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第142話 本編Ⅰ-31 何でも屋始動

踏ん切りがつきました。


最初の仕事は魔物の退治だった。

とはいっても強くはないが、逃げ足が速い魔物だった。

この仕事は大勢の仲間と共に請け負うということだった。

だがその条件を断り、単独、つまりウエンディと俺だけで受けた。


前以て木の枝で周囲を囲み、魔物が現れた時に火をつけ逃げ場をなくし、矢で射た。




二つ目の仕事は護衛だった。

これは地方の有力者からの依頼だった。

国に治める税を都に運ぶ、その警備に加わってほしいとのことだった。

ウエンディの剣術より俺の治癒術を必要としているらしかった。

長い道中病人が出たり、襲撃により怪我人が出る可能性も考えられる。

治癒術が出来る者はそうはいないので重宝されているのだ。


今回は警備する仲間に何人か偽名を使っている者がいることがわかった。

『ネームの術』のおかげだ。

それとなくその者たちの動向を見張っていたが、途中で補給用の水に何か入れているのを見て、こっそり確認したところしびれ薬だった。

名前を偽っている者は五人だ。


俺とウエンディは休憩になっても水を飲まなかったが飲んだふりをした。

他の者が痺れて倒れたのを真似し、倒れた。

そこを悠々と五人が奪っていこうとしたのでウエンディと俺とで敵を封じた。


敵はすぐ俺を人質に取ろうとする。

俺の方がウエンディより剣の腕は上なのを知らないのだから無理もないのだが。

それで油断しているところを制圧した。

やはり俺は剣の腕はからっきし駄目だということにしておいた方が何かと都合がいいようだ。

もちろん『ネームの術』は秘密だ。

今回俺は偶然補給用の水に何か入れているのに気付いたということにした。


その後の道中も金に目の眩んだ悪人が何組もいた。

ウエンディの視力を補うための聴覚、嗅覚、第六感が不審者の存在にいつも気づいたおかげで一人の死者も出さず仕事を遂行できた。




俺は徐々に他の魔法も使えるようになってきた。

アーデウスに転生していた時に身につけた火系魔法はさらに強化されウエンディの背中が見えるほどのところまで進歩した。

ケイティの時に身につけた風系魔法は元々たいしたことなかったケイティを超えた。

そしてケイティの零コンマ二秒ほど事前に察知できる技も身についた。

カデウスの針の技と、気配を消す術もラデウスのものにできた。



その次の仕事は怪盗ゴキブリ男を捕まえることだった。

これは特に依頼があった訳ではない。

だが捕まえると国から報酬が出るのだった。

それに何よりも一番の宣伝になる。



怪盗ゴキブリ男というのは神出鬼没だったが、義賊なんかではなく目撃した者は必ず消されていた。

今までの行動から考えると、泥棒としての腕は一流だったが、プライドが高く挑発に乗りやすいタイプだった。

それで実家を利用しておびき寄せることにした。


ベントール家も今やかなりの財産を築いていた。


『何でも屋を生業としているウエンディとラデウスがしっかり考えた警備体制。

あの怪盗ゴキブリ男でも盗みに入るのは無理』


こう触れ回った。



昼はお店の奥からこっそり観察した。

そして夜は気配を消して見張りを続けた。


さすがのゴキブリ男もいきなり盗みには入らないだろう。

しばらく下見を続けるはずだ。


昼間今まであまり見かけなかった客が頻繁に来るようになった。

しかもさりげなく隅々を観察している。

おまけに完璧な変装までしている。


完璧な変装をしている相手を俺が見抜けるのも『ネームの術』のおかげだ。

いくら変装しても『ネームの術』によりその者の頭上に表示される名前は同じだ。

『ツーマ=ミカレイ』と表示されていた。


夜は気配を消す術を使い家の近くで張っているとやはりツーマ=ミカレイが現れた。

俺は最善の方法は現行犯逮捕だろうと思った。

それなら言い逃れできないからである。

だからゴキブリ男の下見は放置しておいた。


そしてある晩押し入ったゴキブリ男は金品を背負い、最後に『ゴキブリ男が参上』という張り紙をした。

そこを気配を消す術で忍んでいた俺はウエンディと捕縛した。



これは大評判になった。

都ミュラーでは時の人となった。






そんな俺たちに大きな仕事が舞い込んだ。


今度の仕事は大金持ちの家の子供の学友兼ボディガードだった。

父親は財務局のお偉いさんヒッチコだった。

日本で言うなら銀行の頭取みたいなものか。


以前税を都に運搬する仕事を依頼してきた地方の有力者からの推薦があったようだった。


学友は俺の担当で、ボディガードはウエンディが担当した。

もっともボディガードは他にも複数いた。

今までにも何度か誘拐未遂はあったらしい。


外国から呼び寄せたボディガードも複数いた。

こいつらは何かした後で高飛びする可能性もある。

なんとなく不穏なものを感じる。


『ネームの術』で確認したが偽名を使っている者はいない。

だが油断できない。

こんな時に陰神から授かった『嘘を見抜く術』が使えたら便利なのだが。

しかしそれを発動できるような状態にすると、陰神に居場所を特定されてしまう。

陰神と俺との立ち位置がはっきりしない以上は用心に越したことはない。



そして事件は起きた。


俺はその日ヒッチコに呼ばれて同行していた。

算術で俺が秀級なのを知っていて手伝ってもらおうというつもりのようだ。


職場の奥にあるヒッチコの部屋に俺たちはいた。

俺とヒッチコとボディガード二名。

するとボディガードのうちの一人がいきなり俺を羽交い絞めにして首に短刀を突き付けた。

もう一人はヒッチコを剣で威嚇した。

やはりボディガードの一部の者が犯罪者側だったのだ。



つい油断してしまった。

狙われるのは子供に違いないと決めつけていた。


今までも子供ばかりが狙われていたのだ。



俺はこの二人になら勝てると踏んだが、相手の出方を伺うことにした。

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