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第139話 本編Ⅰ-28  久しぶりの神



嘘だ!


陽神と容姿は確かに似ているが、彼は顔に傷などない。

そして自分のことを『私』などと言わず『僕』と言う。


年輩の従業員が口を開いた。

「陽神って聞いたこともないんですが。神様って大抵『ノ』が入るでしょ。獣ノ神とは魔ノ神とか」


「それらは位があんまり高くないんだ。私みたいに偉い神には『ノ』は付かないんだよ。えーとこの辺で知れ渡っているのは、王神かな?」


「ああ王神様なら知ってます。神様たちの上に立つ神様の王に当たるお方ですよね」


「ちょっと違うけどまあいいでしょう」


俺が知る限りこの少年の説明は間違ってはいない。

しかし王神の名前を聞き、思わず頭に血が上った。


彼は俺を見て怪訝な顔をした。

「うん? あなた今殺気だったよね。でも黄色く点滅しないってどういうこと? 陰神の呪いが効かないなんて只者ではないね」


彼は目を凝らした。

「ラデウスっていうのか」


「あっ」

俺は思わず声に出した。

もしかして彼は俺が陽神から伝授された『ネームの術』を使えるのか。


従業員は少し語気を強めた。

「騙されてはいけませんよ。坊ちゃまの名前ぐらい、ちょっと調べればすぐわかることです」


確かにベントール家の者はこの辺では有名だった。


「ふふっ、じゃあトラコデ、っていうんだ。おじさんの名前、これもすぐわかっちゃうんだけど」

トラコデと名前を当てられ、苦情係の従業員は動揺した。


俺は会話が聞こえないところまで従業員を連れてきて、命じた。

「トラコデさん、こちらの方を来客用のお部屋にご案内して。そして家族用のクッキーや、その他ケーキ、エビチリとか色々差し上げてください。

私はできるだけ早く戻ってきますからそれまで失礼のないように。

そして、決して帰してはなりません」



俺は人のいないところに行くとクネクネ体をよじらせながらブツブツ唱えた。


よしこれで『ネームの術』の準備ができた。

本物の陽神に俺の存在が知られてしまうのは残念だが、陽神を騙る少年の正体が知りたい。



俺が少年のところへ行くと、座っていた彼は立ち上がった。

「あれ、サトウリュウ、あなた今はラデウスという名前なんですね」


うん?

俺は急いでネームの術を使った。

すると少年の頭の上に『陽神』と表示されていた。


「えっ本物?」

思わず声に出していた。


「嘘なんかついたってしょうがないでしょ」


「でも話し方が変わったし」


陽神はニコッと笑った。

「私も成長したんだよ」


「でも陰神様はもう見かけは大人でしたよ」


「いや、私もこの間までは大人だったんだけど、邪神の手下と召喚された者に襲われてしまってね。名前は確認したんだけどなんて名前だったっけかな。まあいいや、おまけに将神までグルになって」

陽神は先程までより少し気さくになった。


「それって厄ノ神とブルデッドでしょ」


「そうそう、そうだった」


「よく助かりましたね。あっ顔の傷はもしかして」


「そうなんだよ。その時の傷なんだ。もう駄目かと思ったよ。まあ私は死なないらしいけど。

でもその代わり成長していたのにまた後退してしまったんだよ」


「なんで邪神様がそんなことを」


当然とばかりに陽神は答えた。

「邪魔なんだよ。成長すると力も付き能力も高まるんだ。失っていた記憶も段々戻るし。邪神はそれが嫌なんだろう」


俺は考え込んでしまった。

どうして邪神は陽神が邪魔なんだ?


黙っている俺を見て陽神が忠告した。

「とにかく邪神には気をつけること。そして陰神のこともよろしくね。あいつはどうしようもない奴だけど、この世界をよくしようと思っての行動だからさ」


あれっ前となんか違う。

やっぱり陽神は中身もだいぶ成長したのかな。


彼は付け足した。

「サトウリュウは恐れ多いお方が守って下さっているらしいから大丈夫だろうけど」


「えっどこでそれを聞いたんです?」


「お母様に会ったら教えてくれたんだ。内緒の話だったんだけど当事者だからいいよね」


「司神様も知ってらしたんですか」


「多分天神様に聞いたんじゃないかなあ。あっ時間だ。そろそろ行かなきゃいけないところがあるんで」


彼は出立しようとして最後に言った。

「転生の件は正直には言わないようにね。今回で終わりだって言ってみたら相手の本当の意図がわかると思うよ。

それと私はあなたの味方だよ。というかあなたにお世話になるらしいから、よろしくお願いします」


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