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第124話 本編Ⅰ-13 災難が降りかかる




目の前にドラゴンがいる。

俺は声をかけたくなった。

彼は日本の出身ということもあり、気安さがある。

ザデウスに転生した俺が死にかけていた時、助けに駆けつけたドラゴンが魔ノ神と闘っていた。

俺はそれを最後まで見届けることなくザデウスとして死んだのだった。


でもドラゴンは元気そうだ。

こうやってここで布教活動を手伝っている。

ということは魔ノ神に勝ったのか。

でも違う流れの世界になったらまた魔ノ神は新たに復活するから、なんか無駄な気もするが。

そう、何か大きく歴史が変わるような因子がない限り、すべての生物が再び誕生する可能性を秘めているのだ。

ただ今回は今までと違い、真実教が広まっており、それによって今までの世界と違う歴史になっている。



色々考えた末今はまだ陰神とドラゴンには俺が佐藤龍であることを黙っておくことにした。

俺はまだ何の力もない十才にも満たない男の子ラデウスだ。

陰神に知らせたい時には嘘を見抜く術で陰神に存在を教えられるし。

それで陰神が会いに来るかは別問題だが。


せっかくだから奴の起こした宗教をじっくりとチェックした。

かなり戒律が厳しいのと、『救いの主』を崇拝しろというのが難点だったが、道徳的にはおかしな点はない。

だがやはり息が詰まりそうだ。

陰神が『救いの主』と名乗り説く理想の世界はみんな同じ考えで同じ方向を向き、自由がないように感じられる。


ふと思った。

『なるようになるさ』といった感じのまったく反対の考えを持つ陽神はどうしているんだろう。

ギルダスの時は陽神の気まぐれから一度ひどい目に遭ったが、それでもなんか憎めない奴だった。

真っ先に魔法もくれたし。

相手の名前が本人の頭の上に表示される術だからたいして役には立たないけど。

俺はそれを『ネームの術』と名付けたが。


陰神と陽神は同じ兄弟らしいが、性格が全然違うのは何か理由があるのだろうか。

育った環境が違うとか、腹違い、いや司神は女性だからこの場合は種違いか。

そもそも神様でも子供の作り方とかは普通の男女と同じなんだろうか。






俺は九才になったが、引き続き人並の魔法を使うことが出来るだけだった。

もっと火を自由に操ったり、病人をバンバン治したいんだが。


そのことで今までの転生での俺がいかに恵まれていたかがよくわかった。

忌ノ神と会った時、見かけた魔石をなんとか手に入れたいなあ。

でも危険な目に遭ったし、今の状態だと魔物に出会ったらおしまいだろ。




そしてこの年は前年と違い、雨がほとんど降らなかった。

ほとんどの農作物は実をつける前に枯れてしまい、その植物を飼料にしていた家畜も発育不良でやせ細った。

それどころか水不足が深刻な状態になり、生活に使う水だけでなく飲み水にも困るありさまだった。


水不足の結果不衛生となり、皮膚病が蔓延した。





そして嫌なことは続いた。

ネオス領ではなく、直接我が家ベントール家に災難は降り注いだ。



都にいる父ガウディの上官から指令が入り、ネオス領からもっと端の方に位置する領地マカフに蓄財している食糧及びその他の物資や金塊を運べという指令だった。

ネオス領も大変だったがその領地マカフはもっとひどい飢饉に苦しんでいたのだった。


そしてその運搬の責任者として長兄シーザーが同行することになったのだ。

警護の者も含めて総勢八名で旅立つ日、大役にいつも動じないシーザーも興奮しているようだった。


だがそれは最悪な結果になってしまった。

五十日過ぎてもシーザーが戻ってこない。

すると先方からまだ荷物が届かないとの連絡があった。

順調にいけば十五日で着くはずなのに。


直ちに捜索隊が組まれた。

緊急事態ということであまり領地を離れてはならない父ガウディも捜索隊に参加した。


程なくして七名の者の遺体は見つかった。

遺体は獣の餌となったのか原形を留めてなかったが、そこには争われた跡はなく、七名の死因は毒殺だろうと推測された。

しかし兄シーザーだけは遺留品も痕跡もなかった。



これはシーザーによる強奪ではないかと疑われ、その声は日増しに大きくなり都ジャイラの閣僚たちも無視できなくなった。

ベントール家の断絶は間違いない、それどころか家族全員極刑もやむなしだという噂が広まった。


しかし国王による命が発せられ、我が家は断絶することを免れた。

それは賢明で冷静な客観的判断に基づくものだった。

『シーザーの行方が不明だからといってシーザーが今回の件に関わっているとはいえない。シーザー及びベントール家を陥れようとする何者かの仕業かもしれない。

但し今回荷を強奪された罪は軽くない。その責任者であるベントール家の財産、爵位などすべて没収し、代官職を解き、下働きを命ず』


父ガウディにとっては今まで代官であった自分がその役所にて下働きをするなど大変な屈辱に違いなかった。

しかし極刑を覚悟していた身からすると収監されることさえもなく、これは非常に寛大な処分であった。


我が家族は住んでいたところも追われ、一回り小さな家に移された。

今まで住み込みで働いていてくれたヒアルが寝泊まりする部屋などない。

だが寝るところは廊下でも玄関でもいいし給金は要らないという必死な願いにほだされ引き続き一緒に暮らすことになった。

母ベッキーも頼りにしていたヒアルがいなくては困るのだ。



俺とすぐ上の兄モスバは学校で一部の快く思われていなかった生徒から壮絶に虐められるようになった。

今度ばかりは人数が多すぎて『勇気の魔法』でもどうにもならない。



この事態を打開するには魔法の上達しかない。

俺は魔法に関するトレーニングを続けたが、上達が緩やかすぎた。

以前見かけたあの魔石がほしい。

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