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第151話 本編Ⅰ-40 イメルサ討伐


イメルサ討伐に参加した結果、まともな社会生活を送れなくなった者が数多く入居している施設に足を運んだ。

ある男性はウエンディを見ると怯え失禁した。

また別の男性はウエンディを見ると下半身を膨らませ迫った。


その中でかろうじて受け答えできそうな男を二人見つけ話を聞いた。

たどたどしい感じはあったが、最初はしばらく普通に世間話をしていた。

だがイメルサの名前を出すと二人とも興奮しだした。

「イメルサは悪魔の化身だ」


「何を言う。イメルサ様は天女だ」


二人の男性は揉め始めた。

しかし具体的なことを何も聞けなかった。



三人だけ女性も入居していると聞き、聞き取りを試みた。


一人目は俺とウエンディが声をかけても無視して独り言を呟いていた。

「どうせ私は醜いわ。スタイルもよくないし、生きている資格なんかないのよ。女としては出来損ないなのね」


しかしその女性はやつれて化粧も一切していなかったが、それでもなかなかの美人だった。


どういうことだ。

自分を醜く思うような幻術でもかけられたのだろうか。



二人目の女性はウエンディを見ると罵倒しだした。

「この醜女め。よく平気な顔して生きていけるな」


この女はさほど美しくもない自分自身の容姿は棚に上げて、よくもウエンディのことをそれだけ罵れるもんだ。


「イメルサ様の前にその醜い姿をさらすのか。それは生きたまま死ぬことを意味するぞ。やめとけ」



三人目の女性は一番症状が重そうだったから声をかけるか迷った。

ウエンディを認めると、目を見開き、大声を出した。

「もうあたしのことはそっとしておいておくれ。イメルサあんたにはすべて敵わない。あんたよりいい女なんてこの世にはいないよ。だからだからもう勘弁して。もう虐めないでおくれよ」


ウエンディとイメルサとを間違えているらしかった。



結局聞き取りでは要領を得ることが出来なかった。

だからどんな対策を講じればいいのかもわからなかった。

ただ討伐に参加した者は皆、精神になんらかの支障をきたしていることははっきりした。


そしてどうやら大変な美形らしいこともわかった。

そこは楽しみだ。

いやいやそんなことじゃいかん。

命懸けの仕事なのだ。気をつけねば廃人同様にされてしまう。


イメルサに関して詳しいことがわからないだけに恐ろしい。

だが俺には秘技がある。


『死にたくないよ』

これを日本語で唱えれば、鬼は退散する。

理由はわからないが。


以前オーデウスに転生している時にミック=ルセイユに転生していた泉理李様もそう推理してくれたし。

あの聡明な理李様の考えに間違いなどあるはずがない。

そしてそのことをすっかり忘れていた俺も、トリア国で鬼人のサイルに『死にたくないよ』と日本語で発したら、奴に命乞いされたのだった。







俺とウエンディは『恵みの森』に入っていった。


目の前にメッチャ綺麗な女性がいる。

ダイナマイトボディで瞳はブルー。

髪をキャバ嬢のように盛っている。


まさかこのデラ別嬪がイメルサなのか。

精神操作されないうちに先制攻撃だ。


俺は叫んだ。


「死にたくないよ」


イメルサはキョトンとしている。


もう一度試した。

イメルサは訝し気な表情でこちらを伺っている。


今度は「死にたくないよ」と穏やかに唱えた。


駄目だ反応がない。

「あのう、あなた角が見えないけどイメルサさんですか」


「そうよ、角が隠れるように髪を盛ってるの」


「やはりそうか、死にたくないよ!!!」


しかし彼女は顔色ひとつ変えないではないか。


「随分おかしなのを送ったわね。まだ子供じゃないの」


くそっ馬鹿にしやがって。


俺はミシュ語で『死にたくないよ』と叫んだ。

イメルサは笑い出した。

「何言ってるのボク。取って食ったりはしないわよ」


そこへ物陰に隠れていたウエンディが火系の魔法を使い火を連続で飛ばした。

が、なんなくイメルサはその攻撃を躱した。


「あーら、今までの女に比べたら随分まともね。あたしの美貌には適わないけど。顔がこっちを向いてるってことはそれが胸?

わかんないわね。貧弱な胸ねえ」


そう言うとイメルサは素早くウエンディの背中に回った。

「うわあ、背中に結構いい筋肉ついてるじゃない。後ろと前を交換したらどう」


ウエンディは一番気にしている貧乳を口撃されブチ切れた。


「あーあ、そんなことでキレるなんて女の資格ないわね。その醜い片方の目はどうしたの」


この女ひどい、片方の視力を失い傷になっている目についていじっている。


「これは戦った証拠、名誉の傷だ」

ウエンディは堂々と言った。


「あら、はしたないわね女の子なのに」


「女でもやる時はやらねばならないのだ」

ウエンディは顔を歪ませながらそう言った。


イメルサはわざとらしく驚いた顔をした。

「やっぱり女のつもりなんだ。女はいつも綺麗じゃなきゃ駄目なのよ。無謀な戦い方をして自分の顔に傷をつけるなんて。

女であることを放棄しているのと一緒。そう、あなたには女の資格はないわ。

ちっとも柔らかみのない体。あなたを見たら赤ん坊もきっと怯えちゃうわね。

世の中の男性はあなたみたいなのが存在していると不幸になるの。

だからこれからは家で大人しくしてなさい」


まずい、ウエンディの目が少し虚ろになってきた。

俺は割って入ろうとし、剣に手をかけた。た。


「あらボク、話しているだけなのに剣を抜こうとするなんて随分乱暴者ね」


「わかった。剣は抜かない。ウエンディを口撃するのはやめてくれ」


「教えてあげてるだけじゃないの。ボクの相手は後でまたしてあげるから」



イメルサのウエンディへの一方的な口撃は一時間以上続いた。



まずい。

ウエンディが、あのウエンディが涙を溜めている。


「ウエンディ気にするな。充分綺麗だぞ」

俺は元気づけようとした。


「あはははっ、慰められるなんて哀れな。さあそこのペチャパイ邪魔だからお帰り!」


ウエンディはイメルサに言われたとおり先に帰ってしまった。


余程ショック状態にあるのだろう。




イメルサは妖艶な笑みを浮かべながら俺の方へ近づいてきた。


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