鶏肉はまるごと蒸して、よだれどりを作ろう。

一羽じゃ多いだろうし、余ったのは俺の間食用にでもするか。



あとは桃饅頭とかでいいかな。



蒸し上がった鶏を手早く切り、ピリ辛のタレをかけて、上にネギを散らして完成。



炊き上がった米を少なめに取り、手の上で丸め、塩味のついた海苔をつけた。



桃饅頭の水分が多すぎてべちゃべちゃにならないよう、たまに様子を見ながら食器に盛り付けていく。




最後に蒸し上がった桃饅頭を詰めて終わり。




緋仙宮のあたりで待ってれば来るかな。


王様は妃たちのご機嫌取りをしに毎日昼頃に一度後宮の緋仙宮という庭園の見える宮に来る。


そーゆー事もしてるから飯を食う時間が無くなるんだろうな。


妃たちは愛しい夫と唯一話すことの出来る機会だから王様の事など気にせず自分の事を語りたいだけ語る。


それを全部聞いてあげるあたりあいつはあれで結構優しい奴なのかもしれないと思った。


まあ、俺は緋仙宮には行かないけど。どうせからかわれるだけだからな。



監視しておかないと他の妃にひっくり返されかねないから取り敢えず運んで待っていよう。




回廊を歩いていると前から鈴妃がやって来た。



「灑崋!作ってくれたのね!ありがとう!」


「まあ、暇だったし。」


「とても美味しそうね。よだれどりかしら?」


「そうだよ。あと握り飯と桃饅頭。」


「え!桃饅頭!!灑崋!遊瑧さまが残したらわたくしの部屋に持ってきてね!わたくしが余ったのは食べるから!!捨てないでね!!」


「分かったよ。どうせ鶏肉まだ余ってて他の料理作ろうと思ってたから。」



「やったー!」と叫んだ鈴妃はやたらと元気だ。



なに。何かあったのか?



「あ、じゃあわたくしはこれで。」


「あ、ああ。ってえ?緋仙宮に行かねーのか?」


「行かないわよ。只でさえ他の妃の相手をして疲れるだろうに、わたくしの顔なんて見たらきっと不快に思われるわ。」


「あ、そう。」


「ありがとね。灑崋。」



そう言うと鈴妃は行ってしまった。



ちょこっと王様に鈴妃について口添えでもしておこう。



王様は彼女の何が嫌なのかは分からないが、誤解があるなら解いた方がいいだろう。




そして昼頃になると各宮から続々と妃たちが集まり、緋仙宮には人が溢れかえっていた。



俺は何とか食事を死守しながら、王様に何て言おうかと考えていた。


と、急に悲鳴が上がり、何事かと思ったがどうやら王様のご到着のようだ。



美しい妃達が我先にと王の前に立ち、自分の事を売り込みに行っている。



何というか……まぁ、がんばれ……。


あの群衆が一段落したら渡すか。


俺は美しく作られた庭園を眺めていた。


緋仙宮は後宮の中だと最も広い宮で、何代か前の王が寵妃の為に作ったそうだ。


広々とした緑生い茂る庭園には大きな滝があり、大樹がそのわきに生えている。


元々は滝も大樹も無かったのだが、わざわざ寵妃の為に国中から技術者と労働者を募ったそうだ。


働く場所があれば金が回るからという政策も込みでの建設だったのかもな。


その結果国は豊かになったと聞いたし。




「待たせたな。嶺妃。」


後ろで声がし振り返ると、揉みくちゃにされたのだろう。少し着崩れた王様が立っていた。




「お疲れ。」


「ああ。ん?それはなんだ。」



俺の持ってきた料理を指差し、不思議そうな顔をした。



「最近ちゃんと飯食ってねーんだろ?だから短い時間で食べれるの作ってきたんだよ。」


俺が皿にかかっていた布を取ると、王様は少し笑った。



「お前、料理が出来るのか。」


「そうだよ。何か悪いかよ。」


「いや、ありがとう。」



箸を渡し、俺も腹がへったので一緒に食うことにした。



「時間がねーからって食事抜くのは良くねーぞ。こんなとこ来てるなら食事しろ食事。」


「ああ。分かってるよ。それにしてもお前よく俺が飯を食えてないって分かったな。」




その質問に、ここだ!!と思い、それは…と続けた。




「鈴妃が気づいたんだよ。あんたが少し痩せたって。」



俺がそう言うと王様の箸を持つ手が止まった。



「俺、王様は誤解してんじゃねーかって思うんだけど。」


「誤解?」


鋭く睨み付けるような眼光が俺の眼を捉える。



「鈴妃はいい奴だったよ。そりゃ多少煩いときもあるけど、他の妃よりもあんたの事ちゃんと考えてくれてるし、あんたに不快な思いをさせたくないからってここにも来ないんだぞ。」


「……お前、いつからあいつと親しくなったんだ。」


怒気を含んだその声に、一瞬怯んだが、彼女の事を話題に出せばこうなるだろう事は想像ついていた。


「あんたがワンタンひっくり返した日に初めて話して、そっから……。」


「ふーん……。」


「ついでに男だってこともバレた。」


「お前はアホだな。」


「うるせーな!今は俺の事はどうでもいいんだよ!!それより俺が言いたいのは鈴妃へのあの態度をやめろって言ってんだよ。」


俺が桃饅頭をかじりながら言うと、王様は握り飯に手を伸ばした。




「お前あいつに惚れてるのか?」


「は?ちげーよ!鈴妃とはダチだダチ!!」


「やけに必死だから惚れてんのかと思った。」


「ダチの為に熱くなれるいい男なんだよ俺は。」


「その格好で言われても説得力無いぞ。」


「るせー!!話を逸らすな!!」



勢いで持っていた桃饅頭をぎゅっと握ってしまい中からあんが溢れ出てきた。


着物につかないように焦って布巾で拭いていると、王様が無言でどこかをずっと見つめていることに気づいた。


色気を漂わせるその熱視線の先にいたのは鈴妃だった。




そう言えばこの位置から鈴妃の暮らす涼西殿が見えるんだったな。




鈴妃は夏風にふかれながら、二胡を奏でている。



王様の鈴妃を見る目はどうやっても悪意のようなものを感じない。



むしろ、その逆で………………。




そのとき一つの考えが頭に浮かんだ。







その気持ちに気づいているのかいないのか分からないが、彼女への想いが二人の間に溝を作っているのではないだろうか。



「王様」



俺が声をかけるとはっとしたように、俺に視線を戻した。



「鈴妃のどこが嫌なんだよ。」



俺がそう言うと、少し考え、ぶつぶつと言い始めた。



「あいつは煩いんだ。」


「まぁ、煩いときはあるけどさ……。」


「それに変な気分になる。」


「え、どんな?」


「よくわからない。言葉に出来ない。」


「なんじゃそりゃ。」


「あいつに振り回されたくないから、俺の前に現れるなと言ったのに、姿が見えないと気になって仕方なくなる。」


「………………。」


「俺ばかりがその事を気にしているのがまた腹が立つ。」


「そんで後宮に入れたわけ?」


「後宮に入れろと言ったのは父上だ。俺じゃない。」


「先王が?どうして。」


「知らん。今言った様なことを言ったら、後宮に入れろと言われたんだ。」



つまり、先王は王様の気持ちに気づいたって事か。


「俺のこの気持ちの正体は自分で見つけなければならないから、あいつを避けたくなる。」


「は?意味わかんねー。」


「俺は……知りたくないんだよ。あいつに対してどんな思いを持っているかの……。」



王様の繊細なところが垣間見えた。



薄々気づいてるのかもしれない。



自分のその煩わしい気持ちの正体に。



怖いんだ……自分が鈴妃を愛しているのだと分かることが…。




「王宮に帰る。ご馳走さま。」


「ああ。」




箸を置くと王様は立ち上がり王宮に帰って行った。





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