道路工事の一週間~後編~
盗賊襲来が夕方だった為、本人達に案内させ別の盗賊グループの棲みかを確認する。
どうかなヘルさん?
〈確認しました。余り強い者は居ないようですね。恐らく下級冒険者だった者や食うに困った村民達でしょう〉
なるほど。ありがと。
「確認したから帰って良いよ」
「お、お前、本当に俺達を見逃すのか?」
「良いから早く行けよ。気が変わるぞ?」
私の言葉にビビった盗賊達は振り向きもせずに逃げ去って行く。私はそんな彼らの後ろ姿を見えなくなるまで眺めていた。
〈良いのですかマスター?〉
何が?
〈逃がせば他の誰かが狙われますよ?〉
今日に限っては平気だよ。ステータスも高くない奴等が、武器も無い状態で狩りはしないよ。それよりそろそろ追い掛けよう。
〈マスターは彼等を見逃すのでは?〉
見逃したよ?その後もう一回見付けるけど。私は他の奴等の情報を教えれば見逃すとは言ったけど、その後追い掛けないとは一言も言ってないしね?
〈・・・詐欺師の才能は確かに在るようですね〉
ヘルさんにまでそんな事言われた!?
私はショックを受けつつも盗賊達のストーキングを開始する。その途中ヘルさんは少し会話が途切れると言って黙ってしまった。
どうしたんだろう?まあ、ヘルさんだったら大丈夫か。
一時間程の山岳コースを歩くと、盗賊達がキョロキョロと周りを確認し始める。
そろそろ近そうだね。
〈マスター、今どの辺りですか?〉
えっ?山の中?
〈あっ、見付けました〉
見付けた?
「お待たせしました」
「あれ?本体で来たの?」
「マスターは一人にするのが危険なので」
信用がねぇな~。
合流した私はヘルさんと共にストーキングを続行する。すると、ヘルさんは辿り着く前に盗賊のアジトを発見した。
ヘルさんマジ有能。
そんな訳で今私の足元には今度は糸で巻かれた盗賊達が転がっていた。
「や、やくそくが違うじゃねぇか!他のアジト教えれば見逃すって言っただろ!」
「うん。だからお前等はここに居て良いよ?帰る場所は無くなるけどね?さて、行きますか」
「あっ、本当に見逃すんですね?」
「ふふ、稚魚は逃がすものだからね。キャッチ&リリースの精神だよ!いつか大物になって私の前に現れてくれる事を願うよ」
「・・・それは何の罰ゲームですか?」
失敬な!
ここからは先はダイジェストで、二人で侵入→片っ端から魔眼で動けなくしつつヘルさんが無力化、私も状態異常にしつつ無力化して、盗賊のお宝と盗賊をゲットした。
結構人数が居たので、アリスベルまで盗賊達に歩かせようとしたら反抗したので、いかにもリーダーです!と、私を睨み付けていた奴にサンド?ヨンド?まあ、騎士様と同じ事をして説得したら本人は気絶したが、他の連中は涙ながらに「言う通りにします」と、懇願して来たのでアリスベルまでキリキリと歩かせた。
ふふふ、私の交渉スキルもかなり上がって来たようだね!
〈あれは交渉の結果では無く、恐慌の結果です〉
そんな馬鹿な。
アリスベルに着いた時にはもう既に夜になっていたが、冒険者ギルドは24時間営業の為、筒がなく受け渡しが出来た。
そしたら何と、コイツら最近割りと活発に動いていた組織らしく、全員合わせて銀貨500枚になった。
相場としては結構高いらしい。
私の為にお宝を集め、自分達もお金になるとか盗賊って私のATMなのでは?だとしたら少しときめいちゃうぞ?
そんな事を思いつつ手続きしていると、ギルド長のローレスと秘書のマチルダがやって来たので世間話をした。
内容としては今回の工事に関してと、作戦中に打診があった簡易ホームの作り方に関してだ。
工事に関してはフープまで繋げると言う事を、簡易ホームは私の方で目処が立ったらと言う事になった。その時ついでに明日の夜に作っている道の先、途切れた所でもう一回盗賊を引き渡すから少し多目に連れて来て欲しい。と、頼んで置いた。
これには盗賊に手を焼いていたらしく二つ返事で了承してくれた。
そしてそのまま私とヘルさんは工事に戻り暫く進めて就寝した。
~5日目~
その日は朝からスゲー頑張った。
何故ならゆったりやり過ぎてあんまり進んでいなかったからだ。このままでは時間内に終わらない。ただでさえ今日の午後は盗賊狩りが在るのだから急がねばならなかった。
そんな訳で私はひたすら道を作った。
因みに朝飯、昼飯はヘルさんが作ってくれた。
かなり旨かったです。私、超~満足!
そして午後、日が沈み始める前に盗賊のアジトに向かい、昨日と同じ様にする。
結果として良く分かったのは、人間は結構弱体化してくれるのね?ちょっとビックリだったよ。
そしてこれ又同じ様に説得したら皆は喜んで付いて来てくれたのだった。
盗賊を連れていくと、丁度ギルドから派遣されたとおぼしき冒険者とギルド職員が私が作った道の途切れた所で待っていので引き渡す。
その時何故か盗賊達が希望に満ちた顔をしながら、走ってギルド職員達の所に言ったのは何故だろうか?
〈当然かと〉
何故だろう?
まあ、盗賊を引き渡す次いでにここまで竜車で走って来た感想を全員に聞く。概ね良好、特に揺れが少ないのがやはり一番嬉しいそうだ。楽しみにしてるとか頑張ってくれと言われたのは少し嬉しい。
その日の夜はかなり頑張って進めたがやはり予定よりも大分遅れが招じている為明日から頑張らねば。
私、明日になったら頑張るよ!
「・・・・それはやらない人のセリフでは?」
~6日目~
翌日の目覚めは再びモンスターの襲来だった。
現れたのは尻尾が燃えているファイアボアと言う猪の様なモンスターだった。
それが何と五匹も来たものだから私とヘルさんで手分けして戦った。
スピードが早く突進力がある為、私程度の防御力で当たるとかなりのダメージを受けそうだったが、三体の内の二体に怠惰の魔眼で麻痺と鈍重をそれぞれに掛けた後、スキルポイントでめぼしいスキルを探した時にゲットしたスキルを使う。
その名も【猛毒調合】のスキルだ。
実はこれ取った時は100ポイントしか使わない【微弱毒調合】と言う名前だったのだが、いざスキルを入手してみると怠惰の魔眼と疫系スキルのお陰で一気に【猛毒調合】にまでなってしまったのだ。
しかも【特殊毒調合】何て派生スキルまで獲得したうえに【解毒薬調合】もゲット出来てしまった。
いや~。最底辺のスキルを一個ゲットしたら三個も増えて私もビックリしたよ。
そんな訳で私は、早速スキルを使い調合した猛毒をウォーターボールの様にして、ファイアボアの口に投げ入れる。
するとファイアボアはいきなり倒れながら地面に転がり、ひとしきり暴れた後パタッと動かなくなった。
これぐらい・・・これぐらい何時も状態異常が役に立ってくれたら・・・私がどれだけ楽出来たか!
そんな悔しさを胸にその後も毒の濃度を変えて実験しながら難なくファイアボアを倒した。
そして朝食としてファイアボアをステーキにして食べたのだが、ここで私は大きな発見をした。
どうやら状態異常に掛かったまま倒すと、肉の味に変化がある事が分かった。
麻痺状態にあった物はピリッとした辛さが際立ち、毒の濃度は濃い程に甘く、薄くなると苦くなる様だ。
そんな事を発見した私の本日の朝御飯は『ファイアボアのステーキ麻痺、猛毒仕立て』に成った。
「・・・私は新たな食の扉を開いたかも知れない」
「・・・マスターの様に耐性がなければ食べられるませんし、好き好んで毒を食べる物も居ないと思います」
美味しいのに。ちょっとガッカリ。
思わぬ事を発見してテンションの上がった私は精力的に働いた。だが、それでも時間までに終わらせるにはギリギリだったので私は徹夜で突貫工事する事にした。
~7日目~
寝ずの作業で魔法を行使しまっくている私は、寝不足特有の変なテンションになりながら、スパートを掛けていた。
まだ朝だけどここからスパートを掛けないと間に合わないんだよ!不眠不休でネトゲのイベントに参加した実力を今こそ見せる時!
余りの連続行使にMPの回復が使用分を下回ってきたので、私は更にMP回復薬と気力回復薬、HP回復薬までガブガブ飲みながら更に工事を進めていく。
まだだ!まだ行ける!称賛と羨望の眼差しは私の物だぁぁぁぁ!
~8日目深夜~
遂に見えたフープの王城を見たら何か泣けて来た。
それでも拭う事すらなくひたすらに魔法を行使し続ける。
作っては進み、作っては進み、作っては進み、作っては進み、作っては進み、作っては進み、作っては進み、作っては進み、作っては進み、作っては進み、作っては進み、作っては進み。
遂に辿り着いた時には明るくなっていた。
「ふ、ふふふ、こ、これで皆のあの称賛は私の物・・・ふ、ふふふふふふふふふ」
そして私は道の横にパタリと倒れたのだった。
その後、丸1日熱を出して寝込み皆に怒られました。ぐすん。
あっ後、私の土魔法が工事終了時には土石魔法を越えて岩石魔法になりました。
うん。無茶しすぎたね。