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第117話 本編Ⅰ-6  六才の時の災害

ハッピーになるのはだいぶ後かな。

しばらく嫌なことが続きます。

忌ノ神に送ってもらった後は色々な面で大変だった。


まず両親に散々説教をされ、状況を聞かれた。

俺は本当のことが言えず、真実と作り話を混ぜた。



「裏山にいたら突然赤い魔物と黒い魔物がやってきて連れ去られたんだ」


それを聞いて両親は真っ青になった。

こそこそ何か話していたが心当たりがあったのだろう。


「それでどうして無事に帰ってこれたのかい」


「うん、すごく強そうなゴリラみたいなおじさんが助けてくれたんだよ」


「恐ろしい魔物たちからどうやって助けてくれたんだい」


「うん、魔物たちをやっつけたんだ」


「たった一人で、赤バグと黒バグをかい。ラデウスにとっての命の恩人のそのおじさんはなんて名前だかちゃんと聞いたのかな」


「うん、忌ノ神って言ってたよ」


もちろん俺は知らない名前のような言い方をした。

だが、今まで十回以上転生した中で忌ノ神とは何度も関わりを持ったのだった。

忌ノ神は善玉だろう。

ただ王神に仕えているらしいというのが気に食わなかった。

王神にはギルダス、ケイティ、コデウスと計三度も殺されている。

個人的にだが、絶対復讐してやる。


忌ノ神と双子で瓜二つなのが、厄ノ神だ。

コイツは完全に悪玉だろう。

やはり過去に何度も関わりを持った。


だがどちらかといえば俺と友好関係にある邪神の手下だ。

邪神は『ノ』がつかない神だからかなり位が高い神だ。

忌々しいが王神もそうだ。



話を聞いていた子供たちが大騒ぎを始めた。

子供たちと言っても現在の俺にとっての兄三人と姉なのだが。


母のベッキーが子供たちを一言注意したが、その彼女も興奮しているのが見て取れた。


「ねえアナタ、神様だなんて、すごいわね。ラデウスには神様が守護で憑いていてくださるのかも」


俺は両親に冷水を浴びせるようなことを言った。

「その神様なんだけど、それからね僕が疲れているのを見て今度は赤山に連れていってくれたんだ。そして、元気になるからといって暖かいお湯に入れてくれて。ちょっとだけ少し冷たい飲み物もくれて」


そこでガウディとベッキーは顔を見合わせた。


「お前たちはそろそろ寝る時間じゃないか」


ガウディの言葉にシーザーが不服そうな顔をした。

「僕が寝るにはまだちょっと早すぎるんだけど」


ベッキーが慌てて言った。

「もうラデウスも疲れていて熱っぽいし、今日はお父さんとお母さんが一緒に寝ます」



ちょっとした事件ではあったが、この頃まではそう豊かでなくても平和だった。






父のガウディはこの地で代官を務めていて、地位でいえばこの地ネオス領のトップであったが、実際は収入が少なかった。

だからいつもギリギリの生活を送っていて、お手伝いを雇う余裕などなかった。


俺を含めて五人の子供を養うのは楽ではなかったろうし、特に母ベッキーは火傷の件があったせいか大変辛そうに見えた。

少しでも生活の足しにと、家畜を飼い、猫の額ほどの土地に野菜を植えて育てていた。



俺の魔法は六才になってもまだちっとも前に進まなかった。

読み書きはマックにしっかり指導してもらい、時間を見つけてはネオス領唯一の公立図書館に通い、隠れて難しい本を読み漁った。



そして今がいつの時代か判明した。

俺がというかラデウスが誕生したのが、大陸が割れた年である『分世』から数えて四五〇年。

今は四五六年だった。

しかしこの頃ラオ大陸に沢山の国家があったか。


俺は以前『分世』から四七七二年も経った時代に社会の教師をしていた。

カデウスに転生していた時だ。

だがその時に仕入れた知識と異なる。

それまでの、つもりカデウスが生存した頃の歴史と、今回の世界の流れは何かが違うのだ、変わったのだ。


そしてそのうち気づいたことがあった。

以前俺がいた世界では奇妙な経験をした。


最初の世界が、嘘をつくと鼻が伸びる世界だった。

アーデウスとイデウスの時がそうだった。


そしてその次、ウーデルス、エーデウス、オーデウス、カデウスの時は嘘をつくと鼻が光る世界だった。


どちらも陰神の仕業だということだった。



今回もそういう現象があるのだ。

憎しみなどの負の感情が湧き出た者は目が黄色く点滅するのだった。

そして憎んでいる当事者を前にすると顔全体が黄色く点滅するのだった。


以前と違うのは『嘘』をつくと現象が表れるのに対し、今回は『憎しみ』だった。


これも陰神の仕業なのか。


このところ天候がおかしいことが多かった。

今日は季節外れの嵐みたいだ。


それでもそんな日は一日中家にいてやり過ごせばよい。

しかしネオス領で一番大きな家畜場に続けざまに雷が落ちた。

あっという間に木造の建物は燃え上がり、中にいた家畜は全滅した。


雷は七日も続き、森も山火事による被害で半分近くを失った。

そして大きな木の陰に避難していた計十二名が落雷でなくなった。


『雷が鳴ったら大きな木の下に避難したらいい』という間違った知識に基づいた行動の結果だった。

その被害者の中にはネオス領の判事と、警備隊長も含まれていた。


沢山の建物にも雷による被害が出た。

そしてそれが原因で俺よりもっと幼い女の子が亡くなった。


詳しい事情はわからなかったがその娘が亡くなったことは大変なことだったらしい。


なぜかガウディとベッキーがおろおろしていた。

両親が狼狽えるのを見ると子供たちまで不安になってしまう。

俺も事情がわからないが故に『何かとんでもないことが起こるのではないか』となんとなく胸騒ぎがした。

がそれは、取り越し苦労に終わった。

この時は杞憂に過ぎなかったのだ。









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