第101話 久しぶりの天神
大掃除、疲れました。
今から食材を買いに行きます。
早めにUPできてよかった。
今回は今までと違った。
ハッと目を覚まし、辺りを見回すと誰かが立っていった。
よく見ると見知った顔だった。
「もしかして司神? 久しぶり」
「いいえ私は天神です。でも娘と間違えられるなんて若く見られているのですね。光栄ですわ」
「あっお前! よくも人をほったらかしやがったな」
つい俺は大声を出した。
この世界に俺が飛ばされてきたのにはコイツが関わっているはずなのに、その後全く音沙汰なしだった。
そんな態度に腹が立ったのだ。
「あの方のことだから間違いはないでしょうけど」
天神はぼそぼそ独り言のように呟いた。
俺は無視されたのか。
「何訳のわからないことを言ってるんだよ」
今度は天神は俺の顔を見てため息をついた。
「貴方を見ると不安になります」
「何が不安なんだよ」
「あなたが本当に目的を果たせるか」
「目的ってなんだよ」
「私もすべてを知ってるわけではありませんがが陰神と陽神を助けることが含まれているはずです」
「俺はとにかく王神を倒したい」
「それは目的に含まれてないと思います」
「だがあいつは悪者だぞ」
「何を根拠にそんなことを言ってるのですか」
「邪神と将神が教えてくれた。それに世直しをしようとした俺を三度も殺しやがった」
「彼らの言うことを真に受けるなんて。
それにようく考えてみてください自分がやったことが正しいのですか。
そしてその言葉遣いも直した方がいいですね。いえ言葉遣いというよりも考え方自体を。
もう少し他者に対して敬意を払った方がいいと思います」
「そんなこと言われたっておれは勝手にこの世界に連れて来られただけなんだ。いわば被害者だ。だからちょっとこの世界の何もかもが憎かったのさ」
「甘えてはなりません。あなたは元いた世界であのまま死んでいた方がよかったのですか」
「いやそんなことはないけど」
「だったら今までの行動をじっくり振り返ってください。そして誰が正しくて誰が味方で誰を信用すべきか。裏を返せば、誰が悪い存在で誰が敵で誰が信用出来ないか」
「考えてみなよ。この俺が救世主になんか成れるわけないじゃないか。俺は好きなようにする」
「あのお方の計画されたことだから失敗はないと思いますがもし貴方がこの世界で目的を果たせないならきっと苦しみ続けることでしょう」
おれはちょっと不安になった。
「どういうことなんだよ」
「人にものを尋ねる時はもう少し丁寧な言葉を使った方がいいでしょう」
「わかったよ。いえわかりました。今あなたの言われたことはどういうことですか」
「私にもはっきりわかるわけではないのですが。目的を果たすまであなたはこの世界に居続けるのではないでしょうか」
「ということは目的を達成できたらどうなるのですか」
「きっと元の世界に帰れるのではないでしょうか」
「でも元の世界に帰れたとしても俺は」
「『俺は』じゃなくて『私は』ですよ」
「あっわかりました。元の世界に帰れたとしても私は暴走したファンに殺されたのですよ」
「そこも何とかすると思いますよ。あの方が」
「えっそうなんですか。本当ですよね。信じていいんですよね。希望を持っちゃいますよ」
「私は嘘なんかついてませんよ。なんだったら陰神に伝授された術を使って確かめてみてください」
「そこまでおっしゃるのなら信じます」
「さあ独りになって今までのすべてを鑑みて下さい。それから行動を起こしてください。次から貴方の転生は本番に入るのですから。
そうだ一つアドバイスをしておきましょう。司神に言われたでしょうが本番は三回あります。でもそのことは黙っておいた方がいいでしょう。もし聞かれても本当のことは言わず一回だけと言ってください」
「どうしてですか」
「安全のためです。貴方を狙う者が油断するからです。
そしてこの世界の貴方は自分の置かれた立場から様々なことを思うでしょう。その気持ちを大切にしてください。そうこの世界での貴方の名前はザデウスです。魔人と人間のハーフです。では頑張ってください」
「ちょっと待って下さい」
俺は呼び止めたが天神の姿は消えていた。