第126話 本編Ⅰ-15 龍族の跡目争い
そんなに多くはないですが。
俺は王神や魔ノ神、将神、獣ノ神と同じくらいロッドを憎み、頭の中にある復讐リストに載せた。
そしてその口惜しさから学問、武術全般、魔法に打ち込んだ。
そして十才になった。
魔法は今まで色々転生してきた時の能力に比べると雲泥の差だった。
このままではいつまで経っても王神どころかロッドにさえ勝てないかもと俺は焦った。
そして自然と武術の方に力が入った。
両親も俺には他の子供に比べて魔法の資質がないものとあきらめ俺の武術を応援するようになった。
『特級前』まで進歩した姉ウエンディの剣は実際ぐいぐいと伸びていた。
一体何を目指しているかはわからないが、学問の道を究めようとしている兄マックに対抗している部分があるのは確かだった。
俺もそんな姉に対しては絶対気づかれないように手加減をして剣を交えていた。
貧しくとも充実した日々を送っていた我らのもとへ一人の亜人が訪れた。
龍人コデウスだった頃の俺と同じで肩の辺りやそれ以外にもあちらこちらに鱗がある。
俺とウエンディで剣の練習をしていたところへ黒い肌をしていたその男が現れた。
そして彼は名乗った。
「新しい龍ノ神の家臣で黒龍人ザンパと申す。龍ノ神に歯向かう先の龍ノ帝の残党を探しておるのだ。知らぬか?」
「いえこの辺には余所者が来たらすぐわかりますので。その者の名前や特徴は」
「名前はウルヤンキーという。見た目は二十代後半だが、実際は五百年ぐらい生きておる。言葉遣いもよくないし、素行も悪い。ダボダボのズボンを履いて、眉を剃っている」
ザンパは細かく特徴や事情を教えてくれた。
その話を聞いていて思った。
なんだ、龍族の跡目相続が原因のお家騒動か。
誰が次の龍ノ神になるかで百年近く揉めていたが前の龍ノ神の遺言にあった後妻の子ではなく、離婚した前妻の子が魔ノ神の助けでクーデターを起こしたらしい。
そしてそれを成功させたのか。
魔ノ神が味方した側がほぼ勝ったも同然というのが俺は気に入らなかった。
但し俺が憎んでいる魔ノ神と同一人物かはわからないが。
「なんで魔ノ神様は前妻のお子様の味方になったんですか」
「それは前妻が魔ノ神の身内だからさ。実の妹に当たるんだ」
「ってことは新しい龍ノ神様は魔ノ神様にとって甥御に当たられるのですね」
「そういうことだ」
そこへ姉が割って入った。
「もしウルヤンキーを見つけた場合こちらで処分してもいいの?」
「処分? 殺すってことか。できるんだったらな。まあ小娘には無理だろうな」
「もしできたらあなたから魔ノ神様に口添えしてもらえないかしら」
「何をだ」
「我が家の再興を」
「お前たちの家は没落した貴族か何かか。もしウルヤンキーとかいうやつを倒したら身分とかだと復活できるなる可能性は十分あるぞ」
俺はウエンディの耳元で囁いた。
「今の王様は魔ノ神様と対立している魔ノ帝様の派閥だよ」
耳ざとくザンパが俺の言葉を聞き、吐き捨てた。
「もうすぐこの辺も我が主にお味方する魔ノ神の物になるのだ。我が主と魔ノ神、それに獣ノ神が同盟を結べばもう恐れるものなど何もないわ」
「じゃあラデウス、すぐにでもウルヤンキーとやらを探しに行くよ。ザンパ様お供してもよろしいですか」
「お前たちではどうだろうか。足手まといにならないかテストしてやろう」
俺は目の前の龍人の強さを確認をしたかった。
「あなた様は龍ノ神様と比べたらどうなんですか」
「それはさすがに我が主には敵うまい」
「龍ノ神様と魔ノ神様ではどちらがお強いのですか」
「俺がそのようなことを知るはずがなかろう」
苛々したウエンディが俺を手で後ろへ押しやり、それからザンパに向かい構えた。
いつの間にかポイントが増え、評価してくださった方もいたみたいで嬉しいです。
実は今のストーリーは負の部分というか不幸話が多くて、多分つまらないと感じる方も多いのではと思い、ポイントとか絶対減ると思い、チェックしてませんでした。
もう少し辛抱して読んでくださると主人公は強くなるし、さらに辛抱すると今の不幸が活きてきます。
あっそういうことかと思う展開になる予定。
勘がいい方は気づいたかな。