第112話 本編Ⅰ-1 次の転生は
最初の一歩は勇気がいります。
書き始めたら設定のやり直しはできないので。
本編から読んでもある程度わかるような書き方を心掛けるつもりです。
俺はハッと目を覚ました。
そう今まで何度もやってきたパターンだ。
そう次の転生が始まったということだ。
しかし思うように体が動かない。
まだ慣れていないせいか、それとも疲れが溜まって。
いやいや、新しい体に転じたのだから疲れているはずがない。
しかし精神的な疲れがあるかも。
せめて声を出そうとしたが、それも無理だった。
まさか生命のない物に転生した訳じゃあるまいな。
今まで魂を持つ幾つかの物を見てきた。
一番最後に見たのは、『神剣モルダウ』という剣だった。
神剣というのがどういう意味を持つとかはわからなかったが、その剣『モルダウ』には、仙人のような存在のダダンヌという人の魂が込められていた。
剣自らに魂があるような、確かに素晴らしい剣であった。
思索していると体が言うこときかない俺の近くに突然数名の者が乱入してきた。
ギャーとか、ワァーと言いながら。
振り向こうとしたが残念ながら見ることが適わない俺は聞き耳を立てた。
「ずるいよ、お兄ちゃんばっかり」
「あたしにもやらせて」
「お姉ちゃん僕が先だよ」
ラオ大陸語だった。
ここはラオ大陸か。
いつの時代なんだ?
そこへ爆音が響いた。
「あんたたち、ラデウスが目を覚ますでしょ! お外で遊びなさい」
「お母様、そんな声を出すなんて品がないですよ」
大人びた声が聞こえてきた。
変声期の最中ぐらいの男の子の声だ。
「だったらシーザーがあの子たちを外に連れ出してよ。あんた一番お兄ちゃんなんだから。ラデウスが起きて一旦泣き出すとしばらく泣き止まないからそうしてく」
「お母様」
そのシーザーと呼ばれた声変りの最中っぽい男の子が話を遮った。
「なんだい、人の話は最後まで聞きなさいって常々言ってるでしょ」
お母様と言われた女性は厳しい口調で言いながら、途中で自分の声の大きさに気づき、囁き声になった。
「違います。そうじゃなくて。ラデウスはもう目を覚ましてますよ」
と言いながら赤毛の痩せた少年が俺の顔の前に現れた。
というかシーザーは俺を覗き込んでるんだな。
ラデウスというのは俺のことか。
だとしたら俺はもう目覚めているのだが。
いきなり抱きかかえられて俺は何かを押し当てられた。
ちょっと驚いたが、鈍い俺でもこの展開はわかる。
そう俺はおっぱいを吸っていた。
赤ん坊か、初めてのパターンだな。
「本当だ、珍しいラデウスが目を覚ましても泣いてない」
俺の母親なんだろう、その女性が驚いたように言った。
そして続けた。
「初めてよ。こんなに勢いよく吸ってくれたのは」
「じゃあこれから普通の子と同じように成長するかなあ」
「そう願いたいわね。もうすぐ二才だっていうのに、未だにおっぱい飲んでるし、おまけにそれもあまり飲まないから、やせ細って小さいし。ご近所さんからも何かと嫌な感じの噂されているのよ」
「僕もクラスの子に揶揄われてるんだ。お前んちは貧乏だから赤ちゃんに満足な栄養も与えられないって」
喧噪が続いたが俺は睡魔に襲われた。
次に目を覚ました時俺は自分の泣き声で目覚めたのだった。
それで慌てて泣き止んだ。
俺の下半身には冷たい違和感があった。
やっちまったんだな。
多分オムツをしているのだろう。
しかし、ひんやりする。
我慢できずに俺は声を出そうとした。
さっき泣き声は出せたのに。
俺は発声しようと小一時間格闘した。
今日はもう一話書きます。