賞金王に俺はなる!!
俺は仕事終わりにネクタイを中指で緩めて、先月購入したBMW740eiパフォーマンスエグゼクティブの助手席にジャケットを置き、今夜の予定を確認する。
若いころから容姿端麗だった俺は、40代となった今でも部下から憧れられる存在であると自負している。
正直、俺は人生の勝ち組と言ってもいいだろう。
関西出身の俺は、自分の可能性を信じて上京した。
苦しい時期もあったが、持ち前の人当りの良さと、才能、そして、このルックスで何もかもが上手く事が進んだ。
仕事、金、女、地位、名誉・・・・・・・・・・・・・・
東京タワーの灯りも、俺の演出かのように思えるくらいだ。
スマートフォンの着信履歴から今日の女を選び、車のエンジンをかけた。
(トゥルルルルルル・・・・・・・・・・・・・・・・・)
スマートフォンの着信音が俺を呼び止める。
「今日の予定は決まったのだが、まったく、どの女だ。それとも、あの商談が決まったのか?」
前髪をかき上げながら、スマートフォンの明かりに目をやった。
仕事の呼び出しだ。しかし商談などではなく、毎朝6時に鳴るアラーム音だ。薄く細くなった前髪をかき上げ、ため息をついた。
今日はあいつと同じ工程での作業だ!!
俺よりも一回り以上年下のくせに、少し手先が器用なだけで
生意気な口をきいてきやがる!
(俺が怒ったらあんな奴ボコボコに・・・・・・)
中年太りの腹をさすりながら、テレビに映る遠く離れた東京タワーを見ながら作業服に手を通す。
夢が現実で、現実が夢。そんな夢を見ながら無精ひげの生えた口が舌打ちをした‼
「頑張ってね!いってらっしゃーい」
若い新婚夫婦ににらみをきかせ、原付バイクのエンジンをかけた。
(こんなヘドが出る生活、いつか・・・・・・・・)
借金の返済期限を気にしながら町工場へと向かった・・・。