第4話 青鬼人の王子からの目線で見てみると大いなる勘違いが
青鬼人の王子である僕はなんとかこの醜く太った小人物といった感じの人間を助けたかった。
黒髪に黒い瞳、真っ白な肌、何か鋭利な物で背中から貫かれたのだろう。
かなりの出血だ。
背中の傷の上には人の手のような形の小さな可愛らしいあざがあった。
このあざに何か意味があるのか。
六手魔の王の魔法も僕の治癒魔法もこの裸の人間には通じない。
見た目は小人物だがあきらかに並みの存在ではない。
もしかすると人間ではなく神様の種かもしれない。
我々を試しているのかも。
偶然だろうか、彼が「シニダグナイジョ」と叫んだら六手魔の王は矢に倒れた。
あれほどまでに強く我等一族の宿敵だった六手魔の王が簡単に死んだ。
「シニダグナイジョ」はなんかの呪文なんだろうか。
とにかく裸の人間が突然出現したから囚われた青鬼人は助かった。
でなければ六手魔たちに食われていたに違いない。
そんなことを思いながらも治癒の呪文をずっと口にしていた。
そして頭に手をかざし続けた。
「シニダグナイジョ」
裸の男がまた口に出した。
僕は思わずビクッとした。
と同時に彼は消えた。
跡形もなく。
なんだこの魔法は。
瞬間に移動できる魔法か。
しかし唱える内容は六手魔の王が倒れた時と同じ「シニダグナイジョ」だったはず。
「シニダグナイジョ」は万能の呪文なのかなあ。
よし、「シニダグナイジョ」「シニダグナイジョ」「シニダグナイジョ」
いつかこの呪文をモノにしてやるぞ。
『白くてぶよぶよな人』は青鬼人にとっての恩人だ。
決して忘れてはならない。