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こみゅしょう!  作者: TK
第一章
13/41

13

 あれから数日が立つがこれといって俺たちが何か行動を起こしたということもなく、今日も今日とて二人で食事会をしていた。

 前にも言ったように二人の共通の話題なんて今のところコミュ障関連のことばっかりなんだけどね。コミュ障脱却会なのに普通のコミュニケーションをとっていないのはどうなのか……

「目上の人が相手のほうが緊張しないのってなんでかしらね」

 上野さんが話しかけてくる。俺は今までの自分の経験を思い出しながらあまりピンとこないので思わず首を傾げた。

「ほら、あなたは普通に男子と話せるからあんまり気づいてないのかもしれないけれど、年上の女性と話すときとかってあんまり緊張してないんじゃない?」

「う~ん、言われてみれば確かにそんな気がするな」

「でしょう? 私も先生と話すときとか近所の人に挨拶するときとか普通に接することができるのよ」

 近所の人に普通にあいさつする上野さん……想像ができないな。

「また何か失礼なこと考えてるんじゃないでしょうね。私にだって挨拶くらいはできるのよ」

 言ってドヤっといった顔をする彼女。

「でもその割には今まで人に挨拶してなかったし、この前俺が挨拶した時には言葉に詰まってなかった?」

「くっ......と、とにかく! このことについて考えていきましょ!」

 露骨に話を戻したがもうそこには触れないほうがよさそうだ。

 とりあえず言われたとおりに考えてみることにする。目上の人に対してあまり緊張しない理由は……

「敬語を使うから、とかじゃないかな? 敬語を使うことによって互いに距離をつかみやすくなって結果的に緊張しなくて済む。みたいな」

「なるほど。一理あるわね。ほとんどの先生はそれなりに上の立場の人って感じの言葉を使ってくるし、私たちみたいなのでもなんとか話せるってわけね。馴れ馴れしい言葉遣いでやたらと距離を詰めてくる先生は苦手だし」

「ああそれ、わかる。ああいう感じの先生のほうが親しみが持てていいっていう人もいるけどなんとなく嫌なんだよ」

「一応先生だから邪険に扱うわけにもいかなくて対応に困るのよね......こっちは話すことなんてないっていうのに」

「わざわざ話すこともないのにやたら話しかけてきてコミュニケーション取ろうとしてくるんだよね、こっちはそんなこと望んでないんだよね」

「でも逆に考えれば彼らはコミュニケーションの鬼、すなわち見習うべき相手ってことよね。どうかしら、彼らを見習ってなりふり構わず話しかけてみるっていうのは」

「いや、それができたらこんなことにはなってないでしょ」

「もっともね……」

 二人してため息をつく。最近はずっとこんなのばかりだ。どちらかが問題を提起し、二人で考えて、勝手に落胆する。何がいけないのかよくわからないがどうも前に進んでいかない感じがするんだよな。

「じゃあどうしたら授業中のペアワークができるようになるか。はどう?」

「ちょっと待って。俺はペアワーク普通にやってるから」

「普通っていうとどういう風にすればいいのよ」

 心底不思議そうな感じで聞いてくるがそれはおかしい。

「普通は普通だよ。先生に言われたことを隣の人と一緒にこなすだけだろ」

 確かにペアワークは煩わしいがそれほど高度なものを求められるものではない。

「互いに英語を覚えて言い合うだとか、簡単な会話だとか、あとは答えの確認か?一言二言で済むことが多いだろ」

「そもそも隣の人と話すことが難しいのよ。日本語でも喋れないのに英語とか意味わかんないから」

「お前の思考が意味わかんなくなってきたよ......考えてみろよ。自分から会話の内容考えなくても喋れるんだからむしろ楽に話せるだろ?」

「そういわれればそうかしら。......次の授業ではできるように頑張ってみるわね。でも、この前まで私ペアワークの時にだんまり決めてたのよね。大丈夫かしら?」

 そういえば前そんなこと言ってたな。

「今まで無視してたのに急に話しかけてもびっくりするだろうし、そもそも話しかける勇気もない。......どうすればいいと思う?」

「俺に聞かないでくれよ。う~ん、そろそろ席替えだからそのあとでいいんじゃないかな。それはそれで問題ありな気がするけど」

 主に今まで無視されてたやつがめちゃめちゃかわいそうという問題が。

「それで行きましょう」

 それでいいのか……

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