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縁の下の能力持ち英雄譚  作者: 瀬戸星都
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0001.能力の自覚

 

 とにかく、この世界について知らないと。

 手に入れた本を開いてみると出だしはこう始まっていた。


 愛する妻へ


 うん、もう何て言うか読み難い。数ページ目を通したところで確信した。これは単なるイチャラブ日記である。好きだの愛しているだの可愛いだのと書かれている、どうもごちそうさまです。

 情報という情報が得られず、落胆しかけたが日記の終わりには少し気になる文章があった。


 ーー近頃このあたりに魔物が出たという噂を聞いた。ここはもう危ないかもしれない。一緒に過ごしてきたこの地は捨てがたいが、命に代えられるものはない。新天地で僕の愛する妻と、また新婚気分を味わうのも一興だ。そうだ。新婚気分といえば、明日はこの村で初めてデートした場所に連れて行こう。


「この世界では魔物が存在するのか」


 もう少し言えば、人々は魔物という存在を認識はしているが出現頻度は少ないことがうかがえる。もし魔物がよく現れるのであれば自警団なり、それなりの対抗勢力があるはずだ。魔物が出るという噂だけで移住を考えるとなると、自衛の手段は少ないのかもしれない。少なくとも村レベルでは備えられないくらいには。

 本を閉じて改めて表紙を見ると、少なからず年季の入ったようにも見える。この本が書かれて数年は経過しただろうか。今、世界はどうなっているのだろうか。少なくとも文字は認識できたが言葉も通じるのだろうか。まだ不明なことは多いが、ここで待っていても事態が好転することはなさそうだ。そろそろ外にでるしかない。


「その前に、と」


 どうやら自分にあるらしき能力を把握してからでも遅くはない。むしろ魔物が出ることを考えると把握しておくのが得策だ。大方予想はついている。さっきは本を動かすことができた。次はそうだ、さっきの藁ベッドにしよう。


「動け」


 ズキンとする頭痛とともに、藁束が一つだけ持ち上がってすぐに落下した。もう疑いようがない。

 サイコキネシスだ。念じるだけで物体を動かせるアレである。やばい。少し感動した。元の世界ではありえない現象に少年の心をくすぐられないはずがない。

 しかしあの大きさをほんの僅か動かしてこの頭痛となると、便利なことは間違いないが一撃必殺には程遠そうだ。まさか見えない寿命が縮んだりはしていないだろうな、と若干の不安を覚えつつ、能力についてはまた誰かを探してに聞くことにしよう。


 そうして、遂に小屋の外に出ることした。


「こ、これは…」


 周囲に人影はなく、小屋の外はもう廃村と化していた。


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