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第127話 本編Ⅰ-16  意外な名前が

「ほう、弱い方から先に来るのか」


ザンパのその言葉を聞きウエンディはいきり立った。


「どっちが強いか弱いかもわからないようじゃあなたもたいしたことないんだね」


「うん? 小娘お前は自分がこの男の子より強いつもりでいるのか」


「姉であるあたしがこの弟に剣術を教えてあげてるのよ。今でもあたしには歯が立たないんだから。ね、そうでしょ、ラデウス」


「可哀そうに。何が理由かは知らんが弟に手加減されているとは」


「うるさい、じゃあ試合開始」

と言うなりウエンディは踏み込んで剣を振り下ろした。


しかしザンパは剣を抜くこともなく、なんなくウエンディの攻撃を躱した。

一瞬怯んだウエンディはそのまま連続で何度も打ち込んだ。

それらもすべてザンパは軽々と除けた。


ウエンディは肩で息をしていた。


「ふふふっこんなもんか、つまらん」


ウエンディは素早いモーションで不意打ちをかけた。

一番得意としている体を横向きにしての片手で剣を持った状態での突きを入れたのだ。

だがその剣はわずかにザンパには届かなかった。

いつの間にか彼は後ろに下がり間合いを取っていたのだ。


そして素早く近づくと足を引っかけウエンディを倒した。

そのまま彼女の手を足で踏みつけた。

ウエンディは足掻いたがまったく身動きできなかった。


「このぐらいでは何の役にも立たないぞ。飯盛り女としてついてくるなら同行してもよいが」


ウエンディの顔が黄色く点滅しだした。


初めて見る姿だった。

感情の起伏が激しいお転婆なウエンディだったがそれでも憎しみや怒りで目や顔が黄色く点滅することはなかった。




当初俺は適当にお茶を濁して出来れば剣も交えず終わらせるつもりだった。

だのにウエンディのそんな姿を目にしたことで思わず我を忘れ彼女の敵をとるために本気になってしまった。


いや敵をとることはできないかもしれないがせめて一矢報いたい。


勇気の魔法を最大限発動し彼に斬りつけた。


俺の素早い動きに彼はニヤリと笑った。


「思ったとおりだ。やっぱりお前はできる。さっきの小娘とは違うな」


うるさい黙れ

俺は心の中で叫んだ。


「いつも姉に稽古をつけてもらってますので」


そう言いながら踏み込んだ。


「ほう」と感心したような声を出しながらもザンパは剣を抜こうとしない。


ザンパに息つく暇も与えず 俺はドンドン攻め込んだ。

一方的に俺が攻撃するだけだったが俺は気づいていた。


目の前の龍人は楽しんでいる。

闘気を感じ取れない。

ましてや殺気など微塵もない。


ザンパは嬉しそうだった。


「お前年はいくつだ」


ザンパの声はまったく乱れてなかった。


「ちょうど十才です」


「十才でこのぐらい出来るとはなかなかだぞ。将来有望だ。いやこのまま行けば末恐ろしくなるな。

二十年後にお前と再会したら俺でもどうなるかわからない。

で、その流派はなんという名前だ」


「そんなの知りません」


「嘘はいかんぞ。誰に習ったんだ」


「姉に習いました。ねえウエンディ」


ウエンディは頷いたがなんか納得してないようだった。


「そうかお前何か秘密があるな。まあいい今はまだ俺の敵ではない」


しばらく間を置いてから彼は尋ねた。

「本当は誰に習ったんだ」


ウエンディをチラッと見ると目が合った。

が彼女は俺から顔をそらした。


ザンパめしつこいぞ。


俺は剣をそのまま投げつけた。

そしてジャンプして体をドリルのように回転させながらキックを放った。

『勇気の魔法』を俺がウーデルスへの転生で会得した時に、やはり身につけたウーデルスの必殺技だった。


「ジャンピングフック」 思わず技の名前を声に出してしまった。

全然フックとかじゃなくキックなんだがそういう名前なんで仕方ない。


ザンパは初めて俺のキックを手を使い払いのけた。

彼は驚いた顔をしていた。


「おいその技は誰に教えてもらった」


「えっ僕のオリジナルだよ」


ザンパは怖い顔をした。

「嘘をつくんじゃない」


初めて殺気を感じた。

「実は誰にも黙っていたんだけど、夢の中にいろんな人が出てきて技を教えてくれるんだ。確かこの技を教えてくれたのはウーデルスって人かなあ」


「ウーデルス? 暴ノ神のことか。それは、その夢はいつ見たんだ」


どう言えばいいかわからず咄嗟に出まかせを言った。

「今年に入ってから」


「今年か、今年でいいんだな。あいつは俺が去年確実に仕留めたはず。だのにどうして」


目の前の男がウーデルスを始末したらしいとわかった。

腸が煮えくり返ったが今それに気づかれてはまずい。


「おい、お前怒ったようにみえるんだが」


「ううん、夢に出てきただけの人だし。それに僕の目、黄色く点滅してないでしょ」


俺には陰神が世界全体に仕掛けたと思われる変なお呪いは作用しないはずだ。


「確かにそうだが、今顔が険しくなったように見えたんでな」


「だって死んだ人が夢に出てきて技を教えるなんてなんか怖くて

そのウーデルスって悪い人だったの?」


「ああ逆賊の一味さ」


「何をやったの?」


「子供には関係ない話だ」


「さあもう少しお前の腕を見たいなあ。さあかかってこい」


剣を投げ、折ってしまった俺は二本の木刀を取ってきた。


「さあボウズ、試合再開だ」


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