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第122話 本編Ⅰ-11 お菓子

なかなか先に進まない 泣

もっと簡潔してビュンビュンいくかな。

でもそしたら単に詳細なあらすじみたくなっちゃうし。



文字打ちが苦手で音声認識ソフトを試したがうまくいかない。

録音用マイクがあるので今度それで試してみよう。





父ガウディが厳しい表情で俺を諫めた。

「ラデウス、どうしてみんなに黙って独りだけでヒアルを看病したんだ」


「そうよ。みんなに隠すなんて。父さんや私がヒアルを追い出すとでも思ったの?」

とベッキーが続いた。


「あたしたち弟に全然信用されてないのね」

ウエンディは失望した顔をしていた。


「なんとか言えよ」

すぐ上の兄モスバは怒りに満ちていた。


ここは俺が謝るしかないか。

でなきゃ収まんないな。



そこへじっと黙って聞いていたヒアルが口を開いた。

「坊ちゃまのことはこのぐらいで許してあげてください。すべて私のせいなんです」


「ヒアルが謝ることじゃないの。ラデウスがコソコソしたのが悪いんだから」

ウエンディは口を尖らせた。


「ラデウスが誰も頼ってくれなかったのは残念だね。寂しいよ。家族なんだから何かあった時こそ頼ってほしいね」

それまで口をつぐんでいたシーザーが悲しそうに誰にでもなくそう呟いた。


「私は今日限りお暇を頂きますので」

ヒアルは思い切ったようにガウディに向かいそう申し出た。


ガウディはヒアルの覚悟を決めた言葉に驚き目を見開いた。

そして深いため息をつくと、ベッキーと目を合わせて頷いた。


「ラデウス反省したか。これから気をつけるんだ。だがまあよくやった。家族に内緒でたった独り、ヒアルが回復するまでよく看病をやり通したな」


ちょっと間を置くとシーザー、ウエンディ、モスバを確認するように見て、ガウディは続けた。

「ラデウスのやったところには正しくない部分もあった。だがラデウスだって辛かったはずだ。そしてなぜ内緒にしたかその気持ちはわかる。みんなもわかるな」


家族全員が頷いた。

俺は不覚にも涙を流した。


「よし、暗い話はここまでだ。ところでラデウスはどんな治療をしたんだ。まさか治癒系の魔法とかじゃないよな」


「いえ、治癒系の魔法なんか使えません」

本当は『まだ』使えないんだが。


「じゃあどうやって治したんだ。この謎の流行り病に罹った者は大部分の者が死ぬんだぞ」


「…… 偶然かな」


ヒアルがすかさず言った。

「坊ちゃんが飲ませてくれたあの美味しい飲み物が効いたのかも」


「なんだそれは。もしその飲み物とやらが本当に効果があるのならこの病で苦しんでいる人々の大きな助けになるのだぞ」


俺は咄嗟に嘘をついた。

「夢の中に神様が出てきて飲み物の作り方を教えてくれたんだ。そしてその神様がこう仰ったんだ。『ヒアルを絶対死なせちゃ駄目だって』だから必死になったんだ」


この嘘はすんなり信じてもらえた。

そしてヒアル自身もそうだったんだと納得していた。


これを機にヒアルは家族と同様に扱われるようになった。


ネオス領内の流行り病は食い止めることが出来た。

そしてガウディが積極的に発信し、各所で広まっていた流行り病は沈静化した。



今回の件はガウディに頼み、ヒアル自身の夢の中に神様が出てきたことにしてもらった。


ガウディは訝しげに俺に尋ねた。

「なんで自分の手柄なのに、それを隠そうとするのだ」


「神様に釘を刺されたのです。『このお告げを利用し、自分の名声を高めたりするとあとから苦難が訪れるでしょう』と」


まだ指針が定まらない今は目立つことは得策ではないのだ。






ヒアルは以前にも増していっそう仕事に打ち込んだ。


そして俺とヒアルは固い絆で結ばれた。




ある時ヒアルがお皿に何か載せてきた。

「ラデ様の好きそうな物を作って参りました」


あのことがあってから、ヒアルは『ラデ君』とは呼ばず『ラデ様』と呼ぶようになっていた。

口を酸っぱくしていくら『その言い方はやめてよ』と言っても無駄だった。


俺は見てあれっ?と思い、その固形物を口に含んでみた。


懐かしい! クッキーだ。この時代にはまだなかったはず。


「ヒアルこれどうしたの?」


「ラデ様じゃないですけど、私の場合お告げではないですが突然頭に浮かんできまして」


これは美味しかった。



家族みんなに夕飯時に試食してもらった。


「これはイケる味だ」


「いくらでも食べられるよ」


「五十年近く生きていてこんなに美味しいお菓子は初めてだぞ」


「どこでこの料理覚えたの?」


称賛の嵐だった。


「皆様が喜んでくださって何よりです」

そう言ったヒアルの顔はほころんでいた。


「ねえどうやってこれ作るの? ウエンディもこんなの作ってみたい」


「そうですね。これは」


「駄目!ちょっと待って」

俺はヒアルがレシピを教えようとするのを遮った。


「ラデウス何よあんた、弟のくせにあたしに逆らうつもり。もう剣術教えてやんないわよ」


剣術の指導をやめてくれるのはおおいに喜ばしいことだったが、怒るのはウエンディの早とちりだった。


「違うんだ。意地悪とかじゃなくて。先ずしっかり確認しときたくて」


「何をだい」

父ガウディが言うと長兄シーザーが「そっか」と納得したような言い方をした。


「うん? シーザーお前にはラデウスの考えがわかるのか」


「はっきりとはわからないけど。多分こうなんじゃないかな。

こんなに美味しいお菓子は評判になる。ということはうまくすれば商売になりお金になるかもしれない。だから簡単に作り方を教えていいものか。ラデウス違うかい?」


「シーザー兄さんの言うとおりだよ。このお菓子は金の卵かもしれないからヒアルが家族の誰かに作り方を教える前にそこんとこをちゃんと徹底しとかないといけないかなと思ってさ」



「そういうことか。しばらくはヒアルの考えたこのお菓子は門外不出としようじゃないか」

父ガウディの発言でそう決まった。

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