第108話 ウデスマンは正義の味方
ザデウスが変身した正義の味方は強かった。
決め技をいくつも持っていた。
頭頂部に装着した二つのブーメランを自由に操ったり、胸の真ん中から光線を放ったりできる。
必殺技は回転しながらの飛び蹴りだった。
これは俺がウーデルスの時に会得したウーデルスのジャンピングフックだ。
ウーデルスはお馬鹿だからキック技なのにフックと名付けた。
今回それを頂いたがウーデルスの時を上回る威力だった。
魔ノ神の手下をターゲットにし、弱い者を助けるために俺は戦った。
この行動を続けていけばそのうちに魔ノ神自身が俺の前に現れるだろう。
その時が決着をつける時だ。
ところで最近困っていることがある。
悪い魔物などから困っている者たちを助けると大抵聞かれるのだ。
そのまま立ち去ろうとするとだ。
「せめてお名前だけでもお教えくださいませ」
それで考えた。
「悪い魔物と闘う我の名は『デウスマン』である」
だから必殺技はデウスマンラッガーとデウスマンビームとデウスマンキックにした。
間違ってもフックにはしない。キックだ。
かなり名前が轟くようになった俺の前に二人の男が現れた。
陰神とドラゴンだ。
「やあ君がデウスマンだったなんて驚いたよ。随分評判だねえ」
面白くなさそうに陰神が言った。
この感じでは魔ノ神と敵対している俺の事を快く思っていないのかも。
俺は少し不安になった。
「格好良く目立っちゃって神にでもなったつもりかい。あんまり調子に乗らない方がいいよ。あくまでも僕がこの世界を救うんだから」
あれ、もしかして陰神は嫉妬していただけか。
ドラゴンは怪訝な顔をしていた。
「君が本当に日本人の佐藤龍かい。この前は可愛い女性だったのに」
確かに今は魔人と人間の両方の血が混じっているからケイティに比べたらワイルドかもしれない。
「一度僕の前で変身してくれないかい」
陰神にいわれたがはいわかりましたと安請け合いするわけにはいかない。
テレビのヒーローと違い、いつでも変身できるわけではなく、怒りなどが内面に溜まらなければいくら変身しようとしてもできないのだ。
おかげで変身を悪用などできない、うまい仕組みにはなっているのだが。
俺は丁重に断った。
「うん、以前より慇懃になったね。どうしたのかい」
「慇懃というより謙虚と受け取っていただきたいのですが」
陰神は面倒くさそうに言った。
「どっちでもいいよ。誰かに注意されたのかい」
どうしよう、これも胡麻化した方がいいのか、それとも正直に話していいのかな。
転生のことさえ言わなければ大丈夫か。
まあ嘘ついても陰神には見抜かれるだろうけど。
「ええ、天神様にお会いしたのです」
「そうなんだ。僕にとってはおばあちゃんなんだよね。でもほとんど会った記憶がないんだけどさ。大変偉い神がわざわざ会うぐらいだから君には何か期待しているのかもね。でも君をこの世界に呼んだのは僕なんだからいざという時は僕の言うことに従ってほしいんだけど」
「その時になってみないと何とも確約はできません。天神様にも仕事を命じられましたし、この世界に私を連れてこられたのもどちらかというと天神様かも。私の一連の事柄に彼女が深く関わっているのは間違いありません」
「ああそうわかったよ。僕も天神様ぐらいの位の高いお方には背けないしな。
それよりも、君が動き回っているからなかなか捕まえられなくて苦労したよ。なんか魔ノ神の部下ばかりを痛めつけているようだけど、魔ノ神を倒すつもりなのかい」
「そうです、陰神様も力を貸してくださいませんか」
俺は期待はしていなかったが駄目元でお願いしてみた。
「いいよ。タイミングがあえばね。僕もこの世界をどうにかしたいのさ。魔族がはびこる、いや牛耳るような世界は早く壊して僕の理想の世界を作るんだ」