抱き104話 魔ノ神の待ち伏せ
年末年始は色々やることがあり、ゆっくりできそうもありません。
トホホ。
仕事ではなく、プライベートな年賀状もまだ書いてません。
俺は邪神と別れた後旅を続けルーマの剣の活躍もあり無事にサンテ大陸に渡ることができた。
そこへ三メートル近くはありそうなでかい男が近寄ってきた。
見覚えのある顔だったが念のために陽神から授かったネームの術を使って確認した。
その男の頭の上には『魔ノ神』と表示されてあった。
ザデウスは直接魔ノ神に会ったことはないはずだ。
俺は知らんふりして通ろうとした。
「おい待て。お前はザデウスだな」
「すみません人違いですよ」
「隠さなくともい。お前の正体がわかっている。ルキメデの面影があるし、人間の血が混じってることがすぐわかる顔立ちだ」
「仮にそうだとしてもどうして魔ノ神様が直々に私なんかのところへ来られたのですか」
「お前なぜ私のことを知っている。お前とは直接会ったことはない。そうかルキメデに詳しく話しを聞いていたのか。私の外見についても見たらすぐわかるように教え込まれたのだろう」
俺がコデウスだった時に出会った魔ノ神はもっと正義の者だった。
どうして魔物や魔人だけが優遇される状況になったか問いただすつもりだった。
「ええ、そうですよ。どうしてあなたはこんな世界にしたのですか」
魔ノ神はおかしなことを言う奴だという顔をして俺のほうを見た。
「私は魔ノ神だ。魔物や魔人など魔族を優遇するのが当り前だろう。それよりお前にはここで死んでもらおう」
そう言うと知らない言葉を口走り始めた。
どうやら呪文をかけてるようだ。
古代龍族語にどことなく似ている。
これが古代魔族語なんだろう。
この言葉どこかで聞いたことがある気もした。
なんかぼんやりしてきた。
俺の意識とは別に元々のザデウスの意識だろうか、これが割り込み始めた。
そして体の自由が利かなくなった。
ルーマの剣を取ろうとしている。
俺には目的がわかっていた。
剣を抜いて自害する気だ。
絶対にやめさせなければならない。
必死になりザデウスの意識へ呼び掛けた。
「目を覚ませ。操られているぞ」
すると魔ノ神が驚いた顔をして強い口調で俺に尋ねた。
「お前は何者だ。まさか生き霊ではあるまいな。黄泉の国の者なのか」
俺はここで迷った。
本当のことを言うべきか、それとも魔ノ神の勘違いに乗っかるべきか。
「無理して答えなくてもいいぞ。お前には死んでもらわなければならない」
俺はルーマの剣を抜いた。
魔ノ神は気づいた。
「その剣ははるか昔私が使っていたものだ。確か今では邪神の持ち物となっていると聞いていたが。
お前は邪神の手の者か。しかしどうやってザデウスに取りついたのだ」
そう言うと魔ノ神は襲いかかってきた。
魔ノ神はひたすら突いてきた。
「俺はその剣の弱点もよく知っている。こちらが突いている限りその魔剣は防御で精いっぱいで攻撃に転じる余裕がないのだ」
そう言いながら魔ノ神と俺との距離はわずかとなった。
それまで突きしか出さなかった魔ノ神が一瞬の隙に振りかぶった。
そしてルーマの剣を先端から縦に真っ二つにした。
「ハハハッ、その魔剣は剣先が弱点だったのだ。しかしその魔剣の剣先を捉えられるような者はほぼいないからその意味では無敵だったわけだ。私と相対することにさえならなければ不滅の剣であったのに」
そう言いながらこちらを睨みつけた。
まさにロックオン状態だ。
何とかして逃げなきゃ。
そう思っていると魔ノ神を背後から襲う者がいた。