第26話 デートのはずが
ブックマークが2桁になりました。
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励みになります。
俺は真面目に考えていた。
バモンのことを知っているようで知らなかったんだ、ウーデルスは。
ウーデルスの記憶を探ってみてもバモンのプライベートに関してはなんの情報もなかった。
両親に早く死なれたバモンはきっと妹を守りながら生きていくため必死だったんだろう。
そのために虚勢を張って、不良になって。
きっとプライベートな部分は誰にも話さなかったんだろう。
でも妹を大事にするいいお兄さんだ。
バモン、俺は決してレイラを不幸にしないからな。
バモンとは不適切な関係がなくなった後、本当に家族になるんだ。
でも年下なのに義理のお兄さんか……。
早くそう呼べる日が来ますように。
そのためにも例の計画を実行に移さなきゃヒッヒッヒッヒ。
あ痛! 突然げんこつを貰った。
こんなプレゼントをくれるのは現世では一人しかいない。
「オメエよ、何笑ってんだよ、気持ちわりい。またよからぬ妄想ってやつか?」
俺はマリアを睨んだ。せっかく人がいい気分に浸っているというのに。
「だからオメエは駄目なんだ。エロいこと考えるぐらいならエロいこと出来るよう行動に移せよ」
珍しくマリアがいいこと言ったぞ。
よし今日からでも行動開始するぞ。
レイラのバイト先である花屋さんに寄った。
そしてバイトが終わるのを待って、一緒に帰った。
うまく話を持って行かなきゃなあ。
「最近バモンのお見舞いに行けてないけど調子はどうかい?」
「兄なら退院はまだですが、なんとか病院内を歩けるようにはなったみたいです」
「そっかあよかった。でも退院するまでに成功させなきゃなあ」
「えっ何がです」
「うん、バモンは俺のこと実の兄のように慕ってるのは知ってるよね」
「ええ誰よりも尊敬し、信頼しているみたいで、妹である私でも嫉妬しちゃいたくなります」
それは実はね、***な関係だからなんだよ、言えないけど。
「そっか、でも嫉妬は違うと思うんだけど。実はねバモンに妹には内緒でって言われたことがあるんだよ」
「それって私に言ってはまずいのではないですか」
「でもレイラちゃんの協力がないと、いやせめて理解してくれないと実現できないことなんだ。今からする話はバモンには言わないでいてくれるかな。悪い話じゃないと思うからさ」
「それって兄のためになることなんですよね。そして兄に報告しなければいいんですよね。もし聞かれたら正直に言いますけどそれでよければ」
「バモンが聞くようなことではないはずなんだけど、もし聞かれても本当のこと言われたら困るなあ」
「でも私嘘をついて鼻が光るの嫌なんです」
「…… わかった。いいよ」
俺はレイラに話した。
バモンが俺とレイラに付き合ってほしいと願っていると。
もちろん嘘さ。
でもレイラは簡単に信じた。
バモンが『レイラに近づいてくる男はみんな狼だと思って気を付けろ。いつかオレがウー先輩の次ぐらいに素敵な相手を見つけてやるから。ウー先輩は無理だけど』と言っていたらしい。
「バモンのやつそんな話してたんだ。じゃあ話は早いね」
「えっでも兄はウーデルスさんは無理だって」
そりゃそうだろ、自分のいい人をその気にもなってない妹にわざわざ譲らないだろ。
「あははは、えーとバモンは不釣り合いだって勝手に思っちゃったんだよ。ほら俺ってゆくゆくは土地ノ神になることが決まっているからさ。神様と自分の妹じゃ…… って思ったんじゃない?」
「ということはお付き合いしてもいいってことですか」
「そうそう、マリアもリゼも大賛成だよ」
「わかりました。ではお友達から始めましょう」
ええっマジ? それじゃ俺の初体験はだいぶ先じゃんかよ。
二人でバモンのお見舞いに行った。
バモンは久しぶりに俺が顔を見せたことを喜んでいたが、いつもと違う雰囲気を感じ取ったのか訝しげな顔をした。
バモンは勘がいいから行動には気をつけよう。
レイラとのデートももうすぐ二桁になろうとしていたある日のこと、俺はやましいことを考えてちょっと離れた森にレイラを連れていった。
なんか気になる。
命の危険を感じた。
サササッと音がした。
何者かが待ち伏せしていた。
まずい、レイラが一緒では思うように動けない。
距離が狭まってきて、敵の顔が見えた。
「女連れとはいい気なもんだ。ちょうどよかった。その女はこっちが頂くぜ。こんな別嬪さんは殺しゃしないさ。たっぷり可愛がった後、奴隷にして売っちまうのさ。いい金になるぞ。やっと運が向いてきた」
先頭の男がいつまでもぺらぺらと喋り続けた。
相手は十一名だった。
俺は素早くウーデルスの記憶を視て照らし合わせた。
ウーデルスに潰された愚連隊の残党やチンピラなどの連合隊だった。
多分これでウーデルスに恨みを持つ者は全部だな。
いつまでも付きまとわれるのは鬱陶しいし、ちょうどよかった、片づけてやる。
殺しはしないが、一生剣が握れないようにしてやる。
だが十一名だと人数が多い。
レイラを巻き込む前に決着をつけないとな。
俺は賭けに出た。
レイラに逃げるよう指示を出した。
そして素早く彼らの前まで走り俺は土下座した。地に頭をこすりつけ詫びた。
泣き叫んだ。
予想外の展開に連合隊は戸惑っていた。
先に進んでいた六名が俺の前まで来て嘲笑った。
残りの者は後ろで立ち止まり見ている。
こっちに来る様子はない。
仕方ない。
一挙に六名のアキレス腱を切った。
そして後ろにいた者に襲い掛かった。
やつらののうち二人は仕留めた。
だが残り二人がレイラに方へ走っていった。
俺、いやウーデルスの体が無意識に動いた。
火が飛んでいき、二人に当たり、燃え広がった。
「レイラ怖かっただろ」
呼び捨てにしちゃった。よしここは渋く決めなきゃな。
そしてキスから始め、もみもみ……。
そこへパチパチまばらな拍手がした。
「いやあ、お見事、殺し甲斐があるよ」
手を叩いていたのは片足が不自由になり杖をついていたあの狐の獣人だった。
眷属って言われてたよな。
「私が焚きつけたんだがそいつらは雑魚だったな」
狐男には三名の獣人が従っていた。
その後ろから頭に一本の角を生やした赤い人が現れた。
赤鬼人だった。
狐男は赤鬼人に時代劇の悪徳商人のごとく頼んだ。
「先生、バッサリやってください。これは前金です。残りの半分は全部始末したら渡しますので」