第132話 本編Ⅰ-21 やっと見つけた仕事
少なくてすみません。
自営業みたいなものをしてまして、最近かなり忙しくて。
それと文字打つのが遅いと今日はっきりわかりました。
ある公的機関に行き、事務の方と打ち合わせをしたんですが、メチャ文字打ちが速い。
今から風呂入ったらまた仕事です。
川を境にジャイ国と隣接しているダロ王国にそのまましばらくの間滞在した。
それはマックに対して一縷の望みを抱いているからだった。
しかしその望みは叶わなかった。
マックは国王殺害の罪で斬首刑になった。
彼を都に招待したという学会は存在したものの会合の予定もなければ招待もしていないとのことだった。
王宮近くの宿の予約もネオスからの封書での郵送によるものであったと判明した。
それによりマック個人だけではなくベントール家が関わっていると断定され、指名手配されていた。
我々は追っ手が来ないうちにとダロ王国から更に三つの国を通り抜け、トリア神国に来ていた。
この国は魔ノ神を信奉することを国家の根幹にしていた。
よって魔ノ帝の派閥であるジャイ国との交流はまったくなく、引き渡される心配もなかった。
俺は魔ノ神とは色々因縁があったから本当は嫌だった。
だが一番年下で、しかもまだ十才の俺が反対できるはずもなかった。
父ガウディは経理に明るかったので、その類の仕事に就いたが足元を見られたせいか、家族全員を養う程の手当てはもらえなかった。
母ベッキーやお手伝いの老婆ヒアルは緊張状態の続いた長旅のせいだろう、疲れが出て寝込んでいた。
そこで姉ウエンディと兄モスバと俺が何かしらの仕事をすることにした。
モスバとウエンディは魔法という特技があった。
しかしながら、ここトリア神国は魔人の中でも強力な魔法を使える者が多かった。
よって二人は色々探してはみたものの魔法を活かした職には就けず、さっさと見切りをつけたモスバは臨時教師のような職を見つけた。
「ねえ師匠なかなか仕事が見つからないんだけど、あたしどうしたらいいと思う」
久しぶりにウエンディが俺のことを『師匠』と呼んできた。
『師匠』としては是が非でも導いてやらなければなるまい。
一つ心当たりがあった。
冒険者組合だ。
ここは異世界だ。
しかも周りには魔法を得意とする魔人ばかりがいるようなところなら、尚更あるはずだ。
ウエンディと一緒に街中を探して回った。
しかし予想に反して冒険者組合は存在しなかった。
ここは魔法の達人が多い国だ、もしかすると冒険者組合などなくても大抵のことは各々で解決するのか。
しかしなんとか得意の剣技を活用できる仕事を見つけなければならない。
最終的には町の者に尋ねたが冒険者組合は少なくともトリア国には存在しないことがわかった。
その代わり仕事斡旋所を見つけた。
日本でいうところのハローワークのようなものだ。
そこでは書類に名前を記入するだけでよかった。
冒険者組合のようなシステムなど何もない。
自分やウエンディのレベルがどのくらいかちょっと楽しみでもあったのだが、その分肩透かしを食ったような気分になった。
掲示板に求人募集は掲載されていた。
農作業の手伝いやお店の補助、家政婦の仕事が多かった。
変わったところでは巫女のバイトや子守り、ペット係みたいなのもあった。
もっと『勇気の魔法』を十分に発揮できるような職種はないのだろうか。
と、端っこにひとつだけ古びた依頼を見つけた。
『危険手当あり、悪鬼退治頼む』
とあった。
係りのおじさんに聞いてみた。
「これはどんな鬼なんですか」
おじさんは俺とウエンディを一瞥してぼそっと言った。
「やめときなそれは。間違いなく死ぬよ」