第7話 二回目の転生 剣士アーデウスの次は聖なるイデウスかよ
俺はハッと目を覚ました。
体全体が隠れるような青色の服を着た十数人の者が目を瞑り手を合わせ祈っていた。
彼らが着ているのは制服だろう。
男女ともに同じような服を着ている。
俺はどうやら教会みたいなところの大きな台座に横たわっているらしい。
どうしようかと思ったがアーデウスの時のような失敗を避けるためにも慎重になった。
自分の記憶を探る。
名前はイデウス=トスカだった。
アーデウスの次はイデウスかよ。
人々がイデウスに頭を下げる…… そういう映像が多かった。
なんか崇められてるっぽい。
もしかして俺は神様になった? 冗談だけど。
でもそれに近い雰囲気を、記憶にある映像から感じた。
しばらくして俺は納得した。
彼というか俺イデウスは司祭だったのだ。
ひたすら民のことを鑑みて、昇進や名誉・自分の富にはなんの興味もない男、それがイデウスだった。
わあー本当にこんな聖人みたいな人がいるんだ。
彼は『聖なるイデウス』と大衆から呼ばれている。
「イデウス様、お気づきになられましたか」
うっ起きてるの、気づかれた。どうする?
そしてまた何を喋ってるのかはわかる。
がアーデウスの使っていた言葉とは違うようだ。
どうしよう。イデウスのことを知るための時間が欲しい。
イデウスは常に慈愛に満ち、人に強要などしないみたいだ。
しかしそれでもこの教会のような空間では絶対的権力者なんだ。
だからこのぐらいは全然問題ないだろうと思い仮病を使うことにした。
「どうやら日頃の疲れがたまったようで頭が働かない。しばらくのんびりしたいから独りにさせてくれないか」
俺は今までのイデウスへのリサーチを基にし、ゆっくり起き上がると慎重に喋った。
「お珍しい、どうされたんですか」
まだ若い司祭見習いだろうか、彼が尋ねた。
なんだイデウスは普段まったく病にかからないのか。
「あら、イデウス様、それこそいつものように治癒の力を使えばよろしいのではないでしょうか」
孫がいてもおかしくないぐらいの女性のアドバイスで腑に落ちた。
どうやらイデウスは治癒の魔法が使えるらしい。
「いや、色々考えていることがあるんで、それを整理したいんだ。私はそういう時間も取れないのかな」
まわりの者が皆青くなった。
しまった、言い過ぎたかな。
位の高そうな者が一歩前へ出た。
「聖なるイデウス様のなさることに誰が異を唱えましょうか」
やったあ、好きにしていいんだ。