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縁の下の能力持ち英雄譚  作者: 瀬戸星都
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0019.早すぎる再会

 

 さて、おそらく魔物が来るとしたら森からだろう。とりあえずこの街の入口の方に向かうか。


 実はもう追い払った後だったりして。そんな甘い考えを持ちながら住宅地から市場の方へ向かって歩いていたが、咄嗟に物陰に身を隠すことになった。視界の先には市場に陳列された食料を荒らす魔物――狼を捉えていた。幸いにも店の主人は既に避難しているようで人的被害はない。


 もう突破されたのか? 早過ぎる。 防衛線はどうなっている?

 焦るな。落ち着け。相手は一匹だ。単に一匹が兵士やギルドの隙をすり抜けてきただけかもしれない。一瞬上がった心拍を落ち着けながら、狼の様子を窺う。食料に夢中でこちらには気づいていない。


 油断している今なら弓で当てられるか? 


 よし先手必勝だ。


 とはいうものの、弓の経験はスポーツ施設で少し触ったことがあるくらいだ。しかもそこでは打ちやすいようなサポート器具があった。


 矢を取り弓を引いてみる。やはり本物は勝手が違う。


 さすがに無いも同然の付け焼き刃じゃどうしようもないか。だが、前に飛びさえすれば……


 強い抵抗に手が震える。とても狙いをつけれそうにもないが力を振り絞って一段深く弓を引き、放った。

 鋭く矢が飛び出した。スピードこそ出ているが矢は目標から大きく外れている。


 クッ!曲がれっ!!


 能力をつかった。念動力だ。


 目標からズレて放たれた矢は急激に軌道を変え、魔物に向かっていった。


 グァッ?!


 突然の飛来物に呻き声をあげる。


 ははっ。我ながら反則みたいな手だな。


 矢は見事に狼の横腹に突き刺さった。致命傷には至らなかったもようだが、間違いなく深手を負ったはずだ。矢の質量が小さいからだろうか、頭痛の負担も酷くない。


 もう一発いくか?


 しかし、すぐに魔物はこちらを捉えたようだ。悠長に矢を構えている暇はない。


 すぐに弓を降ろし、刀を抜くと正眼の構えをとった。


 狼が勢いよく近づいてくる。


「ハッ!」


 構えのまま刀をさらに突き出した。おそらく突きの殺傷能力が一番高いはずだ。

 しかし、狼は地面を蹴って横に交わした。すかさず突き出した刀を戻し再び狼の方に向ける。突きは当たらなかったが警戒させることには成功したようだ。少し間合いが大きくなる。


 グルルルッ


 狼は低い唸り声を上げ威嚇してくる。こちらから飛び込むか、いや、焦らずにじっくりいくか。

 間合いが僅かに変わるたびに思考を巡らす。


 不意に視界の端に動くものが見えた。


 なっ、もう一匹来やがった?! 


 別の狼だった。入り口はどうなってるんだ、と文句を言いたくなったがそれで事態が好転するわけではない。両方の狼を視界に入れながジリジリと後ずさる。


 一匹目の狼も二匹目の狼が近づいてきたことがわかっており飛びかかるタイミングを見計らっているように見える。


 二匹相手は分が悪い。かと言って狼相手に逃げ切れるとは思えない。


 どうする。まずは手負いの狼を攻めるか。いや、二匹目が飛びかかってくる可能性もある。


 迷っていたときだった。


 シュッ!


 空を切るような音が聞こえたとほぼ同時に一匹目の狼に刺さった矢が二本になった。そして狼は体勢を崩すとそのまま、地面にうずくまった。


 一瞬遅れて駆けてくる音はそのまま二匹目の狼に向かっていった。


 武器は小刀だ。一撃目を躱した狼だが、息もつかぬ二撃目はさけられず切り傷をつけた。


 なんて速さだ。


「ヤマトッ!後ろに回れ!」


「……ああ!」


 とばされた指示に従う。数は有利。挟み撃ちだ。

 すぐに狼の視界から消えるように後ろに回り込む。狼も意図を察したのか、こちらにも注意がむく。だが、その一瞬の隙を見逃さなかった。


 少女は狼の体に小刀を突き刺すと狼はそのまま生き絶えた。


「よくも置いていってくれたな」


リッカが小刀に付いた血を払いながらこちらに向かってくる。そのまま刺されそうな凄みすら感じる。


しかし、腕に覚えがあるというのは嘘じゃなかったのか。下手すればギルドでも上位にいくぐらいじゃないだろうか。


怒ったリッカをどう宥めようかと思案しつつ、リッカに歩み寄るのだった。





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