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第158話 本編Ⅰ-47 陰神と陽神の秘密

会話文が多いですが、幾つかある設定の一つがあきらかになります。

結構重要かも。




「あなたは……」


「私は司神です」


「ああ、お久しぶりです。その腫れぼったい顔に充血した目、一体どうされたのですか」


「ええ恥ずかしいことながら母に怒られました」


「お母様って天神様ですよね」


「はい、あの天神様が怒るとは何か余程のことを……」


「いえ、ええ、ううん、そうなんです。私がいけなかったのです」


「何をしでかしたんですか」


「いえ何もしなかった。言わなかったのです。あなたに」


ええっ俺かよ!


「ちょっちょっと!私も関係あるんですか」


「はい、今この世界はあなたを中心に回っているのです」


前もそんなこと言われたけどこんな弱っちい俺が中心って有り得ないよな。


「もっと具体的に説明してください。俺が納得できるように」

しまった。

『俺』じゃなくて『私』って言わなきゃ。


「それについては私もよくわからないのです。でもこの世界の状況を変えるためにあなたを呼ぶよう、星神様が手配されたのだと思います」


なんだよ、結局はっきりしたことは何一つわかってないのかよ。


「母だともう少し詳しい事情を知っているのかもしれません。では」




司神は去ろうとした。


「おおおおおおおいぃぃぃぃぃぃ、なんか俺、もしかして私に告げることがあるんじゃなくて」


「ああそうでした。うっかりです。実は陽神と陰神は私の子なんです」


それは知ってるよ。


「そして彼らは一つだったのです」


うん?なんだなんだ。


「つまり『陰陽神』という名の神だったのです」


ちょっと衝撃だった。


「な、な、なんでそれが二つに」


「あなたも知ってるでしょうが『ノ』がつかない神は基本不死なんですが、不死身ではなく、不死というのも絶対とは言い切れないのです。『ノ』がつかない神で今まで死んだ例がなかっただけで」


「ええ、それで」


「陰陽神は私の下で具体的に様々なことを担ってました。生き物、特に知性を持ち合わせている生き物は不完全な状態が完全なのです」


「言ってる意味が」


「不完全な状態での存在が正しいのです。真面目な部分とお茶目な部分、明るい部分と暗い部分など。そのバランスを彼らが担ってたのですが」


彼女は唇を噛んだ。

そして続けた。


「ある時邪神が後ろから彼らに斬りつけたのです」


「でも不死身だったのでは」


「いいえ、斬り方が鮮やかで、しかも魔剣を用い、特別な呪文を唱えていました。おまけに邪神は元々は陰陽神より位が上でその時点では力もまだ残ってました。そして陰陽神は二つに割れやすいと知っていたのでしょう。陰陽神は心の中で葛藤してましたから」


「それはおかしい。陰神はどちらかというと邪神と近しい関係じゃないですか」


「それはですね陰陽神は二つに分かれた時にそれまでの記憶も全部失ったのです。真面目な陰神は邪神に丸め込まれました。邪神からしてみれば、つかみどころのない飄々とした陽神よりは陰神の方が操るにはたやすいと思ったのでしょう」


「そっかあ、それで色々なことをするように仕向けていたのですか」

なんとなく納得できた。


「そうなのです。陰神が自分の理想とする正しい世界を創ろうとする想いを利用しているのです」


「しかしにわかには信じられませんねえ。私には邪神はよくしてくれましたから」


「それも邪神には何か魂胆があるはずです。彼はただこの世がいつも混乱していればいいのでしょう。それ以外は何を考えているかはわかりませんが」




彼女の話は堰を切ったように続いた。

「陰陽神が二つに割れた時にも邪神はそこから溢れ出た力を自分に取り込んだのです。そして今回も陽神を襲わせ、その力を手に入れたか、成長する彼らに危険を感じたのか」


「陰神と陽神はシンクロしているんですね。だから片方が怪我をすると」


「そうです。今回また力を失いました。世界が新しい流れになる度にリセットされていた記憶もなんとかキープできつつあったのですが。そう、回復しつつあったのです。それも邪神のせいで駄目になりました」


「でも王神の方がもっと悪い存在でしょう。少なくとも俺はこの世界にいる限り奴を倒すことを一番の目標にしてますよ」


「私の管轄外ですが、それについてはそのうちわかるそうです。誤解が解けわだかまりがなくなるのでしょうね」


俺が憎い王神と和解するなんて想像できなかった。


「このことを陰神や陽神に教えてもいいのですか」


「無駄でしょうね。特に陰神には。なたが警戒される事になりかねませんし、邪神の耳に入る可能性もありますからやめた方がいいでしょう」


「しかし今の私では何もできない気がするんですが」


「今のままのあなたではね。しかしあなたは徐々に内実を知り、力を蓄えます」




こいつら大きなミスをしてやしないか。

もしかしたら人選ミスじゃないのかな。

俺じゃなくドラゴンの方が適役なんじゃ。


俺はその旨伝えた。


「いいえ、ドラゴンは陰神が呼び寄せたのです。召喚の儀式を行った者は呼び寄せた者の力や数に応じてしばらく活動できなくなるのです。だから陰神はしばらくあなた、そしてこの世界に姿を見せなかったのです

彼は召喚の儀式を執り行う前に『嘘をつくと鼻で呼吸ができなくなる世界』となるよう呪いました。彼が召喚した影響で休眠状態になっている間に『鼻が伸びる』『鼻が光る』と呪いが弱まったのです」


「そうですか。今回完全復活した彼が世界中にかけた呪いは『嘘』に関してではなく『怒り・憎しみ』に関してなんですね。顔が点滅したりとか」


「そうです。人々からしてみれば迷惑な話でしょうが、『これによってよくない感情を戒める』と陰神は大真面目なのです。やはり陰陽神に戻ることで、一人前の神となりましょう。あなたには大変なお役目でしょうが」


「想像できない。実感ゼロ。こんなちっぽけな存在に何期待しているのですか」


「星神様のされたことですし、今あなたには帝神様自らが守られています。母や私もついてますし」


「そういえば、このことを言わなかった理由は」


「我が子の恥です。高い地位にある神が後ろからバッサリやられたなんて、言わなくて済むものなら一生言いたくなかったでした。すると母が我慢しきれなくなって自分から説明すると言い出して、私がそれを止めて、母娘喧嘩になったのです」


なんか人間と変わらないなあ。






「不死身のドラゴンが疲れていたようだけど」


「確か彼らは一定の期間活動すると休眠状態になると聞いてますが」


真実教の噂を思い出した。

『八〇年おきに姿を現し、使徒を連れている。

信じる者には恵みを、信じない者には苦しみを、罪人には死をもたらす』


「もしかして活動期間は二十年ですか。そして八十年休むとか」


「そこまではよくわからないのですが」


そして俺にプレゼントがあると言い出した。


「母に言われたの。母も帝神様から指示されたんだと思うけど。耳の感度をよくするわね。これは指向性といって、聞きたい音だけを大きな音で捉えることができるの。使える範囲はわからないけど、この町ぐらいのエリアで使えるんじゃないかな」



実戦ではあまり使えなさそうだが貰えるものは貰っておいた。

変な踊りのような儀式を済ませ呪文を唱えた。


「これでバッチリよ。後は使う際の呪文と対象者の名前を心で呟けばOKよ」


外はすっかり明るくなっていた。

司神は別れを告げると去っていき、俺は今度こそ眠りに就いた。


こんな技役に立つのかよと思いながら。




しかしこの術はすぐに役に立ったのだ。

司神は知らなくても帝神は知っていたのだな。










俺はブクブク太った治癒術使いとして糊口を凌ぎながら旅を続けた。


いかん、このような食生活だと折角太ったのに痩せてしまう。



ラオ大陸行きの船が就航している港町に着いた時に嬉しい話を聞いた。


俺のバイブルである魔法書『比較的簡単に誰にでも魔法が身につく』の作者であるミワキゲ先生がもうすぐラオ大陸から渡って来られるという話だ。

世界中を講演で飛び回っているらしい。


俺は待ち遠しかった。

直に教えを請うつもりだった。

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