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こみゅしょう!  作者: TK
第一章
15/41

15

 学級会が終わって、クラスのみんなは新しい席に変わったこともあり、教室内はいつもより少し騒がしい放課後となっていた。上野さんは放課後になったとたんに席を立って帰っていった。初めて買える初めの彼女の姿を視認することができた気がする。それにしてもあの速さ、あれが洗練されたぼっち及び帰宅部の本気といったところか。

 そんなどうでもいいことを考えていると、前の席の、名前は何といったか、ショートヘアーの女子がが話しかけてきた。

「溝部君だったっけ? 同じ班にもなるし、よろしくね!」

「あ、ええっと……」

「あっ! 私の名前忘れてるでしょ! さっきみんなの前で自己紹介したばかりなのにひどいなあ。私は藤井伊万里よ。あなたもさっき自己紹介してたから普通は名前くらいちゃんと覚えてるわよ」

「ああごめん、藤井さんね。俺は人と話すのが苦手だけど、その、とりあえずよろしく」

 どうやらこの人はコミュ力が高いタイプの人のようだな。羨ましい......

「女子と話すのが苦手、の間違いじゃない?この間やる気を出したとか何とか言ってたの溝部君でしょ。そういう方向にやる気を出したっていうなら自分から話しかけるくらいしないと」

「うっ、聞いてたのか。あれは別にそういうことじゃなくて......」

 いやああああ誰か助けて! いきなりこういうタイプと話せって言われても無理なんだけど!

「さっきは上野さんに挨拶してたじゃない。そう気張らずともあんな感じでいいんじゃないの?それとも、もしかして上野さん一点狙いのやる気だったりして!」

 話の方向がどんどんおかしくなっていってる気がする。俺が上野さん狙いなんてあるわけがない。俺は彼女とただコミュ障の改善をしたいだけなのだ。

「ち、違うよ! あれはそういうんじゃなくて! ただ、女子と話すのが苦手じゃなくなればいいな~くらいのやる気で、俊之がおもしろおかしく言ったからそういう方向にとられたかもしれないけど」

「ふふふ、必死になると余計に怪しいわよ、溝部君?」

「......」

 俺、この人苦手です。

 そう思っていると俊之が話しかけてきた。

「お~樹と藤井さん、なんだか楽しそうだな! 俺も混ぜてくれよ」

「ぜんっぜん楽しくないよ!」

「あちゃ~私フラれちゃった?」

 そう言いながらおどけたような態度をとる藤井さん。コミュ力が高い奴はこんな冗談も言えるのかと感心する。

 俊之の助け舟に内心では安堵しながらも、どこか楽し気な奴の様子に俺の中では危険信号が出ていた。

「藤井さん、心配するな。樹はこれまで女子を避けてたけど女の子大好きだぜ」

 言って謎のサムズアップをする俊之。なんてことを言ってくれるのか。

「そのムッツリスケベみたいな言い方やめろよ! 退かれるだろ!」

 少し不安になり藤井さんのほうを見る。

「男の子が女の子に興味を持つのは自然なことだよ、溝部君」

 彼女も謎のサムズアップをしながら訳知り顔でうなずいていた。

「藤井さんもかいっ!」

 もうヤダ、この人たち。

「あははははごめんごめん! 溝部君の反応が面白いからついついいじめすぎてちゃったみたいだね。これは癖になってこれからもいじるかもしれないわね」

「勘弁してください......」

「それじゃあそろそろ私、帰るわね。じゃあね~溝部君と渡会君」

「あ、うん」

「じゃあな~」


 藤井さんと別れてからはいつも通り、俺は俊之と二人で家までの帰り道を歩いていた。

「早速変化があったみたいじゃないか樹。俺もうれしいぜ」

「なんだよそれ、面白がってるくせにさ。しかも完全に俺が遊ばれてただけじゃないか」

 少し腹が立ったのでじとっとにらみつける。

「以前のお前なら遊ばれることもなかったんじゃないのか?この前俺が面白おかしく話を盛り上げておいたおかげだぞ。感謝こそすれ、そんな目で見られてもな」

 あの行動にはそんな意図があったのか。確かに教室の空気も元に戻ったし、結果的に女子とも話すことになったけどさ。

「まあたまたまなんだけど」

「意図してやったんじゃないんかい!」

「まあそう怒るなよ。悪いことは何もないだろ?」

 言われてみれば確かにそうなんだがなんかこう釈然としない。

「そういえば上野さんとのコミュ障脱却計画はどうなってるんだ? 何か進展はあったか?」

「ああそれなら特に何もないかな」

 ひとまずいろいろなことについて二人で話し合ってはいるけど実際的なことはまだ何もしていないことを俊之に簡単に説明する。

「ふうんなるほどね~。それじゃあさ、こんなのはどうだ?」

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