表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/170

第144話 本編Ⅰ-33 失敗


しかしそれからヒッチコの話を聞き俺は合点がいった。

ヒッチコは誰にも内緒で愛人がいたのだ。

そしてその愛人とヒッチコとの間には女の子が一人。


その女の子が贋金づくりの一味に攫われたのだった。

そして十万ルド金貨の原版を渡すように要求してきた。


ヒッチコは誰にも相談できず、独りで苦しんだあげく犯人の要求を受け入れる計画を練り上げた。

それはこうだった。


何者かがヒッチコの家族を誘拐しようと狙い何度か未遂も起きる。

警備を厳重にしたが、ある時ヒッチコ自身がボディガードを装った犯人の一味に脅され、原版を渡す。


その証人として『俺』が選ばれた訳だ。



「ラデウスなら最適だと思ったのだ。

君は治癒術は優れていても腕っぷしはさっぱりだから、現場の目撃者としてうってつけだと思ったんだが。

そんなに強いとは知らなかったよ。おかげで予想外の結果になった。

ああもう駄目だ。娘は殺されるだろう」

ヒッチコはため息をついた。


「本来ならこの後はどういう計画になってたんですか」


「ここに倒れている二人のボディガードに原版を渡し、私と君はここに縛られる予定だったんだ。

そして原版と引き換えに娘は解放されると」


「果たしてそのようになるでしょうか」

帝神が口を挟んだ。


「どういうことです? ヒッチコの計画に何か問題があるのですか」


「そうですね。敵はすんなり人質を解放してくれるでしょうか。相手は贋金を作るような大悪党なんですよ。関わった者は口封じのため殺すかもしれませんよ」


ヒッチコが急に泣きながら哀願した。

「帝神様どうか娘をお助けください」


「申し訳ないのですがそれはできません」


意外な答えに俺も憤慨した。

「どうしてですか。あなた様のような偉い神様なら容易いでしょう」


「私は直接具体的なことに関わらないのです」


「じゃあ今回は関わってくださいよ」


「決まりがあって、そういう訳にいかないのです。今回星神様から命じられているので、サトウリュウ、あなただけには直接関わるのです。それも緊急時のみです」


「緊急時って」


「あなたがヒッチコに殺されようとしたでしょ。それはまずいのです」


「目的を達成していないうちは死んじゃいけないってことですか。じゃあこれからも危なくなったら助けてくれます?」


「いいえ、あなたと敵対している者が殺す分にはいいのです。ヒッチコはあなたと敵対している訳でもありませんし、こんなところで死なれるのは困るのです」


ヒッチコが叫んだ。

「娘なんかどうでもいいと仰りたいのですか」


そんなことは言ってないのだが。

ヒッチコは少しヒステリックになっていた。


「ヒッチコとやら。落ち着いてください。ここに頼もしい者がいるでしょうに」

帝神は俺を指さした。


そして勝手に消えた。



ちょっと待てよ。

えっヒッチコが俺に哀願してきた。


俺がやるしかないか。






計画通り俺は死んだ振りをしていた。



気絶していた二人のボディガードはヒッチコに起こされた。



そして厳重に保管してあった原版をヒッチコが渡すとヒッチコを縛り上げ連れ去った。


取りあえずヒッチコは口封じをされずに済んだ。


俺は気配を消す魔法を使い、こっそり悪人二人とヒッチコの跡をつけた。





森の奥深くに入っていく。

五人も男がいた。

一人今の俺より少し幼いぐらいの女の子を連れていた。

「パパ、助けて!」


犯人グループは原版を確認しているようだった。


「よし、いいだろう」

そう言うと五人はいきなりボディガード役だった二人を刺し殺した。


「話が違う」

そう言うと二人は息絶えた。


俺はダッシュして女の子の近くにいた男を斬り捨てた。

そしてもう一人の喉にも突き刺した。

しかし間に合わなかった。

女の子はヒッチコの近くにいたボスらしい男に矢で射抜かれた。

もう駄目だ。


そしてそのボスらしき男は娘を殺され呆然としているヒッチコのお腹を切り裂いた。


「おい、早く手当てしないとヒッチコは死ぬぞ」


俺はすぐさまヒッチコの手当てに集中した。

三人は仲間二人の遺体を抱えてまんまと立ち去った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ