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第46話  パクり騒動

次の展開に入りました。

しばらくは謎解き? 分析が続きます。

俺はダニエルに直接訴えたが取りあってもらえなかった。

パクった証拠を出せと言われたがその証拠の録音物はダニエルが持っているのだ。


そうするうちにダニエルは複数の歌手を用い俺がストックしていた仮歌をすべて商品化した。


俺が打てる手は残ってなかった。


仕方なく平成に入ってからのポップスやアニソンを思い切って商品化してみた。

やはり一挙に新しい音楽に進むと違和感があるみたいで民衆から支持されなかった。

演歌や歌謡曲まではなんとか受け入れられても、急激に激しいものにまではついていけないのだ。

きっとこのまま音楽文化が続いていけば百年後ぐらいには受け入れられるかもしれない。

要はオーデウスの新作はまったく売れず、ツアーもガラガラでチケットは売れ残ったということだった。


俺はそれでも不屈の精神で、メッセージを込めて歌い続けた。

メッセージ色の強い詞と過激な曲調、過激とはいっても二十一世紀では一般的な感覚だったのだが。

そんな俺に対し一部に熱狂的なファンも出来た。


物好きな金持ちは俺の作品を前衛的に捉えたのか、複数の金持ちが支援を申し出てきた。

しかしここでブルジョワに屈してたまるか。

すべて断った。


なんか自分が弾圧下にあった共産党員のような気がした。


しかしその中でもしつこく接触してきたものがいた。

南マニナから北東に位置するヨンリ帝国のミック=ルセイユ伯爵だった。

彼は若干二十二才にしてお店を手広く経営して莫大な財を築き、その一部を皇帝へ差し出し、その金額から伯爵位を授けられたのであった。


ミックのお店が具体的にどんなお店なのか俺には興味がなく、よって詳しくは知らなかった。


俺はタリュー一本を持ってサンテ大陸中をまわり、ライブを重ねていた。


その日はヨンリ帝国の地方でライブを行っていた。

あと三十キロほど下れば、南マニナとの国境があるようなところだった。

ライブを終え、居酒屋に入り、ビールを喉に流し込んでいた。

何杯も飲んだからかトイレに行きたくなった。

トイレは外にあるので面倒だから我慢していたのっだが、そろそろ限界だ。

用を済ませ、居酒屋に戻ろうとすると鳩尾に衝撃を受け目の前が暗くなった。






気がつくとたいそう立派な部屋にいた。


そっか、俺は気絶させられて攫われたんだな。


そこには若くスラッと背の高い、しかし体を鍛えた感じのイケメンが一人いるだけだった。


「気がつきましたか。オーデウスさん、このような強引な手段を使ってしまったことをお詫びする」

ちっとも詫びてる感なかった。


「こんな無礼なことをしたあなたは誰ですか?」


「これは失礼。私はミック=ルセイユと申す」 


「ああ確か成金の伯爵にそういうのがいたな」

下手に出てはつけあがるだけだから強く言ってやった。


「あんたが怒る気持ちはわかる。いかにでも詫びよう」


「俺が怒るってわかるぐらいなら初めからこんなことしなきゃいいんだよ」


「会って話をしたかったのだが断られ続けてしまったので、これしか方法はなかったんだよ」

いかにも俺が悪いといった感じの物の言い方だった。


俺もムカついた。

「ああ嫌だねえ金持ちはさ。金さえあれば何でもできると思ってやがるし。それでも駄目なら人の道に外れたことまでしちゃうんだから」


「言わせておけば」


パンチが顔面に飛んできた。


「今度は暴力かよ」

平然を装い軽蔑したような顔をしてやった。


「すまん。ついカッとなって殴って悪かった。しかしあんたも少しぐらいはこっちの話を聞いてくれよ」


「攫われたうえになんで話まで聞かなきゃならないんだ。何やったってお前らの言うことは一切聞かないからな。もう援助だの後見だのそういうのは要らないんだよ」


「なんか誤解しているようだが」


「何をだよ。金持ちが前衛的な音楽を理解しているっぽいポーズを取りたいだけだろ。くだらない自己満足な芸術論とかを一晩中語りたいとかさ」


「純粋にあんたの作った音楽に興味を持ったんだ。いやあの音楽を作ったと言っているあんたにな」


「何だ、難しく言ってるだけで俺様のファンなんだろ。他の奴らと一緒じゃんかよ」


ミックは結構気が短いらしい。

さっき謝ったばかりなのにまた俺を殴ってきた。

今度は何発もだ。


俺は逃げられなかった。

ミックの口から出た言葉を聞き頭の中が真っ白になり体が動かなかったのだ。


「コノヤロウ、パクリノクセシテ、エラソウニシテンジャネエゾ」 


ミックが日本語で俺を罵った。


俺は日本語で言い返した。

「なんだって」


「だからあんた、パクってるくせに自分で作曲したようなことにしてるから腹が立ってさ」


「君も日本人なんだ?」


「ああそうだよ。やっぱりあんたもか?」


「ああ、だからあっちの世界で流行ってた名曲をお借りしたってわけさ。俺は歌手に転生しちまったんだから」


「えっその言い方だと、自分の意志で歌手になったんじゃないのか」


「少なくとも俺がオーデウスに転生した時はもう『歌聖』と言われるほどの存在だったんだ。そっちはいつぐらいに転生したんだ」


「産まれた時からこのミック=ルセイユの体に入ってたんだ」


「どっちが得なんだろうな。ところで日本では何やってたの?」


「…… 人に尋ねる前にまず自分から名乗れよ」


「俺の名前は佐藤龍。年は」


うわぁミックが抱きついてきた。


「ドラゴン、ここで会えるなんて」


「ちょっと待って。ドラゴンって何それ? そしてそっちの名前は?」


「さあ誰だろうね。当ててみぃ?」


「わかるわけないだろうがよ!」


「つまんねえの、ドラゴン怒んなよ。なんかキャラ変わった? 今までキレたことないのにさ。最期大変な目に遭ったもんね。頭打たなかった?」


「それって人違いだって。サトウリュウなんて全国には何人もいそうじゃん」


「いやいや何ドラゴンとぼけてんの? 曲パクったから? 『エレヴェイション』なんてまだ発売前でファンクラブの会員ぐらいしか入手できないはずのシングルのしかもB面だったのに。それを知ってるサトウリュウなんてドラゴンぐらいでしょ」


「えっマーキームーンの『エレヴェイション』知ってるの? すげえ嬉しいよぉ。俺あの曲大好きなんだ。サビの部分のシャウトするメロディ、弾けないけどイントロとソロのギターも」


「まあそれは光栄だな。でも直接言われると照れるよ。うん、パクったことは取りあえず許してあげる。でもドラゴンさあ、あたしあの時死んだんだよね?」


「だ・か・らドラゴンってなんだよ。龍だからドラゴン? でもそんな呼ばれ方したことないし」


「えええっ」

そう言って俺の鼻を見つめた。


「うっそー人違い? こんな偶然ってある? でもあんたマーキームーンのファンだったでしょ。『エレヴェイション』なんてほとんどの人は知らなかったんだから。あっ! あんた、あたしより後に死んだのかな? 『エレヴェイション』って結構売れた?」


「正式に売り出される前に死んだから、というかこっちの世界に来たからわからない。それより君、日本では女だったでしょ。同性でマーキームーンのファンなんて珍しいね」


「そっか、あんたマーキームーンのファンだったんだ。あたしがどうしてオーデウスに乱暴な真似したか理由を教えてあげるよ。あたしの名前は泉理李。これでわかったでしょ」


「えええええっ理李様? それこそ同姓同名じゃないよね。マーキームーンのギターボーカルの泉理李だよね。 マジ! 冗談じゃないよね。おおっ神様感謝します」

俺は興奮して『よね』を連発した。

そして腑に落ちた。

泉理李様も他人の曲ならまだしも、自分が作った曲とほぼ同じものが、別人のクレジットでこの世界に流れてたら怒るし気になるよな。


「何々そんなに嬉しいの、今あたし男なんだけどさ」


「いやいや中身はあくまでも理李様でしょ。はっ証拠がない。担がれているかもしれないし」


「えっ鼻光ってないでしょ?」


「俺なんか嘘ついても鼻は光んないけど」


「じゃあ証拠を、というかあんたを納得させてあげるよ。ちょっとここで待ってて」


そういうとミックは部屋を出ていった。



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