幕間劇ハロウィンしたい
それは、フロスト達が帰って来る少し前の事、私は皆が食事の為に集まる食堂で高らかに宣言した。
「ハロウィンがしたい!」
『シルフィン:また、唐突ですね』
いやいや、あんたが元の世界で明日はハロウィンだって言ってたんじゃん!
『シルフィン:そりゃ話の流れで言いましたけど・・・・』
でしょ!
「ハロウィンですか?あの、ご主人様?そのハロウィンって何ですか?」
「あぁ、そこからだよね。えっと・・・・」
〈ハロウィンとはマスターの世界の古代ケルト人と言う人種が行ったのが起源と考えられている祭の事で。元々は収穫を祝い、悪霊などを追い出す、宗教的な意味合いのある行事でしたが、近年では民間行事として定着し、祝祭本来の宗教的な意味合いは殆んど無く、子共達が魔女やお化けに仮装して近くの家々を訪れてお菓子をもらったりする風習などになっています。また最近では大勢で仮装して練り歩くだけになっていますね〉
と、やけに詳しく説明してくれるヘルさんだが皆の理解が追い付かない。
「えっと・・・・つまりは?」
「つまりは、皆で普段しない様な衣装に着替えて美味しいもの食べたりトリック オア トリートって言う。お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ。って意味の合言葉でお菓子を渡し合うお祭りです」
と、今度は瑠璃が説明する。
微妙に違う気がするけど最近の認識はこんな感じだよね?私もよく知らんし。
〈・・・マスター、私の説明は分かりにくかったでしょうか?〉
あれ?ヘルさんが微妙に落ち込んでいる?!いやいやヘルさん、私は元ネタやバックボーン知ってるから分かりやすかったよ!!
〈ありがとうございます。マスター〉
お、おう。
「でもさハクア、一応分かったけどそんなの楽しいの?」
「楽しいよ!」
「お、おう、そうなんだ」
なに言ってるのエレオノ!楽しいに決まってるでしょ。こんな美少女達がコスプレするんだよ!楽しいに決まってるじゃん!主に私が!!
(ねぇ、これってそうなるよね)
(多分そうかな)
(いや、絶対なるじゃろ?)
(ゴブ)
(先輩ってそっち何ですか?)
((((分からない))))
(そ、そうですか)
そんな私の強い希望により、場の流れはハロウィン開催に流れて言った。
「料理は私が作るよ」
「わあっ、ハーちゃんのお料理久しぶりですね!」
「おねちゃん料理出来たんだゴブ?」
「まあ、面倒だからあんまりしないけどね」
「じゃあ、私は皆の分のお菓子を・・・・」
「る、瑠璃はハロウィンの衣装作ってくれるとうれしいな!ほら、皆どんな物か分かんないしね?」
「あっ!そうですね。分かりました」
「私もお手伝いしますよ。るり」
「アリシアさんありがとうございます」
ふう、助かった。瑠璃に料理をさせる訳にはいかんからね!
〈何故です?〉
瑠璃の作る料理は劇物だから。この女頭良いのに料理になるとバカになる。
〈・・・・・はあ〉
まあ、料理以外は優秀だから大丈夫。
「他の皆はお菓子作りね。わからなかったら聞いて教えるから」
「「「は~い」」」
こうして、全員でハロウィンの準備が始まった。
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そして翌日、色んな段取りを組み始まったハロウィンパーティーに私は感動していた。
良かった。やって良かった。本当に良かった。いや~、瑠璃の衣装センスはこう言うパーティーにはピッタリだね!!
元々、何故か露出の高い服を好む瑠璃の作った衣装はどれもこれもハクア好みの物だった。
胸が!太ももが!絶対領域が!ニーソにミニスカ、ガーターベルトあぁ、私は今この世の天国に居る。勝ち組だぜヒャッハー!
と、そんな事を思っているハクアも黒の衣装のミニスカゴシック衣装だった。瑠璃曰く吸血鬼風らしい。
『ティリス:ハ、ハクアさん可愛いです似合ってます!』
『イシス:あら?本当、意外に似合ってるわね?』
『クラリス:本当可愛らしいわ』
『シルフィン:・・・・本当何でも着こなしますね』
『ブリギット:と言うかハクア。それ、素材が良い物だから意外に防御力あるぞ』
マジか!うわっ、本当だ。よし!予備の装備として持っておこう。上手くすれば戦闘中にチラチラと・・・・。
「ご主人様トリック オア トリートです」
「ハーちゃんトリック オア トリート」
「うわっと。お、おお。はい二人ともお菓子ね?」
「ありがとうございます?」「ありがとうハーちゃん」
私は最後のお菓子二つをそれぞれに渡す。皆もあらかたお菓子を渡し終わっている。と、言うかアリシアと瑠璃以外にはトリック オア トリートと言う前に押し付ける様に渡された。解せぬ?
そんな訳で後は私が二人から貰えば全員が渡し終えた事になる。
「それじゃ私もご主人様に・・・」「私も~」
「それより二人ともこれ食べて見てよ。結構いい感じに出来たんだ。はい、二人ともあ~ん」
私は二人の言葉を遮り、自分の作った料理をフォークで刺して二人の口元まで運ぶ。
「ハ、ハーちゃん?」「ご、ご主人様?」
「ほら、二人とも・・・美味しい?」
「うん、とっても」「美味しいです」
「良かった。ほら、どんどん食べてね」
「はい。食べましょうかアリシアちゃん」
「そうですね。るり」
この二人、今日の朝まで二人で衣装作ってたから大分仲良くなったみたいだな。
瑠璃は元から自分の服をよく作ってたしアリシアも普段着の服は自分で作ってるからいろいろと趣味も合いそうだし、二人にやらせて正解だったかな。
因みにこの二人昨日一日で【防具作製(布)LV.1】を獲得していた。
どんだけやねん。
そんなこんなでいい時間になって来たのでそろそろお開きにしようかと言う話になる。
「こんなの本当に面白いの?って、思ったけど意外に楽しかったね」
「うん。ボクもおもしろかったかな」
「皆に喜んで貰えて良かったよ。っと、そう言えばアリシアと瑠璃からはまだ貰って無かったよね?」
「そう言えばそうですね」
「だって渡そうとしたらハーちゃんにお料理食べさせて貰っちゃったし」
「じゃあ改めて、トリック オア トリート」
「はい。えっと・・・・あれ?」
「どうしたのアリシアちゃん」
「いえ。ご主人様の分のお菓子が?」
「あれ?そう言えば私も無い」
「トリック オア トリート」
「・・・・ご主人様?その後ろに隠しているのって・・・」
「あっ!ハーちゃん用の特別ラッピング」
「いやいやこれは、私が持ってる私のお菓子だよ?だって二人からは渡しはしたけど何も受け取ってないしね?と、言う訳でトリック オア トリート」
「ハ、ハーちゃん?まさか最初から?」
「ご、ご主人様?み、皆もなにか言って・・・・って、あぁ、何時の間にそんな所に避難してるんですか!」
「いや・・・・だって、ねぇ?」
「オチは任せたゴブ」
「うむ。二人の犠牲は忘れんのじゃ」
「あ・・・はは。頑張って下さい」
「こ、コロ?」
「片付けはボク達でやっておくかな」
事実上の見捨てる宣言に絶望する二人。
「トリック オア トリート」
私はそう言いながらジリジリと詰め寄る。すると二人は一瞬目を会わせそのまま逃走を計る。
「逃がすか!」
「へっ?な、何ですかこれ?」
「と、透明な何かが体に絡み付いて・・・」
「ふっふっふ。これぞオリジナル触手魔法だ!」
狼狽する二人に高らかに宣言した私。
「何あれ?クー分かる?」
「・・・やってる事は凄く下らないが物凄い技術じゃぞ。恐らくは水魔法で形を作り【結界】を最大限に薄く触手の様な形にして自在に操っているのじゃ」
「・・・・それ、凄い事なんじゃないかな?」
「・・・・・・あぁ、使い方が勿体ない位には凄い技術じゃ」
「まあ、ハクアらしいね」
「今日は楽しかったゴブ」
「あっ、締めに入るんだ?」
「ゴブ」
「「きゃああああ!」」
こうしてハロウィンパーティーは終わり、ハクアの楽しそうな笑い声とアリシア&瑠璃の悲鳴がだけが木霊していた。
そして次の日、復活した二人によりハクアは一日中正座で説教されたのだった。
因みに、二人の名誉の為に何をしたかは言わないけど大変柔らかかったです。次はクリスマスだね!!
〈少しは懲りてください〉