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縁の下の能力持ち英雄譚  作者: 瀬戸星都
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0004.深緑の神殿

 いつから建っているのだろうか、経年的な劣化はあるが何か見えない力に守られたように一定の質を保っているようにも見える。入り口は開放的で侵入を拒むものは特にない。奥行きはそこまで広くなく少し歩くとすぐに最奥の広間にたどり着いた。


 部屋の中央には台座があり、更にその先には白い石像が立っていた。

 いかにもな儀式に使われそうである。フラグにしたくはないが、石像は今にも動き出しそうだ。決してフラグではないからね。


「これが祀られている神か?」


 翼の生えた人間が両手に盃をもって水を移し替えている。

 天使を模しているのだろうか。空想上では翼人なんてのもいるかもしれない。


 中央の台座まで歩み寄ると、台座に手をつきながら像をじっくりと観察した。


 ーー汝、力を欲するか?


 不意に頭の中で声が響いた。


 な、なんだ!? どこから?


 ーー答えよ。汝、力を欲するか。


 平常時であればこんな超常現象に遭遇すると大騒ぎするところだが、そもそも異世界に転移したらしい現状では驚きも半分である。もういっそ女神でも女神でも出てきくれ。


 余計なほうへ思考が進んでしまい、返事をしなかったためか脳内の声が少し怖くなった気がする。


 ーー我が有すは調和の力。過ぎたるを戒める力。我が力をもってすれば魔王と言えども遅れはとるまい。富も力も名声もこの世のすべてがお前のものとなろう。


 !?


 いきなりチートフラグを踏んでしまったのだろうか。それに魔王という聞き捨てならない単語を聞いた。


 この世界には魔王が存在する。


 しかし力を手に入ればそれすらも凌駕するらしい。もはや無敵。人生イージーモード。迷うまでもない。



 ーーもう一度だけ問う。汝、


「答えはノーだ」



 言い終わる前に答えた。


 無双な人生も悪くないかもしれない。だが、そんなうまい話が早々あるだろうか。天の邪鬼と言われようと人の話は疑ってかかるのが定石だ。人かどうかは微妙なところではあるが。


 さらに言えば、調和の力と言っている割にはすべてを手に入れられるという矛盾。力を持つものは身を滅ぼすとも言うし類は敵を呼んでしまうかもしれないしな。


 もっと疑ってかかるならこの世界の魔王が悪いやつだとまだ決まったわけではない。最近はそんな物語も多くなってきた。それに魔物にとっては神様みたいなものだろうし。


自分にとって正しいと思う道は自分で決めたい。そうでなくては自分である意味がないからな。



 ーーよかろう。汝に力を与えよう。



 神様は耳が悪いのだろうか。ちょっとカッコつけた心の声を返してくれ。



 ーー案ずるな。力をどう使うかは汝次第だ。必要なときに何もできないのは憐れの極み。



 それはおっしゃる通りなんだけど。何、神様は意外と親身なの。



 ーー我は神ではない。それに授けるのは魔王を御するほどの力でもない。



 そこまで嘘なのか。いや要らないとは言ったんだけど、くれるなら気になるのが人間だよね。



 ーー我は調和を司るもの。使いこなしてみせよ。



 そう声が響いた後、石像から発した光で部屋中が包み込まれた。


 光は一瞬で収まり、何事もなかったように辺りを静寂が包んだ。


 何の力か説明はないわけね。石像を一瞥したところで台座から手を離した。


「なっ、なに今の!? 今、確かに光ったわよね!」


 静寂を破ったのは待ち望んでいた久々の人の声だった。


 声がした方に振り返ると広間の入り口には二つの影が伸びていた。




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