新・銀玉特攻隊 -7年の時を経て- 後編
次の作戦は、兵力を温存する為、攻めやすい場所にした。
出玉は少ないが、大当たりしやすいものを狙う。
戦果を上げるには、まず小規模な戦いから勝っていくしかない。
戦術としては、攻めては引く、攻めては引く(止め打ち)を繰り返し、相手の出方を窺う。
しかし、思った以上の戦果を上げられないのである。
やはり、本丸を攻めるべきか。
激しく苦悩した。
だが、この作戦変更が功を奏したのか、千載一遇のチャンスに恵まれる!
大将だ!
大将である!
な、なんと、相手は丸腰(激アツ演出)である。
「お前のクビ、もらったぁー!!」
刀を抜き、一気に襲いかかる。
これで、散って行った同志達に、報いることができる…
長かった…
これで終わる…
同志達の顔が、走馬灯のように駆け巡る。
あ、あれ!?
大将が、「た、助かったぁ!」と嬉しそうな顔で逃げていくのだ。
私は、あろうことか石に躓いていた(ガセハズレ)。
(ぐぐぐぅ〜!)
激しい歯軋りをしている私がいた。
その後、この出来事を機に、全軍総崩れになり始める。
もう、ここで崩れてしまうと、立て直すことは不可能だろう。
それ程、大将を逃したことによる、ダメージが大きい。
ああ、
この戦、負けである。
私は、その場で膝をつき、うな垂れた。
ふと、手にしている軍配を見た。
心なしか、埃を被っているように見える。
いきなり、それを地面に叩きつけた。
跳ね返りが悪いせいで、身体に当たったが、その痛みでさえ、今感じる痛みを和らげるものだった。
(やはり、引き揚げるべきだった…)
指揮官として、あるまじき姿である。
今、必死に闘っている者達だけでも、生還(換金)させなければならない。
そんな時だった。
「殿!まだこの戦、終わっちゃいないぜぇー!!」
そう言って、自ら死地へ飛び込んで行ったのは、我が隊で一番勇猛果敢な「銀八」だった。
何をしているんだ!
もう勝敗は決まってるんだぞ!
そう、叫ぼうとして止めようとした私を、すかさず肩を抑えた者がいる。
「殿、俺だって男だ!俺も行きまっせぇ!!」
そう行って、続いて飛び込んで行ったのは、どこかひょうきんで憎めない「銀助」だった。
やめろ…
みんな何をしている…
もう、勝負がついているんだぞ!
そんな、心の叫びを悟ったように、そっと私の肩に手を当てた者がいる。
「殿、私は殿に出会えて幸せでした…。」
「それでは、私もお先に…」
優しげな笑顔を向け、そう言ったのは、普段は物静かな「銀矢」だった。
こんな戦禍の中、死地に飛び込む彼の周りは、不思議と穏やかだった。
「もういいっ!頼むからやめてくれ!!」
そんな私の声が、号令になったかのように、前に躍り出た者が2人いる。
「殿!いつも我々はご迷惑ばかりかけてました!」
「ですが、殿!今日こそ恩返しが出来そうです!」
そう言って、嬉々としたように飛び込んで行ったのは、瓜二つの兄弟、「銀太」と「銀次郎」だった。
「私は駄目な夫だったと思います。でも、家族の長として、ここで責任を果たしたいと思います。」
茫然とする間も無く、後に続いたのが、「銀平」だった。
「な、何を言ってるんだ!お、お前にはまだ幼い子供と、『銀恵』がいるじゃないか!!」
走り寄り、必死で制止しようとしたが、石に躓いた。
そして、うつ伏せの状態で倒れた。
これで2回目だ。
こんな事しか思い出せない自分が、無性に情けなかった。
次々と、同志達の命が散って行く。
地面を間近に眺めて泣いている私に、近づいてくる足音があった。
そして、そっと抱き起こしてくれた。
「殿、皆は、あなたに惚れてんだぜ。それじゃ、あっしも行きますか!」
我が隊で最高齢の「銀蔵」だった。
そう言って、去って行った、彼の最期も素晴らしかった。
そうか…
そうだった。
私も、こうしてはいられない。
すぐ彼等に、追いつかなければなるまい。
(あのー…)
さ、行くか…
(あのー)
なぜか足取りは、力強かった。
あのー
「あのー、お時間なんですが…」
「何を言っている。まだ彼等の勇姿に報いていない。」
「いえ、そうじゃなくて、閉店時間なんですが…」
「何だと貴様ッ!さては非銀国民か!!」
バン!と席を立ち上がり、相手を睨みつけた。
店員は、突然の剣幕に、恐怖で腰を抜かしていた。
……………
そんなこと、出来るわけないじゃん。
席を立ち、ホールを後にした。
寂しさを感じる、秋も深まる頃だった。