ごめんなさい
両手を後ろで縛られ、目隠しをされている。
誰かが私の両頬に手を当て、上に向かせた。
「玉蘭…」
私の名前を愛しそうに呼ぶのは私の夫。
「わたくしを殺すのでしょう?」
「……。愛してる…愛しているんだ…。」
愛情と憎情は紙一重も無いのかもしれない。
「余を…怨むか…」
「いいえ…怨んでなどいませんよ」
微笑むと息を飲む音が聞こえた。
キィと牢の開く音がし、
「主上、時間です」
私の最後を告げる言葉が聞こえた。
名残惜しそうに私の頬から手が離れていく。
「最後に言っておきたい事はあるか。」
言っておきたい事…。本当に伝えたい人はここにはいない。
私の目を覆う布が取られ、薄暗い中ぼんやりと見えるのは後宮に仕える美姫たちが恋い慕う皇帝陛下である。
私も…貴方もこんな結末を望んだわけでは無かった…
出会いは九つの時、馴れ馴れしくする私をうざったそうにあしらっていましたね。
『遊瑧さま!あなた皇太子なのでしょう!?皇帝になったら、わたくしを後宮に入れて下さいませ!!』
『黙れ!誰が貴様のような端女を余の後宮に入れるか』
笑みが溢れる。懐かしい事を思い出したわ。
「遊瑧さま…ごめんなさい…」
それが私が選んだ最後の言葉