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縁の下の能力持ち英雄譚  作者: 瀬戸星都
22/50

0021.現実逃避

 

 ふむ。これはつまりこういうことだろうか。


 あ……ありのまま今起こったことを話すぜ! ……的な?


「もしかして、俺ってばよ、魔物を無害化できちゃう?」


 ついつい、いつもと違う口調になってしまった。


「まったく、何馬鹿なことを言ってるでありんす」


 同じくリッカも現実逃避をはじめたようだ。意外とノリがいいのな。

 リッカの新たな一面を垣間見れた。ボケると意外に合わせてくれるのかもしれない。


 しかし魔物が魔物じゃなくなるなんて……何言ってるのかわからないと思うが俺も何が起こったのかわからないでもないが確信はない。


 つまりだ。


「冷静に考えれば仮説はある。俺の調和の能力だ。もし元が動物で、核が埋め込まれたことで魔物化したとすればそれは明らかに異常な状態だ。それを調和の力で本来あるべきバランス状態に正したと考えれば、異常な状態の原因である核を取り除くことができても不思議ではない」


「ほう。なるほどな。それはつまりヤマトが念動力とやらだけでなく、調和とかいう能力も持っているということかな?」


「そうだよ」


「そっかー……」


「……にこっ」


 とりあえず擬音語付きで笑顔を返しておいた。


「ふっざけんじゃねーーーー!」


 ついにリッカが爆発した。


「おいおいおいおい、ヤマトさんっ! そんな話は聞いていませんよ」


「落ち着け。キャラが崩壊しているぞ」


「落ち着いてられるか! 複数能力(マルチスキル)なんて初めて聞いたぞ!」


「リッカが知らないだけで、世界は広いのだ」


「……のだ。じゃねぇ!お前みたいな世間知らずがそんな事知っているはずがないっ!」


「……どきっ」


「さっきから擬音語が腹立つっ!」


 そろそろ精神が壊れそうなのでお互いに冷静になることにした。現実に戻ろうか。


「もし本当にヤマトの力で魔物をただの動物に戻せるとしたら、世界はきっと変わるぞ。今までの常識が覆るんだ」


 世界ときたか。そんなもの背負うつもりはないんだが。


「全ての魔物で同じことができるかどうかはまだわからないぞ」


「確かに。もっと試す必要があるな」


 なぜかリッカがやる気を出している。意外と正義感が強いのだろうか。


「ちなみにこの魔石はどれぐらいで買い取って貰えるんだ?」


「質にもよるがひとつ50ゼムってところだ」


 日本円にして5000円程度か。悪くない。リッカの強さは想像以上だった。これで俺の念動力でサポートすれば同じクラスの魔物は敵ではないだろう。能力についても明かしたためリッカの前では使用をためらう必要もない。


 だが流石に何かあってはリッカの母に顔を向けられない。


「よし。同じように討ち漏らした狼を狩っていこう。決しては無理はしない。いいな?」


 リッカが頷く。


「ところで、俺の能力のことだが……」


「わかってるよ。他言はしない。今のところはね」


 最後の一言は気になったがリッカのことだ。無闇矢鱈に吹聴することはないだろう。


 二人は揃って街の入口へと向かった。


 しばらく歩いて街の入り口が見え始めた頃リッカが呟いた。


「……なんだ、これは」


 視界のあちらこちらで人間対魔物の戦闘が行われていた。同じような制服を着ているのは恐らくブレイズ国に所属している兵士だろう。一方、服はバラバラだが魔物と対等にやりあっているのはきっとギルドだ。何と言ったってあのベルグがいる。どうやら予備の剣でやり合っているようだ。また、周囲には魔物の死骸や負傷して倒れている人間も多くいる。


「こんな数は初めてだ。いったい何がどうなっているんだ」


 どうやら今回の襲撃の規模は大きいらしい。

 これなら討ち漏らしが出るのも仕方ないかもしれない。劣勢とまではいかないが兵士やギルドもあまりの数に困惑しているようである。


 討ち漏らしを探すよりどこかに加勢したほうが良いか?

 そう考えながら周囲を見渡していたとき、遥か前方から激しい咆哮が聴こえた。


 戦闘中だった兵士やギルドも思わず、声の方を向く。


「……なんてデカさだ」


 自然と声を漏らしてしまった。


 リッカも驚きを隠せていない。


 前方には他の狼よりも一回りも二回りも大きい黒い狼が悠然と歩いていた。自らの力に絶対の自信を持っているかのように落ち着いている。


 間違いない。やつらの親玉だ。


 いくらリッカが強いと言っても流石に相手が悪い。ここは兵士かギルドに任せるしかない。


 グォォォオ!


 早速近くにいた兵士が巨大な狼に立ち向かったが、狼のなぎ払いに兵士は一瞬にして吹き飛んだ。


 おいおい。なんてパワーだ。反則だろ……。


 足止めにもならない圧倒的な力に戦慄する。


 無理をしないと決めたばかりなのに簡単に逃げられそうにない状況にため息をつくほかなかった。




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