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東の魔王様の日常

作者: 東雲

緩~い話です、さらっとお読み下さいね。



 広大な大陸の一つ、そこは闇の住人達の集まる場所。


 大きく4つの領地があり、それぞれを率いてるのは魔王と呼ばれている。

 

 これはその領地の中でも『冷酷無慈悲』と名高い東の魔王領の面々の話でもある。





 




 領内の報告書に目を通しながら、己の背後にある窓からここ中枢部と各部署へ繋がる渡り廊下を見る。

 この時間帯ならもう通る頃だろうと思うのだ。隣で予定ぎっしりなんで余所見は止めろと口煩い側近は毎日毎日同じ事言うがいい加減諦めろと言いたい。誰が何と言おうとも俺は見る!


 決意も新たにより窓に近付けば、正に自分の部署へ戻るらしい人影が表れる。




 漆黒の髪を靡かせながら書類を運ぶ1人の悪魔の娘。目的の人物である。




 「ああ~今日もニーファ可愛いくて堪んないなぁ。なにあのふわっふわしてそうな髪!黒って所がまた良い!なあお前もそう思うだろうスティーリス!」


 「鼻息荒いのキモいんで興奮しないで下さい。本当に気持ち悪いですねルトー様は」



 側近であり友でもある吸血鬼のスティーリスの暴言には憤慨だが、言い返している暇があるなら渡り廊下を行くニーファをこの目に焼き付けるのだ。両手で抱える書類のせいか少しぎこちない所も可愛い、でも誰だ!か弱いニーファにあれだけの書類持たせたのは!



 「領内一の怪力娘があれ位どうって事ないですからねか弱いとかないですよ。ほら、もう見えなくなったんですからさっさと残りを片付けて下さい」


 「なっ俺の心の声まで…………スティーリスお前そんな能力が………」


 「いや普通にハアハアしながら口に出してましたから、本当にもうキモいんで仕事して下さい俺の帰宅時間が遅くなるの嫌だし」




 どうやら口に出していたらしいが、本当にスティーリスの口悪さと言ったら酷くないだろうか?おかしいな昔はもっと優しく……………いや、昔も今も大して変わらないな。なんて奴だ。でもあいつが居ないと色々面倒くさいから甘んじて悪口も受けちゃいるがな。俺、上司の鏡。

 

 ていうか、俺のニーファに怪力娘とはなんて事言うんだ!もうちょっと言い方ってもんがあるだろう!いやまあ、本当の事なんだけど、言い方!あんなに華奢でファンシーなもの好きで可愛いんだぞ!なのにゴツい大槌振り回すっていうギャップが半端ないんだよ!ギャップ!何故この魅力が分からんのだっっ!



 行ってしまった愛しのニーファに後ろ髪引かれつつも、容赦なく机に上乗せされた書類の山から一枚手に取り仕方なく仕事を再開した。が、目に飛び込んできた案件に溜め息しか出ない。



 「………おい、スティーリス。また西の奴らの侵攻だと?つい先週来たばかりだろう、ペースが早いぞ」


 「西は上から下まで脳筋の考えなししか居ないのですから仕方ないでしょう。昨年は南領でしたし、今年は我が領の番ですよ3年に1度の恒例行事じゃないですか。でも、南領の方々も今年の奴らは特にしつこくて執務が進められないと酷い隈こさえて嘆いていましたから、私達もそうなるんじゃないですか?」


 「嫌だっ只でさえニーファの観察に忙しいんだ俺は!」


 「そのニーファが侵攻防衛戦の最前線組であり我が領の主力ですから、ルトー様は死ぬ気で増える書類と雑務を片付ければ問題ないです。ニーファの手に負えない輩はそういませんから、安心してこの執務室で缶詰しましょうね」



 なんて嫌な未来だと満面の笑みのスティーリスに力の限りやりたくないと床に転がり駄々をこねたが、残りにさっさと目を通せと蹴られたので不貞腐れながら目を通した。俺、上司の鏡。…………泣いてなんかいないぞ!泣いてなんかっ!

 

 そんな俺の事なんぞ知らぬとばかりに自分の机に座り、仕事を再開してる我が側近に魔王ってなんだろうとここ最近とみに思う。



 「で、先週の侵攻で破壊された建物に関しては既に西の宰相宛に請求書をガイナバル様に持って行って頂いてますので直ぐに解決するでしょうから、建て直しの人手はどの部隊を出しましょうか?」


 「直ぐに出せるのはどの部隊だ」


 「そうですねぇ、ニーファの部隊ですかね。あそこの面々は中々多様性に富んでますし、近場にまた仕掛けてくるならニーファが居た方が鎮静化も早く終わりますから。よし、ニーファの部隊に決まりですね」


 「おい、それお前の中で既に決めてたろ?!なんで俺に聞いたんだよ!」


 「ま、一応言っとかないとニーファの観察の予定が狂ったとか騒ぐ人が居るんで。本当、迷惑ですよね」


 「それは俺の事か!俺の事だろう!」


 「別に誰とは言ってませんけど?」



 小馬鹿にした笑みを向けてくるので、ぶん殴ろうとするのにのらりくらりと避けられるとは…………あまりの悔しさにハンカチをキィッ!と噛んだ。部下に弄ばれるとかなんなんだ!!


 急速に溜まるストレスに癒しが足りないと即座、思い立つ。

 ボロボロになった無惨なハンカチをポケットにしまい、そう!脱走だ。



 「ニーファ成分を補充してくるからああぁぁぁ!!」



 勢いよく窓ガラスを割りながら脱出し背後であ、待てこの野郎!とスティーリスの暴言が聞こえるが知らん。


 目指せ、戦闘部隊のニーファの部屋へ!









 東の魔王様は、1人の娘を影に日向に……いや主に影で見守る日々である。



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