新・銀玉特攻隊 -7年の時を経て- 前編
ふと、懐かしい文章を見つけた。
もう7年ぐらい経ったのか。
以前の私は、ギャンブル依存だった。
正しくは、「だったかもしれない」と振り返るのだが、その影響か、書いている文章も、パチンコ・スロットに関するものが多かった。
その頃の日記かぁ、と思ったのだが、よくよく読んでみると、作り話だった。
つまり、フィクション。
7年の時を経て、再び、大幅に加筆・訂正をして、投稿してみようと思いました。
それでは、その物語を、お楽しみ下さい。
今日は、遅い時間帯にホールへと足を運ぶ。
季節は秋も終わり。
暗くなるのが早くなる頃、気分的には本当に夜遅くに来た、という感じだった。
(フフフ…)
しかし、奇襲を成功させるのは、むしろ好都合な季節。
攻めるのは、やはり周りが暗くなってからに限る。
そう、私の目標は、人気機種「山物語」という牙城を陥落させることにある!
戦略としては、前日に爆発した台や、ゲーム消化数が少ないものを、重点的に攻めていこうと考えた。
そうと決まれば、兵士を徴収せねばなるまい!
まず、1000円札で屈強な者どもを募る。
「立て!国民たちよ!!」
左手を高々に挙げながら、紙幣投入口に呼びかけるのである。
「我こそは!」
「我こそは!」
前後左右、カチカチと音を立てながら、血の気の多そう、いや、銀の気が多そうな猛者達が、1000円分キッチリ集まった。
皆を見渡す。
おおー、なんと、血気盛んな奴らだろう。
皆、同じ顔つきに見える。
これは、おおー、私の顔が銀玉に映っただけである。
それはいい。
私の親衛隊である精鋭部隊も作った。
これを「銀撰組」と名付ける。
確かに、これは本当に強そうだ…銀だけに。
部隊(舞台?)は揃った。
高台へと登る。
我が兵は、後方までズラーッと綺麗に並んでいる。
『私が総指揮官である!』
そう言わんばかりに辺りを睥睨し、すぅーと息を吸った。
『突撃っーーー!!!』
私は右手にある軍配(台のハンドル)を右に回し、大号令をかけた。
我が軍は果敢に攻めた。
前線にいる弱兵(釘)どもには目もくれず、ただ本丸を目指すのである。
城塞(役モノ)を掻き回し。
城郭(液晶画面)を震撼させ。
赤・赤・赤!の血祭り(熱いリーチ)が起こるのだ。
しかし
しかしなのだが…
一向に、大将の首(大当り)が取れない!
おかしい…。
これはおかしい…。
戦場では、一瞬の判断が大きく戦局を左右する。
こ、これは「罠」か!?
同時に、『全軍引けぇーー!!』と、声を放っていた。
血の気は引いている。
まずは、この体勢を立て直さねばなるまい。
私は力を失い、重く感じる右手を上げ白旗を、ではなく、呼出ボタンを押した。
「お待たせ致しました、お客様!」
「全軍に通達せよ、30分後に戻ると…」
「はっ?休憩ですね?」
「そうであった、すまん…」
私の足取りは重かった。
作戦会議(遅い夕食)である。
続々と報告が入る。
思ったより、多くの犠牲(出費)を出している。
彼等はもう戻って来ない…。
いやいや、指揮官である私が、情に流されてどうする!
いかん、この戦、初めて私に迷いが生じた。
すかさず部下が、にじり寄る。
「殿、もうこれ以上は、無駄に戦力を消耗するだけです!すぐに引き揚げるべきです!」
一方で、
「いや、殿!やはり今は攻めるべきです!今、叩かないと、その後どうなるか分かりません!」
むむむぅ、
私は、決断を迫られたのである。
辺りを見渡す。
兵は疲弊しきっている。
新たな戦力などない。
一点集中しかない!
賭けに出た。
こうして、攻めに出たのである。
その後、迎える悲劇に向かって…